宇宙開発は国家機関のものではない
第二次世界大戦以降、宇宙開発はNASAやJAXAなどの国家機関が独占していた。ロケットや衛星などには軍事に転用できる技術が使われるからだ。そこには国家間競争はあっても、企業間競争はなかった。
2人はやがて宇宙開発も製鉄やコンピュータなどと同様、国家の手を離れて民間で行われるようになると考えた。それに気づいたのは2人だけではない。マイクロソフトの共同創業者であるポール・アレン、ヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソンなどの富豪たちも参入した。
かれらは単なる富豪ではない。科学と工学の豊富な知識を持つ格闘家たちだ。協力者として、SF作家や数学の天才にして銀行家なども加わり、さらにアメリカ大統領や政府機関も巻き込みながら、まさに轟音をあげながら宇宙ビジネスは離陸しようとしている。
本書は宇宙開発史の大転換点となった21世紀初頭を描いた、日本人がいま読むべきノンフィクションだ。
多くの日本人にとって宇宙はいまだに遠い存在だ。しかし本書を読むとアメリカでは多くの人が日常的な仕事として関わっていることがわかる。日本は果たしてどうするべきなのだろう。巨大ビジネス創業者の出現を待っていたら間に合わないかもしれない。
Christian Davenport/2000年よりワシントン・ポスト紙の記者を務め、近年は金融デスクとして宇宙・防衛産業を担当。所属する取材チームはピュリッツァー賞最終候補に3度選ばれた。
なるけまこと/1955年、北海道生まれ。株式会社インスパイア創業者、書評サイト「HONZ」代表。近著に『俺たちの定年後』。