配信者の素に近い表情が楽しめ、アイテムで応援もできることから人気を集めるライブ配信サービス。アイドルや芸能人も続々参入するなか、「一般人も配信可能」「飲酒・喫煙可」「匿名コメント可能」という“ゆるい”ライブ配信の「ふわっち」というサービスが注目を集めている。
なぜ一般人の雑談に多くの視聴者やアイテムが集まるのか。「ふわっち」で人気の女性配信者・電撃のぬんさんに、「ふわっち」との出会い、ライバーになったことで訪れた変化、今後の目標などについて、話を聞いた。
No.1キャバ嬢→結婚・妊娠・DV・離婚→配信者へ
――ぬんさんは「ふわっち」の人気ライバーとして活躍されていますが、それ以前はキャバクラのキャストやパチンコ店の店員もされていたそうですけど?
⚡電撃のぬん⚡(以下、ぬん) 地元の群馬から上京して、いまもお世話になっているキャバクラで働くようになったんです。結婚してキャストを辞めていた時期もあったんですけど、いまは週1でお店に出ていて、この取材が終わったら出勤です(笑)。
――キャバクラでは、常に上位をキープされていた感じですか?
ぬん 働くからには「ずっと一番をキープしなきゃ!」って思ってたので、めちゃくちゃ頑張っていましたね。なんとしてでも1位を守りたいから、休みは100日に1日しか取らなくて、出勤360日とか当たり前でした。で、一番良くしてくれたお客さんと結婚したんですけど、その人からDVを受けるようになってしまって。
――パートナーからのDVは、どういったタイミングで始まったのでしょう。
ぬん 妊娠してからですね。それまでは本当に優しかったんですけど、ガラッと変わって。さすがに子供を守らないといけないなって、別れることにしたんです。
――別れてすぐに群馬に戻られた?
ぬん いや、最初は東京で頑張ってたんですよ。子供を託児所に預けてお店に出ていたけど、託児所の利用料金が月7万円でさらに家賃もあるので、すごくお金が掛かって大変で。さすがにちょっとやっていけないなと思って、群馬に戻ったんですよ。戻ってからは昼の仕事に就いて。
――昼の仕事というのは。
ぬん パチンコ屋さんです。でも、それだけでは厳しいし、家族に頼るわけにもいかないので、夜はキャバクラでも働いていました。まだ子供が小さかったので結婚前みたいなフル出勤は無理で、週1で出ていましたね。
また、別れた夫からのストーカー行為が始まったりして、いろいろと大変ではありましたね。でも、私や家族に接触したら養育費を請求すると言ったらストーカー行為はなくなりましたけど。
初配信でリスナーに「君なら稼げる」と言われて…
――では、昼はパチンコ店、夜は週1でキャバクラというなかで「ふわっち」に出会ったと。
ぬん そうです。パチンコ屋さんで働いたけど、もう少し収入が欲しいなと思って。当時は子供も小さく、キャバクラで働くのも辞めていたんです。
またキャバクラで働くにしてもコロナでまともに営業できているお店もなかったので、自宅で1対1で接客するオンラインキャバクラで働こうかなって。それで、自分の環境と合う条件のオンラインキャバクラを検索してたら「ふわっち」の広告に目が留まったんですよ。
――「ふわっち」の広告を目にして、すぐにライバーになろうと思い立ったのですか?
ぬん いやいや、最初はオンラインキャバクラの練習にピッタリだなと思ったんです。リスナーさんをオンラインキャバクラのお客さんに見立てれば、接客のトレーニングになるんじゃないかって。
オンラインキャバクラの面接を受ける前に配信してみたら、そのときのリスナーさんたちが「オンラインキャバクラで働かなくていいよ」「君ならふわっちで稼げるよ」って言ってくれて、ものすごく盛り上げてくれたんですね。それで調子に乗って「じゃあ、ライバーやる!」って(笑)。
――オンラインキャバクラの面接は。
ぬん ライバーになる気満々になったので、お断りの連絡を入れました。もう次の日には、どういう企画で配信しようか気合を入れて考えちゃって。「激辛チャレンジやろう!」って、すごく辛いカップ焼きそばを買いに走りましたね(笑)。
素を見せ始めて女性リスナーが増えた
――ライバーを始めた頃は、どういったスケジュールで配信を。
ぬん 子供が小学校に行っている間の朝と昼だけですね。週1で夜もやってましたけど、実家暮らしで両親に迷惑かけちゃうなと思って、ふわっちは配信時間にノルマもないし、朝と昼の好きな時間にマイペースで配信しようって。
いまは勤めていたパチンコ屋さんが閉店しちゃったので、キャバクラとスナックでそれぞれ週1で働いていて、お昼と夕方に配信してます。たまに夜中にもやりますけど。
――始めるにあたって、機材とかガッツリ用意されましたか?
