とある酒好きの集いで、誰かがこんなことをつぶやいた。

「料理に合わせて酒を選ぶのは楽しいけれど、どんな料理でもこれさえあればという一本があったら、それも嬉しいよなぁ」

 なるほど。料理に合わせ、飲み方のみならず味わいの変化まで楽しませてくれる酒はそうそうない。そう語る件の御仁に教えてあげよう。「薩州 赤兎馬」はいかがですか、と。

 焼酎蔵 薩州濵田屋伝兵衛の「薩州 赤兎馬」は、シャープですっきりとした飲み口とフルーティな味わいの中に、芋の風味がほど良く香る本格芋焼酎。じつに広く深く料理を受け止めてくれる、個性豊かな一本だ。

 たとえば初夏の頃なら、稚鮎。可愛らしい姿を食してしまうのは心苦しいが、カラリと揚げた稚鮎をさまざまにアレンジし、「薩州 赤兎馬」と共に楽しもう。

本格芋焼酎
薩州 赤兎馬
本格芋焼酎
薩州 赤兎馬

 まずは揚げたての稚鮎にバジルと粉チーズを振り、フリット風に。身の旨みと肝の苦みとバジルのさわやかな組み合わせを堪能したところで、「薩州 赤兎馬」の炭酸割りをひと口。と、キリッと清冽な飲み口がハーブの風味を引き立て、いかにもイタリアンなマッチングに。炭酸が口中をすっきりと洗い、稚鮎に伸ばす手が止まらなくなる。

 次は山椒塩。ピリリとした風味が稚鮎独特の香りと油のコクを引き締め、まるで上品な中華のような味わいとなるが、「薩州 赤兎馬」のほのかな甘さがそこに優しく寄り添う。最後は和でとゆかりを試せば、紫蘇の酸味のおかげか、今度は芋焼酎らしい芳醇さが際立つ。料理に合わせ、まさに七変化のごとく異なる魅力を見せてくれるのだ。

 ちなみに衣は1対1の小麦粉と片栗粉を炭酸水で溶いたもの。炭酸の効果でカリッと揚げ上がるのだが、稚鮎も酒も炭酸でおいしくなるとは面白き偶然だ。

 赤兎馬とは『三国志』で「一日に千里を走る」とされた名馬の名だという。乗る者の意を受け止め、時に力強く時に優しく走り続ける名馬の名は、この革新的な芋焼酎にふさわしい。

北方謙三 三国志「赤兎馬」書き下ろし

  赤兎馬は、伝説の馬である。もとは、前漢のころ西域から入れられた、汗血馬にあるのだろう。後漢の三国時代に、呂布という武将が乗った馬の名と伝えられている。私が書いた『三国志』という小説でも、赤兎馬は出てきて、呂布とともに生きる。ほとんど人間のような感情を見せる名馬で、そう描くことによって、呂布の性格も、激烈だが人間的なものになった。赤兎馬は固有名詞で、二代目に、関羽という高名な武将が乗った。

 

 私は、『三国志』を書いたころを思い出す。赤兎馬が出てくると、物語が一歩、二歩進展したものだった。馬なのに、登場人物の存在感を凌ぐような時さえあった。

 

 赤兎馬のファンもいて、私は女子高生から手紙を貰った。自転車を赤く塗ったという。冬の朝、冷たい風を切って自転車を漕ぎながら、赤兎がんばれ、もうすぐ駅だ、と声をあげていたのだという。その姿が想像できて、印象深い出来事として、いまも鮮明に思い出せる。あの女子高生も、いまは立派なお母さんになっているかもしれない。一度会って酒を酌み交わし、赤兎馬について、懐かしさに心をふるわせながら、語り合いたいなあ。

 

提供:濵田酒造株式会社 焼酎蔵 薩州濵田屋伝兵衛
https://www.sekitoba.co.jp/

飲酒は20歳から。飲酒運転は法律で禁じられています。
飲酒は適量を。妊娠中や授乳中の飲酒はお控えください。

Illustration:Katsumi Yada
Design:Hidenori Sato
Edit&Text:Yuko Harigae(Giraffe)