壮絶ながん闘病を「インベーダー退治」ととらえて、前向きに治療と仕事に取り組む俳優の石田信之さん。松田優作さんとも親交があったという石田さんは「死ぬまで演じ続けたい」と目標を語ります。今だから話せる『ミラーマン』の裏話についても聞きました。(全2回の2回目/#1より続く)
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がんは「来たら、倒す」それだけ
──がんと診断されて、生活習慣や意識は変わりましたか。
石田 酒とタバコをぴたっとやめました。タバコは若い頃からチェーンスモーカーだったんですけれど、今はテレビでタバコを吸うシーンを見るだけで気持ち悪くなっちゃう。喫煙所の近くを通りかかるだけで「気持ち悪い」って言うと、仲間から「あれだけ吸っていたのに」と驚かれたりします。僕の周りの人たちは喫煙をしなくなりました。健康にも一役買っていると思ってます。
──考え方や生き方が変わったということはありますか。
石田 ないです、それはなにも。病気になって人に優しくなった、という話を聞いたりしますけど、僕は小さい頃から、生きている人は病気でも健康でも、偉くても偉くなくても皆一緒だと思っているので、そういう考え方はまったく変わらないですね。ただ、インベーダーだけは許せない。こいつだけは倒さないと(笑)。
──手術も治療も、すべて「インベーダー退治」というお気持ちですか?
石田 そうだね。「来たら倒す」、それだけです。
2014年に最初の手術をした時も、だからあまり怖いとかは考えていなくて、病室から手術室までトコトコ歩いて行ったんですよ。自動ドアみたいなのがガーッと開いて手術室の中に入っていったら、看護師さんに「こんなに堂々と入って来た患者さん、初めてです」って言われました。僕としては映画のセットに入るような気持ちだったんですよね。
──映画のセットですか。
石田 あたりまえなんですけど、手術室の中がテレビや映画でよく見る景色と同じだったんですよ。だから恐怖や不安を感じるよりも、「あっ、これ映画のセットと同じだ」なんて好奇心の方が強く出てきて。もしこれが映画の撮影だったら、自分はこの「患者」という芝居を監督に言われた通りに演じる自信がある。だからお医者さんも、「医者」という役割を完璧にやってくれるはずだ、と100%信じてお任せしました。
──主治医の先生を信じてお任せしようと。
石田 たぶん僕はバカなんだと思う(笑)。もうね、なにも疑わないんですよ。100%治るって信じているんです。今日も取材前に治療してきたんですけど、主治医の先生が「自分は石田さんを治すつもりで、全力でやっています」と言うので、「僕も100%治るつもりで闘っています」と宣言してきました。