今じわじわと人気を集めている知的興奮型コンテンツ『華Doll*(はなドール)』。その世界観に隠された“闇”の一端を、文春オンラインならではの臨場感ある筆致で描きます。きらびやかなアイドルプロジェクトの裏にある、秘められた本心に近づくヒントになるかも……?
「観客が求めるものを永遠に100%提供できるような存在に」
そんな目標を掲げるアイドルプロジェクト「華人形(はなドール)プロジェクト」をご存知だろうか?
そもそもアイドルとは、ステージの上で常にキラキラと輝いている存在。歌やダンスといったパフォーマンスでも魅了し見る者に憧れを抱かせるが、「華人形プロジェクト」のアイドルたちは言わばその究極形だ。同プロジェクトを立ち上げた天霧プロダクションは、集めた男子たちを“完璧に近い存在”に仕立て上げ、一層まばゆい光をまとわせている。
しかし、そのプロジェクトの内情を取材してみると、完璧を追求するがゆえに施される人体改造や監視生活といった、人権無視の実態が明らかになった。
厳しい環境下でアイドルを育成する天霧プロ
天霧プロダクションとは、現代表取締役社長・天霧一が設立し、一代で5本の指に入る大手へと成長した芸能プロ。主にアイドルの育成、マネジメント、プロモーションを行なっており、中でも育成には力を入れている。
天霧プロダクションが運営する養成所は、スカウトで入所するケースもあるが、大半は過酷なオーディションをくぐり抜けはじめて入所を許される。入所すると通常のレッスンのほか礼儀やルールも厳しく叩き込まれ、ルールを破ったレッスン生は、即契約が破棄されることもあるという。
「天霧プロダクション所属のアイドルには厳しいカースト制があることも知られています。ルールに反すれば降格。逆に芸歴を積んだり高い実績を収めたりすれば昇格し、自らの要望を通すことが可能になるそうです。こういった体制は厳しすぎるという声もあるのですが、独特の存在感を放つ『Anthos*(アントス)』らデビュー組を見ると、それも許せてしまうような説得力がある。事実、天霧の門を叩くアイドル志望は後をたちません」(アイドルライター)
体内に種を埋め込む非人道的プロジェクト
ただ、天霧プロダクションが現在力を入れている「華人形プロジェクト」はもはや“厳しい事務所”のレベルを逸脱した危険なプロジェクトだと批判を呼んでいる。これは、厳しいレッスンやカースト制度だけでは育てられない“新たなアイドルの形”を求め、人体に埋め込んだ特殊な種を“開花”させることで、脳機能のリミッターを外し、潜在能力を最大限まで引き出すというにわかには信じられないもの。これによって身体能力が格段に上がり、前述の「観客が求めるものを永遠に100%提供できるような存在」となるのだ。
こうして誕生したのが、先述の「Anthos*」だ。2019年3月に6人組の「Anthos」としてプレデビューした彼らは、2020年7月、全員が“開花”したのを機に正式デビュー。その際、メンバーが1人加わり7人組ユニット「Anthos*」となった。
また、カースト上位のメンバー3人からなる「Loulou*di(ルルディ)」は、Anthos*より先に“開花”しデビュー。1人脱退した後に新メンバーが加入し、現体制となっている。つまり、現在種を埋め込まれている天霧プロダクション所属のアイドルは、少なくとも11人いることになる。
医師は「もしかしたらすでに犠牲者が」
天霧プロダクションは「華人形プロジェクト」を大手医療研究所の協力のもと行われている“医療行為”だと主張しているが、人間が本能的に抑制している能力を解放しているため、人体に悪影響を及ぼす可能性は高い。“開花”のタイミングで、髪や瞳の色が変わったという異質な例もある。
しかも、種にはGPS機能が備わっていて、一度埋め込まれたら同プロジェクトの管理下に置かれることとなる。実際に、Anthos*とLoulou*diのメンバーは事務所の寮で暮らしていて、脳波測定など細かな健康診断を毎日行なっているそうだ。脳科学を専門とする医師はこう語る。
「詳細を知らなくても危険だとわかる行為です。医療行為ではなくただの“人体改造”だと言えるでしょう。若く健康な男性に、こんなことを……考えられません。長期間体内に種を植え付けたままでは確実に神経や臓器を傷つけるし、最悪命を落とすことも。もしかしたら、すでに犠牲者が出ているのでは」
「華人形」と奇麗な言葉を並べられると聴こえはいいが、彼らは人体改造され過剰な監視下での生活を強制されているまさに「人形」であって、もはや人間ではないのかもしれない。こんな人権無視のプロジェクトが周知され、堂々と行われていること自体疑問に思うべきだろう。
「消息不明のアイドルや、自殺者も」関係者証言
「Loulou*diとAnthos*のメンバーに埋め込まれた種は、ファンから声援など何かしらの感情を得ることで成長し“開花”するのですが、“開花”すれば終わりというわけではないようです。これはあくまで噂ですが、枯れることもあるとか……。花の種をもとにしているわけですから、いつか枯れるのは当然ですよね。そうならないように管理しているのかもしれませんが、枯れたらどうなってしまうのか、わからないのがこのプロジェクトの怖いところです」
そう話すのは、天霧プロダクションに近い関係者。さらに、“開花”することで類まれな才能を手にすることができるが、枯れてしまえばそれを失ってしまう恐れもあるだろう。前述の関係者はこう続ける。
「Loulou*diから脱退した雨宮快斗は、現在消息不明。芸能記者たちの間で、このことは絶対的なタブーです。『彼の花が異常をきたしたのではないか』『既に死んでいるが事務所が隠しているのではないか』という声も上がっています。正直、不気味なプロジェクトですよ。最初は『ICチップを人体に埋め込むケースも世界的に増えているからな』とあまり深刻に捉えていませんでしたが、身体の中で成長して体内に影響がないわけがありません」
関係者にも相当リスキーなプロジェクトだという認識があるようだ。また、雨宮のほかにも実験途中に逃げ出したアイドルもいるうえ、過去にはカースト最上位に所属していたソロアイドル・ChiHERO(本名:天霧智紘)が人気絶頂のさなかに自殺している。「華人形プロジェクト」はもとより、天霧プロダクションはかなり闇が深そうだ。これらの疑惑にどう答えるのか。天霧プロダクションの電話を何度も鳴らしたが、こちらが名乗ると一方的に電話を切るだけで、折り返しが来ることはなかった。
「Anthosのプレデビュー会見では『華人形プロジェクト』を非難する男性記者が会場から追い出されるという騒動があったのですが、それ以来、彼の姿は一度も見ていないんですよね……。こんなに人権をないがしろにしているプロジェクトにもかかわらず、彼以外に問題提起するジャーナリストや媒体が今まで現れなかったのもおかしすぎます。天霧プロダクションはそこまでメディアに手をまわして、何を“守って”いるのでしょうか」(同前)
究極のアイドルを追い求めたことで、生まれてしまった人形たち。徹底的な隠蔽の上で成り立つ天霧プロダクションの「華人形プロジェクト」は、いつまで咲き続けるのだろうか。
Text by 松本まゆげ
提供:ムービック