今、パチンコに行く人が減っているという。「レジャー白書2024」(公益財団法人日本生産性本部余暇創研)によれば、2023年の日本のパチンコ参加人口は、過去最低の660万人だったらしい。

 言われてみれば、最近周りでもパチンコに行く人をあまり見かけない。会議のあとの雑談で職場の同僚に理由を聞いてみると、

「やってみたいけど難しそう」

「小遣いが少ない」

「嫁が怖い」

 などなど……。

 日本独自の大衆娯楽として長い歴史を持ちながら、近年はこうした固定観念により、遊技人口が減少しているパチンコ。この現状に対し、パチンコ本来の面白さを次世代へとつなぐべく、遊技機メーカー大手の株式会社SANKYOが、2025年8月、新プロジェクト「KUGITAMA(クギタマ)」を始動させるという。

2025年8月にベールを脱ぐ、SANKYOの「KUGITAMA」プロジェクトとは?

 遊技人口の減少や業界イメージの固定化など、変化の激しい時代において、あえてパチンコの根本的な面白さである「釘と玉」というシンプルな要素に立ち返り、新たなファン層との接点を模索するこのプロジェクトには、どのような想いと戦略が込められているのか。その全貌を紹介する。

もう一度、パチンコの本来の面白さを

「KUGITAMA」は、“釘と玉”が織りなすシンプルな遊技の魅力を再評価し、初心者や若年層、そしてかつての愛好者など、あらゆる世代に向けてパチンコ文化を再発信することを目的とした総合プロジェクトだ。

 その背景には、近年の業界を取り巻く厳しい現実がある。かつては街の至るところで賑わいを見せていたパチンコ店も、「お金がかかる」「初心者には難しそう」といったイメージの固定化や、遊技人口の高齢化により、利用者は年々減少傾向にある。

 そんな状況に対し、SANKYOは“娯楽の本質がここにある”というキーワードを掲げ、パチンコ本来の面白さに立ち戻ることで、娯楽としての魅力を再構築しようと動き出したのだ。

KUGITAMAプロジェクトって?

デジタル、リアル、プロダクト…三位一体の施策で体験価値を創出

「KUGITAMA」プロジェクトは、デジタル(アプリ・博物館)、リアル(体験型店舗)、プロダクト(新機種開発)の三つの軸から構成されており、それぞれが連携することで、多面的なユーザー体験を実現する。

1. デジタル施策:ゲームアプリとオンライン博物館(2025年10月より順次公開予定)

 まず、現在開発中のゲームアプリでは、懐かしの名機や“羽根モノ機”と呼ばれるシンプルな遊技機を、スマートフォンやパソコン上で無料体験できる。ゲーム内で遊んだ台を、体験型店舗で実際に遊技できる連動企画も予定されている。

 さらに、「SANKYOミュージアムオンライン(仮称)」というデジタル博物館も開設予定。パチンコの歴史や文化、SANKYOの技術遺産などを紹介するこのオンライン施設は、単なる遊技体験にとどまらず、文化的・教育的な意義をも兼ね備えた試みとなっている。

 開発中のデジタル博物館「SANKYOミュージアムオンライン(仮称)」
懐かしの名機や新たな羽根モノ機が遊べるアプリも開発中。第1弾は「ロボスキーI」(パチンコ機登場1988年)

2. リアル施策:遊べるカフェ型店舗を都心に展開予定

「KUGITAMA」はデジタル上だけでなく、リアルでの体験にも力を入れている。注目すべきは、都心部に展開予定の“カフェ×遊技機”の体験型店舗だ。ここでもシンプルな“羽根モノ機”を中心に遊技機を設置。ルールがわかりやすく、誰でもすぐに楽しめる内容となっている。

 店舗にはカフェスペースも設けられており、飲食や休憩をしながら気軽に過ごせる設計に。パチンコに馴染みのない若年層や女性客にもアプローチしやすい空間となっており、“敷居の低い新しいパチンコ体験”を提供する。

都心部に展開予定の体験型店舗(画像はイメージ)
 

3. プロダクト施策:「釘と玉」の楽しさを再現した新台

 プロジェクトの核ともいえるのが、パチンコの原点である「釘と玉」に立ち返った“羽根モノ機”の新規開発だ。「フィーバー(FEVER)」シリーズで一世を風靡したSANKYOだが、新プロジェクトではあえて近年の華やかで複雑化した演出のパチンコ機ではなく、どこか懐かしい、“遊びとしてのパチンコ”にフォーカス。新台は導入コストを抑え、体験の機会拡大を図れるよう、低価格で設計されており、ホールにとっても導入しやすい内容になるという。

パチンコの原点である「釘と玉」に立ち返った“羽根モノ機”の新規開発

専門組織としての新会社「SANKYO IZM」の設立

 この「KUGITAMA」プロジェクトを本格的に推進していくため、SANKYOは新たな専門会社「SANKYO IZM株式会社」を設立予定。所在地はSANKYO本社と同じ東京都渋谷区で、代表取締役社長には髙橋博史氏が就任。同氏は、SANKYOの副社長も務めている。

 新会社は、プロジェクト推進にとどまらず、「遊技機文化の研究・啓発及び普及に関する事業」を事業内容とし、業界課題への対応や新規事業開発、さらには業界他社との連携といった幅広い役割を担う。パチンコ業界全体の活性化を目指し、業界の未来像を見据えた、戦略的な動きといえるだろう。 

特設サイト&SNSで情報発信も

 プロジェクトのスタートにあわせ、「KUGITAMA」の特設サイトも公開されており、最新情報やコンセプトムービーなどが順次更新されている。SANKYOの公式X(旧Twitter)、YouTube、TikTok、LINEなど、各種SNSでも積極的に情報発信を行っており、若年層との接点拡大にも取り組んでいる。

KUGITAMAプロジェクトの
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パチンコの未来はあそびの再発明にある

 最後に、社内で見つけた昔ながらのパチンコ愛好者の男性に、パチンコの魅力について聞いてみた。知的でおだやかな、定年間近のナイスミドルだ。

「うーん、僕にとってのパチンコは、仕事帰りに気分転換やクールダウンに立ち寄る“純喫茶”に近いかな。会社で嫌なことがあっても、家に持ち帰らない。何も考えず、“無”になれる時間というか、メディテーションに近いかもしれない(笑)」

「複雑でわかりにくい」「お金がかかる」という固定化されたイメージにより、かつての「気軽に楽しめる娯楽」としてのパチンコの姿は大きく揺らいでいる。SANKYOの掲げる「KUGITAMA」は、単なるプロジェクトではない。そこには、この現状を真摯に受け止め、「遊び」の本質と向き合い、「KUGITAMA」を通じ、遊びを愛するすべての人々とともに、日本発の娯楽文化を未来に継承していく、という強い意志が込められている。

 パチンコに触れたことがない人、かつて楽しんでいた人、現役ファン……あらゆる垣根を越えて“あそび”の可能性を広げていくこの挑戦は、単なる業界改革ではなく、日本の娯楽文化全体に新たな風を吹き込むことになるだろう。

 今後の「KUGITAMA」の展開から、目が離せない。

 

KUGITAMA 特設サイト:https://www.kugitama.sankyo-fever.jp
X:https://x.com/OFFICIAL_SANKYO
YouTube:https://www.youtube.com/@SANKYOFEVERTV
TikTok:https://www.tiktok.com/@sankyo_ch