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北朝鮮に毎月通う記者が明かす「誰も知らないピョンヤンの素顔」

2019年の論点100

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「静かな革命」の実態とは?

 2018年9月に平壌で開催された「秋の国際貿易フェア」において展示された品物はほとんど中国製品でした。国際的な制裁が今もあるにもかかわらず、中国の中小企業の野望が見え見えだと感じました。こういったことこそが、北朝鮮で起こっている「静かな革命」なのだと思います。

2009年に開催された「秋の国際貿易フェア」 ©共同通信社

 今の北朝鮮の人々は以前に比べれば、「消費」について考え方が随分違います。市場が日常生活の当然の一部である、という意識に進化したのです。その市場経済も、外から見るよりも案外豊かです。勿論、地域の差があるのですが。

 金氏の2018年のお正月の全国に向けての演説以来、北朝鮮国内のムードがすっかり変わりました。去年の北朝鮮国内の緊張感は、間違いなく高かった。戦争が近いかもしれないと思った北朝鮮の人々は少なくなかったのです。一時期、ガソリンの値段が急騰し、何かコネが無ければ、ガソリンスタンドが売ってくれないハメに陥りました。

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北朝鮮市民 ©共同通信社

 北朝鮮の一般の国民は何を考えているか、何をどの程度、心配しているかは非常に測り難いことは言うまでもないでしょう。自由に話せないし、おまけにアメリカ人のジャーナリストである私にザックバランに自分の本音・不満を見せる筈がないのです。地方に取材に行ったり、インフォーマルな会話をしたりすれば、多少のことが把握は出来ます。しかし、北朝鮮の世論を語るには結局は自分の判断・憶測もかなり入ります。

 私の個人的意見としては、北朝鮮国民の感情は「もしかすると戦争が近いかも」という不安に満ちた緊張感が、2018年になって「これから先に大きな変化があるだろう」と期待感を含んだ緊張感に変わった、と見ています。