喫煙歴約30年。これまで、「臭い」「迷惑」「体に悪い」など、喫煙を阻むさまざまな声にさらされてきた。仕事で医療関連の記事を扱うたびに、何ともいえない後ろめたさも感じてきた。
それでもタバコを吸っている間は、日常からほんの少し距離を置くことができる。そんな特別な時間を手放すつもりは全くない。私にとってタバコは、周りから「あいつはダメだ」と言われても会いに行ってしまう男のようなものかもしれない(過去に『だめんず・うぉ〜か〜』に登場経験あり)。
とはいうものの、五十路に突入し、ますます体(特に肌)の衰えを感じている。それに加えタバコの価格は上昇するばかりで、1日1箱分のタバコ代は貧乏ライターにとって死活問題だ。「じゃあ、タバコをやめればいいじゃないか!」というツッコミが聞こえそうだが、そんなことでやめているくらいならとっくのとうにやめている。せめて、今後のシニア婚活のためにも、生活のためにも、タバコの本数は減らしたい!
厚生労働省の調査でも、タバコをやめたい人よりも本数を減らしたい人が多いという(「令和元年国民健康・栄養調査報告」)。まさに世の中は「減煙トレンド」。私もその波に乗ろうではないか。
加熱式タバコで陥った“負のスパイラル”…次なる一手は?
まずはもともと吸っていた紙巻タバコを減らそうと、加熱式タバコを導入した。加熱式タバコはタールの発生量が少なく、何といっても紙タバコ特有の匂いがない。紙タバコの匂いは周囲に不快感を与え、現在ではスモハラともいわれる。喫煙者にとっては、ますます肩身がせまい世の中だが、実を言えば、私も他人のタバコの煙は大嫌いだ。さらに言えば部屋の中に残る匂いも嫌で、自宅では換気扇の下でタバコを吸っている。
そんなわけで、自宅や喫煙可能な店で手持ち無沙汰感や口さみしさを紛らわしたいときは加熱式タバコ、気分転換をしたいときには紙巻タバコと使い分けることにした。
ところが! タバコの本数は減るどころか、逆に増えていることに気づいた。加熱式タバコは吸い心地が軽く、満足できずに次から次へと吸ってしまう。筆が進まないときはなおさらだ。結局、紙タバコが恋しくなり、その本数も減らないという負のスパイラルに陥っていたのだ。
つまり、タバコにかかるコストやタールやニコチンの摂取量も増えているわけで、これでは将来の不安は募るばかり……。
そこで新たな減煙対策として注目したのが、「VAPE(ベイプ)」である。VAPEはタバコ葉を原料として使用せず、ニコチンもタールも含まないリキッドを熱して発生する蒸気を吸引するもので、タバコではない(海外ではニコチンを含むVAPEもあるが、日本では未承認で販売されていない)。そのため、タバコのような健康への悪影響がなく、不快な匂いもないという。
このVAPEを手持ち無沙汰感や口さみしさを紛らわしたいときに使えば、ニコチンの摂取量は減るはず。自宅で仕事をする時間が長い私としては、大きなメリットだ。
VAPEは国内外のメーカーから販売されており、多くの種類があって迷う。私が選んだのは使い切りタイプの「NICOLESS VAPE(ニコレスベイプ)」。充電やリキッドを交換する必要がないので、加熱式タバコの充電も面倒だったズボラな私にピッタリだ。
半透明のタンクでリキッドの残量もわかりやすい。加えて薄型で持ちやすく、携帯するのにも便利そうだ。リキッドの主成分は植物性グリセリンやプロピレングリコールや香料など食品添加物として使用されているもので、安全性も確認されている。
肝心の吸引回数はというと、1本で約700回。タバコにすると約3箱分で、価格は1,408円(税込)。私の現在のタバコ代は3箱だと1,740円なので、コスト減が期待できる。ネットとコンビニで販売されていて、欲しいときに購入しやすいのも重要なポイントだ。
一方で、こんな疑問もわく。そもそもタバコを吸いつづけるのはニコチンの依存が原因。ニコチンを含まないVAPEで満足できるだろうか……。
想像していた以上の煙霧量で、“吸った”気分に
とにもかくにも、試してみないことには始まらない。NICOLESS VAPEには、メンソールとレモン、グリーンアップル、ミックスベリー、マスカットのフルーツフレーバーの4種類があるが、日ごろ吸っているタバコに一番近そうなメンソールの「FREEZE BLACK」から試してみることにした。使い方は簡単。上下のキャップを取って、吸うだけでいい。
まずはひと吸い。メンソールのインパクトに加え、想像していた以上の煙霧量で驚く。ちゃんと“吸った”という気分になるのだ。もくもくとした白煙も立ち昇るが、もちろん匂いは感じない。タバコのように口の中に嫌な感じが残ることもなく、爽やかなメンソール味だけが口の中に広がる。これなら、純粋に味を楽しむこともできそうだ。
他のフレーバーはどうなのか、気になってきた。正直、フルーツフレーバーのタバコは甘い感じが残って苦手だ。実際に吸ってみるとあまり甘味を感じることなく、ちゃんとフルーツの味がして単純に美味しい。レモン、グリーンアップル、ミックスベリーはメンソール感もしっかりとある。マスカットはメンソール感が少ないもののマスカットの味を濃厚に感じた。それぞれ特徴があって、飽きずに済みそうだ。
現在、使い始めて2週間。パソコンの横に各フレーバーを並べて、口さみしくなったときにいろいろなフレーバーを楽しんでいる。アメをなめるような感覚に近いかもしれないが、余計な糖分を摂らないで済むのはありがたい。
しかも、好きなタイミングで吸えて、吸う回数も調整できるのもいい。タバコだと一度吸い始めると、「もう満足」と思っても、貧乏性がゆえに最後まで吸ってしまう。いったん消して、また火をつけるという手もあるが、シケモクほどまずいものはないと私は思っている。
やはりタバコが恋しくなるときもあるが、数時間に1本くらいのペースで済んでいる。口さみしさを紛らわしたいときには、NICOLESS VAPEで十分だということだろう。
タバコの本数は1日0.5~0.8箱程度になり、ニコチンの摂取量は確実に減っている。ニコチン摂取量が段階的に減少することで、ニコチンへの依存度が減り、禁煙に成功する可能性もあるという。積極的にタバコをやめる気はないが、ストレスがなく自然に禁煙ができるのなら、それに越したことはない。
タバコではないVAPEは本来、喫煙が禁止されている場所でも吸える。しかし、見た目はタバコと同じで、周囲の人は嫌がるだろう。今は自宅での使用が中心だが、人前でも遠慮なく楽しむことができれば、飲み会で喫煙所に行く回数や喫煙所を探す手間も減ると思う。今後、VAPEの認知度が上がることに期待したい。
NICOLESS VAPE(ニコレスベイプ)
GREEN APPLE/RED MIXBERRY/GOLD LEMON/
FREEZE BLACK/WHITE GRAPE
1本2ml・1,408円(税込)