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「ピンポンはやめよう」安倍首相とプーチンの言葉から北方領土交渉の進展を探る

安倍首相「22回首脳会談を重ねてきたが、プーチンの主張は変わらない」

2018/11/17

 安倍晋三首相は14日夜、訪問先のシンガポールでロシアのプーチン大統領と首脳会談を行った。北方領土問題解決に向けて大きな前進があったと見るメディアもあれば、予断は許さないと見るメディアもある。安倍首相、プーチン大統領の言葉を中心に振り返ってみたい。

「二島返還」へ方針転換か?

安倍晋三 首相
1956年の日ソ共同宣言を基礎に、日ロ平和条約交渉を加速させることで合意した」
日本経済新聞電子版 11月14日

11月14日の日露首脳会談での安倍首相、プーチン露大統領 ©時事通信社

 日ロ首脳会談終了後、安倍首相が記者団に話した言葉がこちら。さまざまなメディアで見出しとして使用された。

 日ソ共同宣言とは1956年に両国が署名した外交文書(条約)であり、これにより国交が回復、関係も正常化したが、領土問題は先送りされた。同宣言には両国が引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡すことが明記されている。国後島、択捉島には言及がない。

 これまで日本政府は「我が国固有の領土である北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという一貫した基本方針」を持っていた(内閣府ホームページ)。しかし、安倍首相の「日ソ共同宣言を基礎に、日ロ平和条約交渉を加速させる」という言葉をそのまま読み解くと、これまで主張してきた「北方4島の一括返還」から「2島先行返還」へ大きく方針を転換したように見える。

 朝日新聞は「首相『2島先行返還』軸に日ロ交渉へ 4島一括から転換」と見出しを打った(11月15日)。時事通信も「安倍首相、『2島先行』へかじ」と報じている(11月15日)。15日の自民党・二階派会合では河村建夫元官房長官が「4島返還が原則だという思いはあるが、まず一歩踏み出さないと先が見えない、ということではないか」と「2島先行返還」に理解を示した(毎日新聞 11月15日)。

プーチンの言葉を逆手に取った「歴史的なピンポンはやめよう」

安倍晋三 首相
「もう歴史的なピンポンはやめよう。
2人の間で領土問題に終止符を打つべきだ」
産経新聞 11月16日

©iStock.com

 一方、安倍首相に近いとされる産経新聞は16日の朝刊1面で「もう歴史的なピンポンはやめよう」という言葉を取り上げた。通訳だけを同席させた1対1の会談で、安倍首相はこうプーチン大統領に迫ったのだという。「歴史的ピンポン(卓球のようなきりのないやりとり)を止める必要がある」とは、2016年12月に行われた日ロ首脳会談でのプーチン氏の発言。安倍首相の言葉はそれを逆手にとったものだ。

 産経新聞は「『四島の帰属問題を解決して平和条約締結』という日本側の従来の主張をプーチン氏に了承させた意義は大きい」と安倍首相の外交を賞賛している。これだけ読むと、プーチン氏が「4島一括返還」を「了承」したかのように感じるが、はたして本当だろうか?