文春オンライン

ゴーン氏が逮捕前に語っていた「2022年のルノーと日産と私」

「フランス政府の要求」と「おいしい地位への執着」――その幻の計画とは

2018/12/04
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私と改革を進めてきた世代がいなくなった後

――ズバリ聞きますが、ゴーンさんが退任してもアライアンスが続く体制を考えるということですか?

ゴーン そうなんです。まさにその通りです。今問われているのは、私と改革を進めてきた世代がいなくなった後、どうするのですか、ということです。新しい世代の人たちは、過去のアライアンスの発足時の精神のことは分かってないかもしれない。そうした指摘自体は無視できません。もし私が自己中心的だったら無視してもいいんですよ。「私の後なんか私の問題じゃないからいいや」と思ってもいいわけです。しかし、そんなことは言えません。私には、5年後、10年後のアライアンスの将来に備える責任があります。

 私は気が変わったわけではありません。19年間にわたり、私のことをご存知でしょう? 見ていらっしゃいましたよね。私はマネジメントの原則、そして価値観についても申し上げて、それを実践に移してきました。そんなの今になって変わりませんよ。

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三菱自動車との提携を発表するゴーン氏 ©文藝春秋

 いずれにしても、アライアンスをどのように進化させるのであれ、やはり全面的に日産とルノーと三菱の賛同を得なければならない。それに加えて、2カ国の賛同が必要です。アライアンスのベースである日本とフランスの合意がなければ、どのような進化もあり得ません。合意が形成できなければ、はっきり言って現状維持です。それしかない。今申し上げた関係者が全員合意をした上で初めて動くということなんです。ですから別に緊急性があるわけでもないし、火事が起こっているとか、そういうことではありません。

 多くの憶測が乱れ飛んでいます。「絶対に合併だ」とか「フランス政府が求めている」とか「日本政府は嫌だと言っている」とか。結局それは一部のメディアが騒いでいるだけなんです。短期的にそんな緊急性があるわけではありません。

フランス政府の意向は…… ©iStock.com

完全に3社が合意したうえでないとやりません

――フランスのフロランジュ法(2年以上株式を保有すると議決権が2倍になるなどの法律)の関係で、フランス政府の意向が強くルノーに働き、それが日産にも及んでくるのではないかとの危惧があると多くのメディアは受け止めています。

ゴーン それは分かっているんです。ただ、一つ申し上げたいことがあります。私はどのようなことであろうとも、私の信条に外れたことは決してしませんし、あるいは、私のこれまでのマネジメントの経験から外れたことは決していたしません。さらに、日産、ルノー、三菱のそれぞれの利益に反することは決してしません。これは明快に申し上げておきます。もし何か動く場合でも、先ほど申し上げた通り完全に3社が合意したうえでないとやりません。全面的に各社が賛同しなければ、何もやりません。