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高学歴高収入女性が「選択的愛人」として生きる理由

「愛人の品格」――#1

2018/12/02
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己を一人前とみなせるように必死に生きてきた

 少し仕事にも慣れてきて、友人との夜遊びや休日の買い物・旅行以外の人生に考えが及ぶようになるのは、自分の専門分野で働き出して少なくとも5年、多くは7~8年経ってから。彼女の場合はコンサルタントとして働き出す前に、上智大学を出た直後は航空会社に勤めたり、秘書職に就いていたりしたため、気づいたら32歳独身で、いつからか挨拶のように「いい人いないの?」と言うときの両親の瞳が、興味から心配に変わっていたらしい。別に恋人がずっといないわけではなかったし、結婚はしたくない、というはっきりとした思想があったわけではない。社会人としての毎日をまっとうし、独り立ちできる仕事を覚え、必要な資格のために勉強したりハクをつけるために留学したりして、なんとか自分の専門分野と呼べるものを作り、後輩たちに教えることもいくつか持ち、なんとなく己を一人前とみなせるように必死に生きてきた。

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 当然、彼女自身にキャリアと肩書きと多くの話題が加わったことにより、もともと若干高飛車な性格は増長され、恋人に求めるものも、自分に見合うと考えられる相手も変わってゆく。彼女はラウンジ時代にはお金と肩書きにしか見えなかったお金と肩書きをふんだんに持つ男たちを、人として認識するだけの良識と、彼らの本来的な魅力に興味を持つようになったし、彼らもまた若くて可愛いのその先にある彼女をちゃんと尊び敬い、彼女の成功を喜んではくれた。そういった立場はラウンジ嬢として愛でられた頃に引けを取らないレベルで彼女を満足させるものだったが、長い間、自分よりずっと先にいると思っていた彼らには自分と同年代の、或いはもっと歳下の妻や子供がいることに気づいたのもその頃であった。

ラウンジガールと敏腕コンサルの間に契機があったのか

 彼女の物語など、仕事に夢中になっていたら婚期を逃した、というオーソドックスなバリキャリ系女の話にしてしまえるのだが、ことはもう少し根深いような気もする。別に彼女はバリキャリの自覚などないだろうし、むしろ当初は航空会社や弁護士秘書を転々としながら好きな仕事を探していたくらいだし、一体いつソレを通り過ぎてしまっていたのか、本人としてもよくわかっていない。

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 ラウンジガールと敏腕コンサルの間に契機があったのか、或いは選ぶべき分かれ道があったのか。かといって外資系のコンサルタントファームでお尻に痣ができるほど働く彼女には、今から婚活に手を染めることも、万が一それがうまくいって、男と子供とまかり間違えば姑の世話をすることも、あまりに非現実的で、21歳の時に参列した友人の結婚式を見たときに感じた距離感はほとんど変わらず、今も結婚も出産も子育ても、なんとなく大人になったらするものかも知れないけど今のところは現実味のないハナシ、という域を超えていない。年が明ければ35歳、高齢出産の年齢に入るにもかかわらず。そして冒頭の発言になる。