特撮ヒーロー番組『ミラーマン』で主人公の鏡京太郎役を演じた俳優の石田信之さん。重複がんで16回にも及ぶ手術を受けながらテレビや映画に出演し、朗読劇・舞台の原作や脚本も手がけています。がんをミラーマンの宿敵「インベーダー」になぞらえて、「こいつらだけには負ける訳にはいかない」と笑顔で話す不屈のヒーローに、壮絶な「闘い」について話を聞きました。(全2回の1回目/#2へ続く)
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大腸がんのステージ4と診断されても、なぜか平常心だった
──がんが見つかった経緯について教えてください。
石田 2013年の夏頃から、お尻が痛くて座っていられなくなったり、仕事先で急に激しい腹痛に襲われてしゃがみこんだり、ということがあったんですよ。すぐ治まるので、たいしたことないとそのまま放っていたのだけれど、12月に入り、夜も眠れないほどの腹痛が続いて。娘の勧めもあって、年明けに病院へ行ったら、大腸がんのステージ4と診断されました。
肝臓にも転移していて、胃にも別のがんが。胃は原発で、早期だと言われたのがまだ救いでした。
──どんなお気持ちでしたか。
石田 なぜか平常心でした。僕には言われませんでしたけど、娘は医者から「このままだと余命3ヵ月」と言われたそうで、ショックで卒倒しそうだったと後から聞きました。
──平常心ですか。
石田 がんと言われても、ああそうか、だったら治せばいいんじゃない?と自然に思ったんですよね。『ミラーマン』じゃないけれど、「インベーダーがやってきたのか。だったら退治すればいいんだろ」という気持ちでした。
──それまで、体調が悪くても病院に行かなかったのですよね。
石田 病院が怖かったんですよ。僕が19歳の時に母親が胃がんで亡くなったので、病院がトラウマみたいになっちゃって……。
それに、仕事ができなくなるのも怖かった。「自分が死なない限り板(舞台)の上に立て」という世界ですよ(笑)。自分の代わりがいないので、40度の高熱があっても撮影に行っていました。だからもし入院になって、受けた仕事ができなくなれば、たくさんの人にご迷惑がかかる。それがすごく怖かったんです。