「戦場から風俗まで」というキャッチフレーズで国際紛争、大規模自然災害、殺人事件、風俗業界の取材を行ってきた私は、これまで20年以上、毎週1人の割合で風俗嬢のインタビュー取材を続けている。つまり取材してきた相手の数は優に1000人を超えることになるが、そのなかで取材時に“処女”だという女性が、ごくわずかながらいた。

 日々複数の男性を相手にする風俗嬢と、男性(との性行為)経験のない処女、という取り合わせには親和性が希薄だ。だが、性行為が最終段階に至らないデリバリーヘルスなどでは、処女でありながら仕事を続けることが可能であり、決してあり得ない話ではない。

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セルフレームの眼鏡をかけた真面目そうな女の子

 私はそうした対極ともいえる現実を目の当たりにすると、どうしても「なぜ?」との疑問が湧き上がってくる。さらに当事者はどのような成育歴、経歴を経てきたのかとの興味も生じてしまう。

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 今回、話を聞けたのはヒカリ(仮名)という23歳の女の子だ。彼女が働くのはハードなプレイも付き物のSMクラブ。今年になってこの世界に飛び込んだばかりの彼女は、「SMに興味があって、いじめられるとどういう感じかなって思ったんです」と入店動機を語り、M女としてSMプレイを続けている。

取材に応じてくれたヒカリ(仮名)

 じつは彼女、今年の春までは首都圏の某国立大学に通う学生だった。そして4月から東証一部上場のとある企業の社員となり、休日を使っていまの店に出ているという。

 ヒカリの外見は、風俗嬢という業種から受ける性的なイメージよりも、これまでの順調かつ堅実な経歴から想像されるものを体現している。セルフレームの眼鏡をかけた物静かで真面目そうな女の子。化粧っ気もほとんどない。その点では、街で彼女を見かけて、性風俗との繋がりを連想する人はいないと自信を持って言い切れる。

「ひとりっ子なんです。小学生のときに両親が離婚して、私は母と一緒に暮らしてます。母が営業の仕事をして育ててくれたんですけど、別れた父との仲も悪くなくて、いまも3日に1回くらいは父が家に来ています」

「私、腐女子だったんです」

 小学校は地元の公立校だったが、彼女は受験をして中高一貫の私立女子校に進学する。子供の頃の性意識について尋ねたところ、ヒカリは照れるでもなく口にする。

「私、腐女子だったんです。小学校時代からBL(ボーイズラブ)好きでしたし、そんなマンガのエッチなシーンを見ては、性的なことに興味を持ってました」

 いまさら説明は必要ないかもしれないが、腐女子とは男性同士の恋愛を扱ったマンガや小説が好きな女性のこと。自宅に一人でいることの多かった彼女は、小学校高学年で自慰を始めたと語る。

「小学校の頃からパソコンをやってて、家でアダルトサイトを見たりとかしてたんです。現実の男の人のことはあまり考えたことなかったですけど、エッチで男性に攻められている女性の姿には感情移入して、自分に置きかえて興奮してました」