大口の注文が入りそうだが手元の資金が足りない、思っていたよりも税金の支払い額が大きかった――企業経営において、一時的に資金がショートしてしまうことは少なくない。しかし、もっとも一般的な銀行融資は審査のハードルが高く、時間もかかってしまう……。

 

 そんな現代のビジネスシーンにおける新たな選択肢として、いま「ファクタリング」が注目を集めている。請求書(売掛債権)を買い取り、早期に現金化するこのサービスは、特にスピード感が求められる場面で真価を発揮する。

 

 数あるファクタリングサービスの中でも、AI審査を導入し「最短30分での資金調達」を掲げるのが、Dual Life Partners社が提供する「PAYTODAY」だ。コロナ禍から始動したこのサービスは、いかにして多くの事業者の資金繰りを支えてきたのか。サービス開始の背景から独自のAI審査の裏側、そして事業者が抱える資金繰りのリアルな課題について、「PAYTODAY」の立ち上げから関わる同社取締役・田中美由紀さんに話を聞いた。

実は“乱立状態”…手形に変わる「ファクタリング」の仕組み

 PAYTODAYの構想が生まれたのは2018年。金融業界出身の田中さんがDual Life Partners社に参画したことがきっかけだった。

「当時、金融業界では手形がどんどん発行されなくなっている状況でした。紙であるがゆえの紛失リスクや使いづらさから電子化が進んでいたので、いずれなくなるだろうと。

 手形には、現金化を早める『手形割引』というサービスがありましたが、手形がなくなれば、それに代わるものが必要になる。それが請求書、つまり売掛債権を対象とするファクタリングだと考えたんです」(田中さん、以下同)

田中 美由紀(Dual Life Partners株式会社 取締役)
大学で会計ファイナンスを学んだあと、大手銀行で法人営業を担当。自由なライフスタイルを実現したい人への支援事業を行う「Dual Life Partners」に転職し、2020年より現職。AIファクタリング「PAYTODAY」や「RBF by PAYTODAY」の事業拡大に尽力を続けている。

 そこで、2019年10月にベータ版としてPAYTODAYの提供を開始。本格的に展開したのは、奇しくもコロナ禍に突入した時期だった。

 ファクタリングは、海外では以前から主流の資金調達手法だが、日本ではまだ馴染みが薄い。しかし、2020年の民法改正で債権譲渡に関する規制がなくなったことを機に、市場に参入する企業が急増し、今は“乱立状態”なのだという。

「その中で、PAYTODAYの強みの一つとなっているのが、圧倒的な“スピード感”です」と田中さんは語る。

 「速さの核にあるのは、弊社独自のAI審査です。AIが育てば育つほど、お客様にサービスを提供する時間を短縮できると考え、立ち上げ当初から一貫してコンセプトに据えてきました。

 また、申請から契約、入金までが基本的にオンラインで完結するという手軽さも特長ですね。PAYTODAYの立ち上げ当時、オンラインで完結するファクタリングサービスはまだ珍しく、対面での契約が主流だった他社では入金まで1週間ほどかかることもありました。現在のPAYTODAYは、申請から大体30分ぐらいで審査が完了し、最短1時間程度での着金を実現しています」

 申請に必要な書類も、法人であれば決算書、個人事業主であれば確定申告書、そして事業で使っている通帳と買い取ってほしい請求書だけと、驚くほどシンプルだ。「意外と少ないですね、とよく言われます」と田中さんは微笑む。

「手数料も上限を9.5%と定めており、それ以上の金額を請求することはありません。他社では『手数料1%〜』と謳っていても、契約直前に事務手数料などが加算され、実質的な負担が12〜13%になるケースも少なくないようですが、私たちは上限を明確にすることで、お客様に安心して使っていただけるようにしています」

「PAYTODAY」を詳しく見る

AIが騙されてしまうことも「もちろんあります」

 PAYTODAYの根幹をなすAI審査。しかし、実は審査のすべてをAIに委ねているわけではないのだという。

「特に法人の決算書は100社あれば100通り。AIの画一的な判断だけでは、本来お取引できるはずの会社を弾いてしまう可能性があります。それはもったいないので、必ず人の目を入れた分析も行なっています。私たちもAIを100%信用しているわけではなく、常に疑いながら開発を進めている、という感覚です」

 AIが主にチェックするのは、決算書に異常な数値がないかや、業種ごとの数字の動き方の違い、そして通帳が偽造されていないか、といった点。特に通帳の偽造を見つけるのはAIが得意とするところだというが、偽の書類に騙されてしまうことはないのだろうか。おそるおそる尋ねてみると、「あります、あります」とあっけらかんとした答えが返ってきた。

「ファクタリングはどうしても詐欺や偽造のリスクがつきまとう事業ですし、AIも人も見抜けずに偽造請求書を通してしまったことも、もちろんあります。残念ながらそれを完全に排除することはできないので、私たちは社内で“勉強代”と呼んでいますが、AIが育つまでの初期は本当に大変でしたね」

 田中さんが「悔しかった」と振り返る事例がある。とある利用者が提出したのは、紙の通帳の白黒コピーだった。事業の流れはしっかりしており、何度か取引実績もあったため信用していたが、実は巧妙に偽造されたもので、その利用者があるとき“飛んで”しまったのだという。

