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週刊文春7月4日号「資産運用・相続特集」資料請求&プレゼント

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改めて考えたい
これからの「お金」との付き合い方

将来に向けた資産運用や相続対策の必要性が高まっている。しかし最適解は人それぞれ異なるため、まずは自分のライフプランに冷静に向き合うことが肝心だ。本特集では、有識者のアドバイスを参考にしながら、これからのお金との賢い付き合い方を考えていく。

【Part1.資産運用特集】
過度な悲観論に振り回されず
自身の運用目的を明確化する
――ファイナンシャルプランナー 深野 康彦氏に聞く

ファイナンシャルリサーチ代表
ファイナンシャルプランナー
深野 康彦氏
ファイナンシャルリサーチ代表
ファイナンシャルプランナー
深野 康彦

 2024年から新NISA(少額投資非課税制度)がスタートし、3月には日経平均株価が過去最高値をつけるなど、資産運用への関心は、かつてないほど高まっている。そんな中、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏のもとには、資産運用に悩む個人から多くの相談が寄せられている。投資初心者はもちろん、中にはすでに億単位の資産を保有する高齢者が自分も新NISAを活用すべきか相談してくるケースもあったという。

 その一方で、SNS上で著名人をかたる広告をきっかけに投資に勧誘される詐欺事件が急増している。国民生活センターによると2023年度の相談件数は1629件となり前年度から約9.6倍になったという。「『将来に向けて資産運用しなければいけない』『乗り遅れてはいけない』という強迫観念に駆られている方が増えているように思います。もちろん新NISAは有益な制度ですが、活用しなければならないわけではありません。同じく投資もやらなければいけないわけではありません。まずは自分が資産運用する理由を冷静に認識することが重要です」と深野氏は釘を刺す。

 日銀のマイナス金利解除を受け、足元では「金利のある世界」になりつつあり、銀行の普通預金金利は上昇傾向にある。「もし金利収入が得られるのであれば、投資を通じて過度なリスクを取らなくてもいい人もいます」(深野氏)。債券や個人年金保険など、新NISAの対象ではないが比較的安全に運用され、将来受け取れる金額があらかじめ分かっている金融商品を使うという手もある。新NISAを活用するのであれば、長期・分散投資を重視しながら、自分の資産運用にふさわしい金融商品を選びたいものだ。

 2019年に老後資金2000万円問題が話題になったが、昨今の物価上昇を受けて、今では老後資金4000万円問題ともいわれる。深野氏は「将来に備えることは大切ですが、だからといっていまお金を使うことを必要以上に我慢することはないと思います。10年後は、いまよりも確実に10歳年齢を重ねています。いまできることが10年後にも同じようにできるとは限りません。いまを充実させるためにお金を使うという発想も大切」と話す。投資ブームや過度な悲観論に振り回されることなく、自身のライフプランを見据えたお金との賢い付き合い方が問われている。

【Part2.相続対策】
相続・贈与は負担増の流れ
遺贈寄付は早めの検討を

 2024年4月から不動産の相続登記申請が義務化された。不動産を相続した相続人は、相続によって所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をする必要がある。これは過去の相続発生による相続登記未申請分も対象となり、正当な理由がなく登記しなければ、10万円以下の過料が発生する可能性もある。土地や家屋を相続したものの登記名義人の変更手続きをしていない人は注意が必要だ。

 また、2023年度の税制改正大綱で相続税の課税対象となる生前贈与の加算期間が見直され、2024年1月1日以降の贈与を対象に3年から7年に延長された。実際に加算期間延長の影響が出始めるのは2027年1月1日以降だが、これも個人にとっては負担増の改正だ。「このように相続や贈与周辺では近年、負担増の傾向にあります。法改正などは、小まめに確認しておきましょう。さらに昨今の株高・不動産価格の高騰により、相続時の税負担が増える人もいると思います。相続への備えは、早めに行動することが肝心です」と深野氏はアドバイスする。

 昨今では自分の死後、遺言書をもとに公益団体やNPOなどへ財産を寄付する遺贈寄付への関心が高まっている。単身の高齢者が増加する中で、財産を広く世の中のために活用したいと考える人が増加していることが遺贈寄付への関心が高まる背景の一つといえそうだ。相続人がいない場合、財産は国庫に帰属することになる。自分の思いを託して遺贈寄付したいと考えるならば、早めに遺言書の作成を検討したい。遺言書は何度でも書き直せるので、自分の思いが変化した場合でも心配ない。

 「生前贈与する場合は、子や孫など受贈者の資金ニーズが高い時に行いたいものです。そう考えると早めに検討したいケースもあるでしょう」と深野氏は話す。とはいえ、焦って生前贈与を行い、自分の老後資金が心許なくなっては本末転倒。やはり自身のライフプランをしっかり立てたいものだ。事前の対策を早めに行っても、いざ相続が発生すると、煩雑な事務手続きを数多くこなさねばならず、さらに相続税は10カ月以内に申告・納付する必要がある。信託銀行など相続に長けた専門家の活用も視野に入れながら、円満な相続を実現してほしい。