社会的価値の創造を経営の中核に掲げるSMBCグループ。「スポーツ」を切り口に、社会へインパクトを与える挑戦が始まった。

人間的成長を促し社会のつながりを強める

髙梨雅之氏
三井住友フィナンシャルグループ
執行役員 グループCSuO
(Chief Sustainability Officer)

 金融の枠を超え、社会的価値創造へ挑むSMBCグループ。その羅針盤はスポーツの持つさらなる可能性を指し示す。

「スポーツには社会的価値を創造する力があります。選手の人間的成長を促し、年代や性別などの異なるさまざまな人たちの参加を通じて、多様性を育み、社会全体のつながりを強めていく。その影響力は多大です」

 SMBCグループCSuOの髙梨雅之氏はこう語る。

 スポーツを通じて、人と社会をもっと豊かにできる―その信念が二つのプロジェクトとして動き出した。

大学スポーツを通じて社会で活躍する能力を磨く

 そのうちの一つが、大学スポーツを支援する「シャカカチ BOON BOON PROJECT」だ。大学生のスポーツ離れが懸念されるなか、学生たちが学業と競技を両立しながら人間的成長を遂げられるよう多面的にサポートする試み。採択団体には年間100万円の活動費を4年間提供するという支援規模からも、プロジェクトにかける本気度がうかがえる。 

「シャカカチBOON BOON PROJECT」に賛同するプロジェクト・パートナーやパートナー企業とともに、学業とスポーツの両立を支援し、成長の機会を提供

 第1期募集には270件の応募があり、22団体を採択。応募団体は全国大会出場を目指すチームや、部員数獲得に悩む団体、地方に所在し遠征費捻出に苦労する団体など多岐にわたった。

「応募時には、学生たちが自団体の課題をどう分析し、どのようなアプローチで目指す姿に向かうのかを論理的に説明する形としました。支援金の提供に伴う競技力向上、組織力強化はもちろんですが、応募プロセスにおいても、論理的思考力や関係当事者をまとめあげる力など、社会に出てからも有益な能力を培ってもらうこともねらいです」 

 さらに、元陸上選手の為末大氏をはじめとするプロジェクト・パートナーから活動のフィードバックを得たり、キャリア・リーダーシップについてのトークセッションを実施するなど、物心両面から学生の成長を後押しする。

「資金を提供して終わりではなく、成果まで見届けていきます。競技を通じた成長のみならず、本プロジェクトを通じて学生が社会で活躍する力を伸ばしていけるよう、しっかりと伴走していきます」

女性の未来を照らす新たな選択肢を作る

 もう一つの柱が、女性アスリートのキャリア支援だ。多くのアスリートは社会に出る際に、「競技か仕事か」の二者択一を迫られる。特に女性アスリートは引退後のキャリアや収入への不安などが強く、プロや実業団入りによる競技継続を断念する実態がある。

 この現状を変えていくべく、SMBCグループは女子バスケットボールチーム「SMBC TOKYO SOLUA(ソルーア)」を通じて、「仕事と競技の両立」という新しい選択肢を提示する。ソルーアの国内トップリーグ・Wリーグ参入に伴って、女性アスリートのキャリア形成を支援するプロジェクト「SOLUACTION!(ソルーアクション)」も始まった。

ソルーアのチーム名はポルトガル語の太陽(ソル)と月(ルア)の組み合わせ。仕事と競技の両立への思いが込められている。2025年10月に国内トップリーグ・Wリーグの2部に新規参入 ©W LEAGUE

 企業に籍を置き競技に専念する実業団選手とは異なり、ソルーアの選手は会社員として仕事をし、夕方以降をトレーニングの時間に当てる。社会人としての実務経験を積むことで、選手引退後もキャリアの断絶なく働き続けることができる。

「会社としても、業務時間の調整や栄養士監修の食事の提供など、仕事と競技を両立しやすい環境づくりに努めています。ソルーアの挑戦を通じて、女性アスリートの選択肢を広げていければ」と髙梨氏は前を向く。

©W LEAGUE

 異なる二つのプロジェクトは、「スポーツを通じて人の成長を促し、持続可能な社会の実現に貢献する」という一本の線でつながっている。SMBCグループは、社会的価値の創造に資するスポーツとの新しい関わりを創り出していく。

photo(portrait):Tomosuke Imai
text:Emi Morishige

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】前駐中国大使が渾身の緊急提言! 高市総理の対中戦略「3つの処方箋」/霞が関名鑑 高市首相を支える60人/僕の、わたしの オヤジとおふくろ

2026年1月号

2025年12月10日 発売

1550円(税込)

Amazonで購入する 目次を見る