東京・銀座にあるGINZA SIX。日本随一の高級繁華街に位置するこの複合施設の中には、限られた人しか入れない“秘密のショールーム”がある。ここで披露されているのは、オープンハウスが新たに立ち上げた高級マンションブランド「INNOVACIA(イノベイシア)」だ。
戸建てやスタンダードな価格帯のマンションで知られてきた同社が、なぜ今、高級マンション市場に参入するのか。オープンハウス・ディベロップメント マンション開発事業部で首都圏営業部長を務める丹保祐一さんと、首都圏プロジェクト推進部長の秋山行雄さんに話を聞いた。
聞き手●村井弦(「文藝春秋PLUS」編集長)
「トロフィーとしてのマンションではなく……」新ブランドのターゲットとは
――実際にショールームに来てみると、オープンハウスの今までのイメージとは違う佇まいで驚きました。ここに来るまでゲストサロンが並んでいるのが見えましたが、部屋の名前が「Haruki」や「Proust」「Kafka」といった作家の名前になっているのも非常に気になりました。
丹保祐一さん(以下、丹保) 個室ごとに作家の方などをテーマにデザインを決めています。お客様には何度かご来場いただくことが多いので、飽きがこないよう、様々な個室を用意しているという形です。
2012年にオープンハウス・ディベロップメントへ参画。首都圏市場での卓越した販売実績が評価され、2017年、名古屋エリア進出の旗手として抜擢される。名古屋では立ち上げ責任者として、わずか4年で累計売上500億円を達成。名古屋市内供給実績No.1デベロッパーへと急成長させ、同社のエリアシェア拡大に決定的な役割を果たした。その手腕を再び首都圏へ移し、現在は高価格化が進む最重要マーケットの販売統括として、さらなる事業拡大を牽引している。
――文化的な香りがする素敵な空間ですね。オープンハウスといえば、戸建てやスタンダードな価格帯のマンションというイメージが強いですが、「INNOVACIA」は“イノベーションラグジュアリー”というコンセプトを掲げ、「マンションには変えるべき当たり前がある」「ラグジュアリーに、革新を。」と謳っています。これにはどのような狙いがあるのでしょうか。
丹保 いわゆる“インカムリッチ”と呼ばれる新富裕層のお客様をターゲットにしています。既存の高級マンションではない、革新的な価値観を創造していただきたいという思いで、“イノベーションラグジュアリー”というコンセプトを立ち上げました。
秋山行雄さん(以下、秋山) これまでの大手財閥ブランドや既存の高級マンションと比べて、ブランドロゴがあるから価値が高い、という概念ではなく、ロゴがなくても本質的にいいものを作っていきたいと考えています。トロフィーとしてのマンションではなく、ここからさらに駆け上がるための拠点として考えている方がターゲットです。
マンションデベロッパーの仕入営業としてキャリアをスタートさせる。2012年6月にオープンハウス・ディベロップメントに入社。以来、販売、仕入、プロジェクト推進業務に従事。2018年10月より現在の首都圏プロジェクト推進部の部長職に就任し、年間20棟以上の新築分譲マンションの事業推進を行う。
――ブランド名にお金を払うのではなく、マンションそのものがいいと思って買っていただきたいということですね。お部屋にはどのような特徴があるのでしょうか。
丹保 これまでの高級感は、直線的で黒を基調としたシックなカラーが一般的だったと思いますが、今回は流線的な曲線を多用したデザインと、明るいカラーリングで統一しています。癒やしを感じていただけるような作りですね。
億ション購入でも「“現金一括”より“ローン”」が主流になった理由
――ホッとするような空間になっていますよね。ターゲットとされているのは“新富裕層”ということですが、これはいわゆる富裕層とどう違うのでしょうか。
丹保 これまで富裕層と呼ばれていた方たちは、“ウェルスリッチ”といって、親御様から相続で資産を引き継がれた方が多いです。それに対し、いま“新富裕層”と呼ばれているのは、一般的に世帯所得が1500万円以上あり、その高い所得によってご自身で資産を築かれている方々です。
――親から財産を引き継いだというよりは、たとえばパワーカップルのように、共働きで世帯年収が多いご家庭といったイメージですね。INNOVACIAは「マンション選びの新しい尺度」を掲げていますが、実際に購入される方にも、これまでとは異なる傾向があるのでしょうか。

