身長171センチ、体重68キロ。髪を短く刈り込んだその男が現れると、ピッチの空気は一変した。
アンドレス・イニエスタ。世界で最も尊敬されるサッカー選手は、この日、日本で新たな一歩を踏み出した。
イニエスタのビジョンを次世代に伝える
「イニエスタ・メソドロジー」
12歳からサッカーの名門FCバルセロナの育成組織「カンテラ」で学び、2010年のFIFAワールドカップで母国スペインを優勝に導いたイニエスタが、そのサッカースタイルやテクニック、ビジョンを次世代に伝えるプロジェクトは、2013年にスペインで始まった。
年俸32億5000万円の3年契約でヴィッセル神戸に移籍したイニエスタは、ヴィッセル神戸の親会社である楽天と組み、このプロジェクトを日本でも始めた。11月25日は、その初日だった。イニエスタは日本に何を伝えようとしているのか。現場を追った。
「カンテラ」をそのまま持ってきたような
ヴィッセル神戸の練習場「いぶきの森球技場」のピッチには、全国から抽選で選ばれた小学4年から6年、80人が集まった。全員が背番号8、胸に「Ai」のロゴが入った赤いユニフォームを着ている。
「人工知能でサッカーを教えるのか?」
楽天が絡んでいるだけに、一瞬そう思ったが、「アンドレス・イニエスタ」のイニシャルだった。
ピッチにはバルサのトップチームの理学療法士を務め、2008年からイニエスタのパーソナルトレーナーをしているエミリ・リカルトや、1991年からバルサの育成組織でユース監督やテクニカル・ディレクターを務めたアルベルト・べナイジェスがいる。
リカルトは現在、ヴィッセル神戸トップチームのスポーツパフォーマンスアドバイザーで「イニエスタ・メソドロジー」のプロジェクト理事、ベナイジェスはヴィッセル神戸のアカデミーアドバイザーだ。
イニエスタ、リオネル・メッシ、シャビ、ジェラール・ピケなどキラ星のごときスター選手を育てた「カンテラ」を神戸にそのまま持ってきたようなものだ。