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「かゆくて寝られない…」「かゆみのあるブツブツがいくつも…」心身ともにつらい「結節性痒疹」をご存知ですか?

中高年以降に発症しやすい皮膚の病気「結節性痒疹(けっせつせいようしん)」をご存じですか? 我慢できないほどのつらいかゆみがあるこの疾患を正しく理解しましょう。

かゆみが止まらず、つらいのに周囲に理解してもらえない?

Doctor
掛川市・袋井市病院企業団立・中東遠総合医療センター 参与・診療部長・アレルギー疾患研究センター長
戸倉新樹 氏
1982年、浜松医科大学医学部卒業。米国エール大学リサーチフェローを経て、2002年、産業医科大学、11年、浜松医科大学皮膚科学の教授を務め、名誉教授に。21年より現職。

 よく知られている皮膚疾患にアトピー性皮膚炎があるが、「結節性痒疹」の患者数は約10万9千人*(国内・15歳以上)と推計され、患者が抱えるつらい悩みの割には認知度が低い。一体、どのような症状があるのか。

 「ポツポツと現れてさまざまな形がある『湿疹』と異なり、『痒疹』は皮膚が盛り上がった丘疹が個々同じように現れるのが特徴です。その中でも、直径1cmほどのブツブツした結節(しこり)ができて、なかなか治らないのが『結節性痒疹』の特徴です」と教えてくれるのは戸倉新樹先生。

 手足の外側や背中、腰などにできることが多く、それぞれのブツブツはまとまらずに孤立している。慢性のためなかなか消えることはなく、長年出たり消えたりを繰り返すこともある。

 「かゆみが非常に強いために掻きむしってしまうことが多く、結節の頂上がびらん状態になったり、赤むけしていることもあります。掻きこわすことでさらに炎症が進み、かゆみが強まるという悪循環に陥りやすいのです」(下図)

かゆみがとても強いため、睡眠や日常生活、心の健康に支障をきたしてしまうことも。原因は不明だが、サイトカインという物質が皮膚の炎症を引き起こし、皮膚に結節性病変とかゆみを生じさせる。さらに、炎症が神経を過敏にし、かゆみを強めてしまう。
かゆみがとても強いため、睡眠や日常生活、心の健康に支障をきたしてしまうことも。原因は不明だが、サイトカインという物質が皮膚の炎症を引き起こし、皮膚に結節性病変とかゆみを生じさせる。さらに、炎症が神経を過敏にし、かゆみを強めてしまう。

 他の皮膚症状と比べても精神的な影響が大きく、日常生活での悩みが強く現れやすいのも特徴だ。

 「問題のひとつは見た目です。痒疹を気にして人と会うことをためらい、中には引きこもってしまう人もいます。もうひとつは労働生産的な問題で、強いかゆみがあるために集中力を欠き、仕事や学業がうまくいかなくなることもあります。また、十分な睡眠がとれず、体調を崩す患者さんもいます」

 精神的に不安定になることから、家族や周囲の人がストレスを抱えることも多いという。悪化した状態が何年も続くことがあり、将来に期待が持てないというつらさもある。

 患者は30、40代から70、80代までが多いものの、アトピー性皮膚炎から発症する小児もいるというこの結節性痒疹、いったい何が原因で発症するのだろうか。 

先の見えない状態から脱却し前向きな治療をめざす

 「はっきりわかっておらず、原因と言われるものはさまざまです。たとえば、アトピー性皮膚炎で皮膚を掻く行為や、蚊やブヨなどの虫刺されが引き金になることもあります。また、糖尿病や腎不全など基礎疾患の影響で発症することもあります」

 これほど生活に負担がかかるものでありながら、これまでは治療法が限られていて患者の悩みは大きかったが、最近、状況は変わりつつある。

 「以前は塗り薬や貼り薬でかゆみを抑える程度でしたが、治療は前進しています。見た目の問題では、盛り上がっている部分が平らになり、赤みが引いて色素沈着の状態になるまで、数か月でたどり着くこともあります」

 また、かゆみが少なくなることで精神的にも楽になるという。

 「かゆみを10段階で評価するNRSという指標があります。10が最も強く、0はかゆみのない状態ですが、これまでは1、2段階下げるのも簡単ではありませんでした」

 人によって症状もさまざまだが治療はどんな状態を目標に行われるのだろうか。

 「かゆみも皮膚症状もなくなり、その状態を持続できるのが理想ですが、人によっては全くなくすのは難しいかもしれません。それでも先ほどの10段階評価でいえば、0か1という、ほぼかゆみを感じない状態を目指し、しっかり睡眠をとれる、仕事に支障がなくなるなど、無理なく社会的生活を送れるようになることは十分可能でしょう」

 人前に出るのに抵抗がなくなる、温泉などで肌を見せられるようになるなど、叶えたい目標は人それぞれだが、それも夢ではなくなるという。ただし、結節性痒疹という病気自体、完治させることは難しい。

 「皮膚がいい状態になっても、また何かのきっかけで痒疹が現れることはありえます。けれども、すぐに察知して早めに治療をすることで、症状が重くなることは避けられるでしょう」

 これまで効果的な治療がなく、生活の質の向上を諦めがちだったことを考えると、現状は極めて明るくなっている。患者はもちろん、家族や周囲もこの病気を正しく理解し、うまくつきあってゆくようにしたい。

*Ständer S, Ketz M, Kossack N, et al. Epidemiology of chronic prurigo nodularis compared to psoriasis in Germany: a claims database analysis. Acta Derm Venereol 2020;100:adv00309

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(MAT-JP-2308984-2.0-11/2023)

photo(portrait):Keiji Ishikawa
Text:Ayaka Sagasaki