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各紙は「自己責任」をどう報じたか? “2004年の安田さん”と“2018年の安田さん”

14年前の「安田さん解放」と読み比べてみると

2018/11/09
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 前回、「14年前、誰が『自己責任論』を言い始めたのか? 『イラク3邦人人質』記事を読み直す」を書いた。多くの方に読んでいただいたが、私としては「新聞は時として推理小説にもなる」という新聞の楽しみ方を実践した回でもあった。

 自己責任論はどう拡がっていったか、政治家では誰が言いだしたか? 当時の紙面を読みなおす作業はドキドキした。

政治家が放った「自己責任論」が、2018年に復活

 その結果、小池百合子氏が口火をきり、閣僚達や自民党幹部(安倍晋三幹事長)がバトンを受け、満を持して小泉純一郎首相が人質になった3人(被害者)を批判した流れだったことがわかった。

2004年の安田純平氏 ©︎共同通信社

 こうなるともう人質3人は国家を敵に回した悪人のよう。

 世の人々も政治家のお墨付きがあるのだから、そりゃバッシングに遠慮もいらないだろう。政治家がバックにいる気分はよかっただろう。あのときの「成功体験」が今回の安田氏への自己責任論にも続いているのだと感じた。

 実は前回書き足らなかった部分があった。それは「2004年の安田純平」である。安田氏が前回拘束されたのも2004年のこの時期なのだ。  

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14年前の「安田さん報道」はどんなものだったのか?

 批判の矛先は拘束された人の家族にも向けられていたのだが、当時の安田氏の記事はその検証例として絶好だった。

 まず、高遠菜穂子さん(ボランティア)、今井紀明さん(フリーライター)、郡山総一郎さん(カメラマン)の3名の人質の動向が注目されるなか、さらに次のニュースが飛び込んできた。

「日本人2人拘束強まる」(毎日新聞夕刊 2004年4月15日)

「また邦人か 混乱の夜」(読売新聞夕刊 同)

 拘束された1人は「安田純平さん」と書かれている。