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AV業界の次は家族がテーマ 紗倉まなが描く“初めての異性”としての父親

note

父親は娘にとって初めての異性です

「父親は娘にとって初めての異性です。父に愛されるかどうかで自分の価値が決まってしまうと思い込む時期が、きっとどんな女性にもあるはず。ところがその一方で、父親は外に愛人を作って家庭をめちゃくちゃにしている。10代の頃はこの矛盾した状況をうまく受け止められませんでしたが、作品を書くうちにある程度仕方ないのかなと思うようになりました。だって、父親って家族の中で常に2番手の存在じゃないですか。子供を産むのは母親だし、“自分なんていなくていいじゃん”という寂しさを実は感じてるんじゃないかって。父親の不在に不満や不安を覚えたこともありましたが、男親ならではの『寂しさ』という言葉にたどりついたとき、自分なりに父親を理解できたんじゃないかと思います」

 本作では、父に関する秘密が明かされるとき、母娘2代にわたる愛と性の物語が姿を現す。書くことで自分なりに「家族」を理解できたという紗倉さんにとって、小説を書くこととは?

「私にとっては、ついやってしまう表現です。たくさん喋るよりも書いたほうが、自分が言いたいことをしっかり伝えられている感じがします。いま自分が抱えている問題を冷静に分析して整理することができますから。今回の作品を書き上げる際に編集さんと喧嘩にもなりましたが、やりとりは電話ではなく、LINEでとお願いしたくらい(笑)。ただ、自分の感情や思いと真っ直ぐに向き合わなければならないので、書き終えた直後はカラカラに干からびた状態になりました。でも、書くことでいまの自分をはっきりと知ることが出来る。最近また徐々に不満とか不安がたまってきたので、機が熟したら3作目にとりかかりたいですね」

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さくら・まな
1993年千葉県生まれ。工業高等専門学校在学中の2012年SODクリエイトの専属女優としてAVデビュー。テレビ出演や雑誌グラビアでも活躍。「週刊プレイボーイ」「messy」でコラム連載。16年の小説デビュー作『最低。』が今秋映画化。その他の著書に『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』、スタイルブック『MANA』。

 

 

凹凸

紗倉 まな(著)

KADOKAWA
2017年3月18日 発売

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