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文藝春秋8月号「シニアホーム特集」資料請求&アンケート

文藝春秋8月号「シニアホーム特集」資料請求&アンケート

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「こんなはずじゃなかった」と悔やまない!
今は満足、将来も納得のシニアホームを見分ける方

シニアホームに入居する理由はさまざまだ。病気やけがで自宅での暮らしが難しくなった人もいれば、「将来子どもたちに面倒をかけたくない」「今は元気だが一人暮らしで災害時や防犯が不安」と、自ら住み替え先を探す人もいる。施設選びのポイントについて、有料老人ホーム・介護情報館で相談員を務める今井紀子さんに聞いた。

QOLを維持するための機能訓練を強化

 民間のシニアホームであれば、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が主な選択肢に挙がる(表参照)。

主なシニアホームの種別

※都道府県(または市町村)から「特定施設入居者生活介護」の事業指定を受けている施設では施設スタッフによる介護となる
※都道府県(または市町村)から「特定施設入居者生活介護」の事業指定を受けている施設では施設スタッフによる介護となる

 シニアホームに詳しい今井紀子さんは「ホームのあり方は多種多様。だからこそ住まい選びにおいては自分自身が何を重要視するのかを明確にして探すことが重要です」と説明する。

 基本的にシニアホームは、元気な人向けの自立型と、介護を必要としている人向けの介護型の二つに大別される。元気な人向けの「自立型」のホームは、介護型に比べて居室が広く、各部屋にミニキッチンや浴室などの住宅設備が揃っていることが多い。老人ホームといえば暗くて不便というイメージがあれば、その進化に驚くだろう。

 さらに近年では、体の機能を保ち、QOL(生活の質)を高めたり、高齢期のうつを解消するためのリハビリに力を入れるホームも増えている。

有料老人ホーム・介護情報館 館長
今井紀子(いまい・のりこ)
医療法人副事務長や有料老人ホーム施設長、老人保健施設事務長などを経て現職。介護ヘルパー2級資格。医療、介護の両面から高齢者に合う住まい選びをサポートする。
有料老人ホーム・介護情報館 館長
今井紀子(いまい・のりこ)
医療法人副事務長や有料老人ホーム施設長、老人保健施設事務長などを経て現職。介護ヘルパー2級資格。医療、介護の両面から高齢者に合う住まい選びをサポートする。

「介護スタッフ中心に日常生活を通じたケアを実施しているところもあれば、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門職が介護士、看護師等と連携し、個別のリハビリ計画を実施している熱心なホームもあります。見学等でリハビリの状況を確認できるといいですね」

 ただし設備やサービスが充実するほどに、費用は高くなる。「震災や犯罪の不安から早めの入居をする人が増えて入居期間が長期化する傾向にあり、必要となるお金が増えています。予算の上限があるなかで、必要とするサービスの質と量を吟味することも大切です」と今井さん。

「例えば看護師が24時間常駐しているホームは理想ですが、その人員体制を実現するには相応のお金がかかります。であれば、必要に応じて看護師が駆けつけるオンコール体制でも良いかもしれない。どこまで安心を求めるのかと、予算に照らして検討する必要があります」

終末期を左右する緩和ケアや看取り対応

 介護付き有料老人ホームであれば、連携する医療機関が設定されている。このほかのシニアホームでも多くは協力医療機関などを設定している。ただし連携先の医療機関に自分がかかりたい診療科目がない場合には、別のクリニックを受診し、入居先の介護に携わるスタッフに情報共有してもらう必要がある。

 また年齢を重ねるとがんの罹患リスクが高まるが、末期がんになると対応は簡単ではない。

「がん末期に痛みが強くなった場合、緩和のために専門的な医療行為が必要となります。このため、緩和ケアを実施できるホームは多くありませんでした。ただし最近では訪問診療や訪問看護と連携しながら終末期を過ごせるホームも出てきました。また看取りについては、ご自身が考える看取りの対応を精査したうえで、施設の職員から看取りの可否、特に“看取りができなかった”事例の詳細を聞いておきましょう」

長い時間をかけてひととなりを知ってもらう

 シニアホームは終の棲家とのイメージが強いが、自立型のシニアホームで要介護になると、多くは今までの居室から介護室へと住み替えたり、系列の介護施設などに移ることになる。今井さんは「介護が手厚い場合、介護室に移ると費用が上がるホームもあります。見学の際には『移動するタイミング』と『移動先の場所』『かかる費用』は必ず確認しておきましょう」と助言する。

 ただ、数は少ないが一般居室で住み続けながら介護を受けられるホームはある。また入居者の価値観や思いに寄り添って個別対応する事例もあるという。

「長いお付き合いを通じてスタッフが入居者のひととなりを理解し、毎日のお世話を通じて愛情が生まれると、気持ちに寄り添う対応がしやすくなります。シニアホームにできるだけ早めに入居する利点とは、まさにこの点にあります。高齢期の暮らしを共にするスタッフと時間をかけて人間関係を築いておくことは、最期までの時間をより豊かに過ごす助けになるはずです」