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カリスマ投資家・テスタ氏は主人公の投資スタイルに異議あり⁉ 「夢があるけどクレイジー。真似はしないで!」――『ダム・マネー ウォール街を狙え!』

2024/01/31

 2月2日(金)より全国公開となる『ダム・マネー ウォール街を狙え!』。1月26日(金)に開催した先行試写会では、70万超のX(旧Twitter)フォロワー数をもつ株式投資家テスタ氏が登壇し、個人投資家ならではの視点で見どころをたっぷりと語った。

Xフォロワー数70万人超のテスタ氏 ©今井知佑/文藝春秋

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2021年の“ゲームストップ株騒動”が早くも映画に

 2021年1月、世界最大のアメリカの金融マーケットを震撼させた前代未聞の事件が発生した。SNSに集った小口の個人投資家たちが、時代遅れで倒産間近と噂されていたゲームストップ社(実店舗によるゲームソフトの小売り企業)の株をこぞって買いまくり、同社を空売りしていた大手ヘッジファンドに大損害を与えたのだ。

 実際に起きた株騒動を描いた本作にちなんで、株式投資家としてYouTubeをはじめTVやSNSでも活躍するテスタ氏が上映後のトークイベントに登壇。

「クレイジーでしたね(笑)。僕はデイトレーダーという、日々、投資の利益だけで生活をしている株式投資家です。なので、主人公キース・ギルとリンクするところも多く、とても面白かったです」と絶賛した。テスタ氏は、2005年に300万円を元手に投資をスタートして以来、19年間投資を続け、累計利益は80億円を超えるという人気カリスマ個人投資家だ。

SNS時代、コロナ禍も重なって…

 本作はアメリカで実際に起きた“ゲームストップ株騒動”をベースに描いた物語。いたって普通の人たちが、ゲームストップ社を世界で最も価値の高い企業の一つへと押し上げ、金融界の大富豪たちを破綻させた逆転劇だ。全米を揺るがす社会現象となり、日本でも大きな反響を呼んだが、テスタ氏に当時を振り返ってもらうと…。

「本当にびっくりしました。僕は主に日本株の取引を行っていて、この騒動はアメリカ株ですので市場は異なりますが、それでもやっぱり大きなニュースでした。SNS時代になって、おそらくコロナ禍という背景があったことも大きな要因でしょう。誠実で謙虚なキースのキャラクターはもちろん、さまざまな偶然も重なって起きたんじゃないかな」

主人公とリンクするところも多いというテスタ氏 ©今井知佑/文藝春秋

 さらに、「2021年の騒動だと思うと、めちゃくちゃ映画化が早いですよね。旬を逃さないところが本当にすごい! 記憶に新しいことなので、まだ熱量がありますし、もう映画化されたのかってスピード感にもびっくりです」と製作から映画公開(全米公開2023年9月)までの異例の早さに驚きを隠せない様子だ。

株式投資が一般的になった今観るべき作品

 ゲームストップ株に全財産を投じた平凡な会社員キース・ギルにスポットを当て、事件の内幕を描き出す本作は、単なる株取引の話ではない。人々が恐怖や孤独や不安を抱えていたコロナ禍。富裕層のために、貧しい者や労働者を軽んじるシステムに対する怒りが高まっている時期でもあった。キースと、彼の主張に共感してささやかな夢を見出した人たちの人間模様が、コミカルでちょっぴり切なく繰り広げられていく。

© 2023, BBP Antisocial, LLC. All rights reserved.

「夢がありますよね。だって、資産1,000万円が30億円になったわけですから。それが事実として、たった2~3年前のできごとであって、完全なフィクションとはまた違った感覚で、とにかくリアリティがあると感じました。日本でも起こり得る話だと思います。投資をやったことがない人にもスリルや興奮、臨場感は伝わったんじゃないかと思うのですが、どうですか。面白かったですか?」

 会場は大きな拍手で回答。証券についての専門用語も飛び出す作品だが、どのくらい投資をやっている人がいるのか気になるテスタ氏の問いかけには、会場の半数が手を挙げた。

「時代は変わりましたね。若い方も多くいらっしゃる。やはり新NISAなども始まって株式投資が一般的になってきたと実感します。僕が投資を始めた20年ほど前は、若者はほとんどやっていませんでしたから。身近で知っているテーマの映画のほうが頭に入ってきやすいと思いますし、まさに今観るべき作品だと改めて感じますね」

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「この映画を観て株式投資を始めてみようというのは危険です(笑)」

 また、個人投資家の視点から主人公キースに共感する部分も多かったという。

「本当にそのままですよ。やっぱり1,000万が1億、2億となれば、家族も友人もみんな『売っちゃえ!』と言うのが一般的な感覚だと思います。それでも売らなかったのがキースのすごいところ。ゲームストップ社に愛着があったとはいえ、なかなかできることじゃないし、精神力の賜物だと思います。僕も、持ち株が何億円になったときに、親にはもうやめておきなさいと言われましたけど、その点では主人公と同じく耳を貸さずに続けました。株はギャンブルではないと思っていますから。増えるべくして増えると思っているし、そういう自分を信じて続けています」

 ただ、主人公キースの投資スタイルには賛同できないと強く反論。

「クレイジーですよ。彼の真似は絶対にダメ! 人生を賭けて一つの銘柄に投資するというのは、当たれば利益は大きいですが、ギャンブルですから。僕はおすすめしないですね。この映画を観て株式投資を始めてみようというのは危険です(笑)。実話ベースとはいえ映画は映画。もちろん夢を見ることは大事ですが、初心者の方には、始めるならちゃんと勉強してからにして、と伝えたいです」

映画公開中に事態が動く可能性も?

 そして、本作の結末はまだわからないという。

「どこまでが黒(犯罪行為)なのかは、おそらくはっきりしていない状態なんじゃないかと。法律が追いついていないだけで、公開中に捕まる可能性もあるのではないかと僕は思っています。それくらい、配信やSNSなどで言及することによって実際に株価が動いてしまうことが、“株価操縦”という罪にみなされるかどうかはグレーなところがあるので…。僕自身もライブ配信で株式投資について話すときには、具体的な個別銘柄についての話は避けているんですよ」とSNSで活躍する投資家ならではの見解も飛び出した。

© 2023, BBP Antisocial, LLC. All rights reserved.

 主人公キースは、実際の人物であり、ゲームストップ株に希望を抱く庶民の“ダム・マネー(愚かな投資)”を根こそぎ巻き上げようとしたヘッジファンドの億万長者や、スマホ証券で脚光を浴びた創業者たちのキャラクターも実名で登場する。登場人物の人生がジェットコースターのように激変する群像劇。ハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか、テスタ氏がコメントしたような新たな展開があるのかもお見逃しなく。

 

STAFF & CAST
監督:クレイグ・ギレスピー/出演:ポール・ダノ、ピート・デヴィッドソン、ヴィンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラ、ニック・オファーマン、アンソニー・ラモス、セス・ローゲン/2023年/アメリカ/105分/配給:キノフィルムズ/2月2日全国公開

提供/(株)キノフィルムズ