昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

ゴーン氏が逮捕前に語っていた「2022年のルノーと日産と私」

「フランス政府の要求」と「おいしい地位への執着」――その幻の計画とは

2018/12/04

 筆者は今年4月19日、当時、日産会長だったカルロス・ゴーン氏にインタビューした。月刊「文藝春秋」の取材で、主なテーマは「自動車産業の将来展望」についてだった。

 また、2015年にフランス政府がルノーを介して日産への関与を強めようとして、フランス側と日産の関係がこじれそうになって以来、両社の関係が今後どう変化するのかも筆者の関心事だった。

 インタビューの後半に思い切って提携関係の今後を聞いてみたら、ゴーン氏はいつもの調子でまくしたてるように積極的に語ってくれた。このインタビューは日産とルノーの関係に変化が現われ始めた時に何らかの形で使おうかと思っていた。

 今改めてインタビューを読み直し、11月19日にゴーン氏が逮捕されて以来続けてきた関連取材で得られた証言などを整合していくと、ゴーン氏がインタビューで言わんとしたことと、その狙いが見えてきた。

「あなたがいなくなったらどうするのか」

――日産とルノーがいずれ経営統合する可能性があるとの報道もあります。ゴーンさんはこれまでアライアンス(同盟)の重要性について、お互いが独立したうえで人材や技術などの経営資源を持ち寄る形態が、日産とルノーの提携が成功した原因だと言い続けていましたが、少し考え方が変わったのですか。

カルロス・ゴーン氏 ©文藝春秋

ゴーン とんでもない。考えは変えていません。アライアンスを成功に導いたのは、様々な文化、様々な会社の人間が一緒に協力をしてきたからに他なりません。日産はアライアンスとともに成長しました。利益も出て力強い会社になりました。ルノーも然りです。三菱自動車もアライアンスのパートナーに加わり、成長や豊かさを追求しています。3社の関係は維持したいと思っています。私は別に気が変わったわけではありません。

 ただ、3社の提携が持続的に成功しているのは、「一部の人たちのおかげではないか」「その人たちが退任したらどうなるのか」と言われ始めているのです。

「唯一の手段はやっぱり合併するしかない」と言う人もいます。それは唯一の手段ではないと思いますが、確かに一つの選択肢ではありますよね。しかし、他にもいろいろ手段は考えられます。アライアンスはすでにもう絶対に不可逆的だと私自身は思っているんです。なぜなら、みんなアライアンスから利益が生まれているからです。メリットを享受しているのに、どうしてわざわざ疑問視しなければならないのですか。

 ただ、中には「ゴーンさん、あなたが居るからそう思うんでしょう」と言う人もいるのです。「各社のことを分かっているゴーンさんが居るからうまくいっているんだ」と言う人がいます。「では、あなたがいなくなったらどうするのか」と。