「よく見たら、通帳の全ページのバーコードが同じだったんです。後日、本人と話す機会があったので、どうやって作ったのか聞いたら『イラストレーターで中身を書き換えました』と……あれはやられましたね。そこまで手間をかけるなら、普通に事業を頑張ったらいいのに、とも思いましたけど(笑)。

 でも、そうした経験から学ぶことで、AIも育っていきます。だからこそ、人の目も入れた上で『それでも騙されてしまったら仕方ない』という覚悟でリスクを背負っています」

 もともとファクタリングは、建設業や運送業といった仕事から入金までの期間が長くなりがちな業界で、資金繰りのために広く利用されてきた。最近ではこれらの業界に加えて、スタートアップやベンチャー企業、IT系の利用が増えていると田中さんは話す。

「PAYTODAYの利用者数でいえば、法人と個人事業主の比率は半々ぐらいです。銀行融資がなかなか下りない、あるいは審査に時間がかかる。赤字だから相手にしてもらえない。そういった方が、当面の資金を確保するために利用されるケースが6〜7割を占めます。特に、決算後の税金や社会保険料の支払いのタイミングで相談が増える傾向にあります」

 中でも田中さんの印象に残っているのは、ある研究開発系の企業だ。

「がんの研究開発をされている会社で、素晴らしい事業内容にもかかわらず、その時点ではなかなか銀行からの融資が受けられない状況だったそうです。PAYTODAYをうまく活用して、事業を軌道に乗せて無事に“卒業”していってくれた。あれは嬉しかったですね」

 事業の成長過程で、一時的に資金がショートすることは少なくない。その谷間を埋める役割をPAYTODAYは目指している。

「利用者の方には『つなぎ資金として使ってください』とよくお伝えしています。銀行融資や投資家からの資金調達が決まるまでの“つなぎ”という意識でファクタリングを利用してもらうことで、事業が安定し、ファクタリングが必要なくなります。そうやって綺麗に卒業してもらえるのが、私たちにとっても理想的なんです」

「取引に金融機能を溶け込ませる」ファクタリングの新たな形

 PAYTODAYはいま、次のフェーズを見据え、ファクタリングに加えた新たなサービスの提供を始めている。その一つが「組み込み金融API」だ。

 これは、金融以外の事業会社のサービスに、PAYTODAYの金融機能を組み込むというもの。たとえば企業Aが下請けBに仕事を発注した場合、企業Aのプラットフォーム上で、下請けBがワンクリックで請求書を即座に現金化できるようになる。

「下請けの方がわざわざ外部のファクタリングサービスを探して申請する手間が省けます。導入企業にとっては、直接は対応できない下請けの資金繰りをサポートする、一種の“福利厚生”のようなメリットがあります。私たちにとっても取引の透明性が高いので、偽造などのリスクを抑えられる“三方よし”の仕組みなんです」

 

 こうした金融API、発注・受注といった関係に限らず、SaaSや業務プラットフォームの利用者がサービスの流れの中で資金を受け取れるような形式にも活用できる。特に、受発注管理や請求管理を行うSaaS、業務管理ツール、マーケットプレイス、取引を仲介するプラットフォームや業界特化型のプラットフォームなど、日常的に取引や請求が発生するサービスとの親和性が高く、既存の業務フローを大きく変えることなく金融機能を組み込める点が特徴だ。

 もう一つ、新たなサービスとして展開しているのが「RBF by PAYTODAY」だ。RBFは「Revenue Based Finance」の略で、確定済みの請求書ではなく「将来の売上」を買い取る仕組みである。

「たとえば1月の時点で、2月末や3月末に入金が見込まれる売り上げも買い取りの対象にする、というもので、サブスクリプションサービスや塾の月謝など、将来にわたって安定した収益が見込める事業が対象です。リスクが大きいため業種はかなり絞られるのですが、ファクタリング同様に、まとまった資金を早期に調達できるメリットがあります」

 今後の展望について尋ねると、田中さんは「組み込み金融に力を入れていきたい」と即答した。ファクタリングというサービスを、よりシームレスに、より多くの事業者の日常に溶け込ませることを目指しているという。

 同時に、ファクタリングそのものに対する経営者の認識を変えていきたいという強い想いを抱いている。

「そもそもファクタリングを知っている経営者さんが、全体の10%ぐらいではないかと思います。つなぎ資金という認識を持っている方は、その中のさらに10%ぐらい。やはり“最終手段”というイメージを持たれている方が多いですね」

 かつては「ファクタリングの利用が金融機関に知られるとまずい」という風潮もあったが、時代は変わりつつある。現在は金融機関側もファクタリングを資金調達の一つの手段として、以前より柔軟に捉えるようになってきているという。

「リスクがある事業なので手数料は融資より高くなりますが、その分、速く、多くの人が使えるというのがファクタリングの価値です。あくまで事業を立て直すための“つなぎ”であり、『いずれは卒業するものだ』という認識を広めていきたい。最終手段ではなく、成長のための戦略的な選択肢として、上手に活用していただけたら嬉しいですね」

 経営者に寄り添い、一時的な助けとなり、そして笑顔で卒業を見送る。PAYTODAYが描くのは、そんな新しい形の金融の未来だ。

「PAYTODAY」はこちら