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ウィーン・フィルの“日本語ペラペラ”兄弟が語り合う「辛いときに“効く”曲」

ヘーデンボルク兄弟 来日インタビュー

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「クラシックファンの高齢化」は世界的な問題です

——直樹さんは2011年からオペラ座、そしてウィーン・フィルで活躍されていますね。どんなお仕事をされているんですか?

直樹 私は今、会計責任者をやっています。ウィーン・フィルは148人のメンバーがいて、その中に役員が12人います。その役員の中でもトップの権限を持つのが団長と事務局長、副団長、そして会計責任者です。もちろん、私は会計のプロではないので、別に会計士は雇っています。けれど、あくまでウィーン・フィルをどう運営していくかを決断していくのは我々の仕事なんです。

 

——オーケストラ経営の話でいうと、日本ではクラシックファンの高齢化問題や、それに伴う運営の危機感みたいなものがよく取りざたされます。ウィーン・フィルは毎年恒例「ニューイヤーコンサート」がプレミアチケットものとして超人気だったりするので、その辺りはまだまだ安心なのでしょうか?

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直樹 おかげさまでコンサートの集客に困ることは、基本的にはないんです。ただ、最近は特に力を入れて子どもたちへのプロジェクトを進めています。

和樹 クラシックファンの高齢化は日本のみならず、世界的な問題だからね。

 

直樹 クラシックファンの高齢化って、構造的な問題なんですよ。多くの場合、余裕を持って演奏会を楽しむのって、仕事が落ち着いたり、家族が落ち着いたりする50代以降じゃないと正直、難しいんじゃないかなって思います。でも、この状況に何もしないでいれば、クラシック音楽を楽しむ人が育っていかない危険があります。だから、私たちが室内楽メンバーを組んで学校を訪問することもあれば、オーストリア各州の子どもたちを招待してホールで聴いてもらうこともしています。そうやって「クラシック聴いたことある」って世代を増やしていかないと、将来その子たちが大人になってクラシックに戻ってくる可能性も失くしてしまいますからね。