ぬん オンラインキャバクラに向けて用意していたパソコンやグリーンスクリーンがありましたけど、「ふわっち」ってスマホひとつで気軽にできちゃうんですよ。なので、配信のための道具というと、スマホと外で配信するときに使う自撮り棒くらいしかないですね。だから、初心者でもすぐに配信やれちゃうんですよね。
最初はキャラも作ってたんです。男性のリスナーさんが多かったのもあって、キャバクラの感じでかわいこぶって話をしてたんですけど、ある日急にそういうのに疲れちゃって。「もう素でいいや」って。衣装もキャピキャピ系のものを着てたんですけど、Tシャツにして。「ふわっち」のリスナーさんって、自然体な方が多いんですよ。変にキャラを作っている人がいないので、こっちも自然体でいいんだって思える。
あと、素でやるようになってからは女の子のリスナーさんも急激に増えて、それも嬉しかったですね。
「キャバクラに行くより安くていい」
――お酒を飲みながら配信されていることもありますよね。めちゃくちゃリラックスされているといいますか。
ぬん 「ふわっち」は飲みながらの配信がOKで、私も酔ってたほうが頭が回るので、飲みながらやることは多いですね。あと、「ふわっち」も他の配信サービスみたいにリスナーさんがアイテムを購入してプレゼントできるんですよ。リスナーさんが「もう一杯いきな」なんて言って花火(1100円のアイテム)を投げてくれて盛り上がるんです。
リスナーさんのなかには、飲みながら配信を見て、アイテムを投げていたほうが、キャバクラに行くより安くていいなんて言っている方もいますね。
――「ふわっち」のライバーを始めてからは金銭的に余裕も出てきましたか?
ぬん 以前は子供のものを買うにも、いろいろと考えちゃっていたんです。ポケモンセンターというキャラクターグッズの専門店があるんですけど、そこに月に一度子供と行って「欲しいものがあったら買っていいよ」と言えるくらいの余裕は出ましたね。休みの日に外食に行ったり、子供と一日を思いっきり楽しめるようにはなりました。
――誹謗中傷など、嫌な目にあったりすることもないですか。
ぬん アンチのコメントを投げてくるリスナーさんを完全にブロックできなかったけど、すこし前からそういったリスナーさんをブロックしたら絶対にこられないシステムになったんですよ。おかげで、さらに平和になりましたね。
夢は「リスナーが集まれるスナック」開業
――配信を飛び越えて、リアルな世界でリスナーさんと交流することも?
ぬん パチンコ屋さんで「ふわっち」の実況配信をすることがあるんですけど、お店にリスナーさんが来てくれることがありますね。同じ「ふわっち」のライバーさんも会いに来てくれて「ぬんさんですよね?」なんて話しかけてくれたりして、ほんとうれしいですよね。
――今後「ふわっち」の配信一本でやっていくつもりですか?
ぬん いまは雑談がメインですけど、企画とかやるようになったら本業にしてしまうのかなって。たとえばバンジージャンプしたりとか(笑)。
あと、スナックをやりたいなとも考えてるんですよ。もともと高校生の頃からスナックをやりたかったんですけど、「ふわっち」で配信を始めてからその夢が再びムクムクと。リスナーさんが集まれるような、敷居の高くないアットホームなお店ができたらいいなって。「ふわっち」のポイントを貯めて開業資金にしようかなって、本気で考えてます。
撮影:山元茂樹/文藝春秋