丹保 以前は、億ションをお買いになるお客様は現金一括での購入が多かった印象ですが、今はなるべく多くのローンを組みたいとご希望されるお客様が格段に増えています。その高い所得を活かして、いかに資産を築いていくかという点に主眼を置かれているのだと思います。
――お金を一度に使うより、ローンというレバレッジを効かせて、家も買いながら他の部分でも豊かな生活を築いていこう、ということかもしれませんね。まさに現役世代かと思いますが、そうした方々に訴求する特徴としては、どのようなものがありますか。
丹保 第一に、立地です。職住近接で通勤時間を短縮したいという、タイムパフォーマンスを重視する思考をお持ちの方が多いと思いますので、高級マンションが立ち並ぶような“超都心”の立地を選別して、物件を供給していきたいと考えています。
また、これから伸びていくような若手のデザイナーや建築家の方に建物のデザイン監修をお願いするなど、モダンな物件供給も意識しています。お客様にはご自身の活躍と重ねながら、応援していただければと思っています。
“秘密のショールーム”の実力……VRを投影して現れたのは?
――自分がステップアップしていくのと同時に、このマンションを手がけた方も世界的なデザイナーになるかもしれない、と考えると夢がありますね。さて、今インタビューさせていただいているこの場所は、販売されたばかりの「イノベイシア恵比寿」の仕様を再現したVR空間なんですよね。
丹保 はい。VRを投影できるスペースになっていまして、新ブランドのコンセプトムービーを上映したり、「イノベイシア恵比寿」の間取りを投影したりすることができます。実際に見ていただきたいと思います。

――おお、一気に部屋の中に変わりました。四方を見渡すと、本当にお部屋の中にいるようです。
秋山 今映っているものは、すべて実際の寸法で作成しており、平面的にも立体的にも、お客様が実際に体感できる形になっています。
――床を見ると、書斎やリビング、ダイニング、洗面台の位置まで分かります。本当にお部屋の間取りの中にすっぽり入れるような空間ですね。窓の外には実際の風景が映っていますが、これもお部屋から見える景色なのですか。
丹保 はい。建設現地からドローンを飛ばして撮影した眺望写真をはめ込んでおり、このお部屋から実際に見える景色になっています。高さのレベルも合わせていますので、建設中には確認できない水平方向の眺望を確認できます。
――普通のショールームでは、ここまでリアルな景色は体験できません。擬似内見といった感じで、これはすごいですね。

第1号となった「イノベイシア恵比寿」へのこだわり
――最後に、「イノベイシア恵比寿」のこだわりについて伺います。今年10月29日に一般販売が開始された最初の物件ですが、どのようなマンションなのでしょうか。
丹保 恵比寿という立地柄、恵比寿ガーデンプレイスで開催される「Baccarat ETERNAL LIGHTS」で展示される世界最大級のシャンデリアをモチーフにしたインテリアや、様々なアートを点在させた共用部が特徴です。また、浴槽にはかけ湯機能や自動洗浄機能が付いているなど、癒やしを得ていただけるマンションになっています。
――建具やフローリングのデザインにもこだわっていると伺いました。
秋山 ラグジュアリーブランドであるINNOVACIAを作るにあたり、今までの「オープンレジデンシア」の仕様を一から見直しています。お客様にお選びいただくカラースキームや建具のデザインも一新しました。
――共用部はアーティストの方とコラボレーションして作られたそうですね。
丹保 世界的に活躍されている空間デザイナーの柳原照弘さんにデザイン監修をお願いしました。柳原さんがマンションの共用部デザインを手がけるのは初めてですが、当社のイノベーションにかける思いやコンセプトに深く共感していただき、ターゲット層である現役世代の感度に響くようなデザインを提案していただきました。
――マンションの共用部は毎日通る場所ですから、そこへのこだわりは、家に帰ってきたときの所有感や高揚感にもつながりますね。INNOVACIAシリーズは、今後も展開されていくのでしょうか。
丹保 はい、これからどんどん超都心の立地で供給させていただきたいと思っています。供給する立地によって様々なコンセプトを定め、いろんな表情を持ったマンションを供給したいです。
――「INNOVACIA」の革新性がよく伝わってきました。いわゆる“あがった人”ではなく、“これから駆け上がろうとしている人”にぴったりの物件だと感じます。銀座のこの“秘密のショールーム”に来れば、その魅力をさらに深く知ることができそうですね。
