昨年発表された新型日産リーフ(B7=バッテリー容量78kWh)の一充電走行距離はカタログ値(WLTCモード)で702km。だが、アップダウンのある公道を加減速を繰り返しながら、エアコンを入れて走ってみると、そんなに距離が出ないのは周知の事実だ。「EVって、しょっちゅう充電しないといけないんでしょ」と思っている人も多いはず。というわけで3月上旬、横浜の日産自動車グローバル本社から伊勢神宮まで、片道450kmを新型リーフでドライブしてみた。果たして、充電なしで辿り着けるのか――。

文:池澤龍太(編集長)
写真:三宅史郎

計算では、450km走ってバッテリー残量は15%

 今回のロングドライブ試乗には、新型リーフの開発を担当した田尻政義さんと林田辰也さんの2人のエンジニアにも日産アリアで同行してもらった。もし万が一、バッテリーの残量が少なくなった場合に対応してもらうためだ。

「安心してください。計算では、伊勢インター到着時のバッテリー残量は15%前後。残りの走行可能距離が数字ではっきり出るので、EVに慣れたドライバーだと、10%を切るまで平気で走ります」と田尻さん。とはいえ、ガソリン車でもタンク残量が残り1目盛になると不安になる。突然、電池切れで走れなくなる……なんてことはないだろうか。

 渋滞の影響をできるだけ避けるため、朝7時、日産本社を出発。ルートは首都高みなとみらいから、港北インターを抜けて横浜青葉インターから東名高速に入り、新東名、伊勢湾岸道から伊勢自動車道の伊勢インターまで。外気温は8度。エアコンの設定温度を23度にし、田尻さんに助手席に乗ってもらった。

 高速道路に入ると、さっそく評判の「プロパイロット(PP)2.0」を試してみる。ハンドル左側のスイッチを入れて、セットするだけ。緑色の「PP1.0」から青色の「PP2.0」に切り替わると、手放し運転ができる。最初は「本当にクルマに運転を任せていいのか?」と恐る恐るだったが、慣れてくるとすっかりリラックスモード。両手が空いているから肩を回したり、腕を伸ばしたりすることでができて、ロングドライブで長時間同じ姿勢で座っていても疲労度が全く違う。運転しているというより、クルマに乗せてもらっている感じだ。と思って、油断して前方から目線を外すと、パネルに「警告!」ランプが点灯。すかさず正面を向く。なんだか、クルマから怒られたような気分だ。

高速道路で「プロパイロット2.0」を体験。基本操作はすべてクルマにお任せ

プロパイロット2.0を使って自動で車線変更

 しばらくすると、「前方に遅い車がいます。安全を確認してください。⤴で右に車線変更します」という表示が出る。ハンドルに手を添えて、指示どおりにスイッチを押すと、右ウィンカーが点滅し、緑色の「PP1.0」になり、勝手にクルマが追い越し車線に入っていく。

「一応、ドライバーにも後方の安全確認の指示が出ますが、クルマに搭載されたカメラとレーダーで後ろの車両を確認しています。もし、追い越し車線後方から速いクルマが迫って来るようでしたら、ただちに車線変更を中止します」(田尻さん)

 人間以上に後方の安全を担保しているので、これなら高速道路の車線変更が苦手な人でも安心だ。

「プロパイロット2.0」で車線変更。ハンドルに手を添えているだけで自動で車線変更してくれる

“もったいない精神”で徹底的に熱マネージメント

 新東名に入り、制限速度の120kmで走行していると、バッテリー残量の減りが少し気になってくる。電費(1kWhあたりの走行距離 EVにおける燃費のようなもの)表示モニターに切り替えると、5kmから6kmあたりを上下している。電費が5kmだと、搭載されている78kWhのバッテリーでの走行距離は390km、電費6kmだと走行距離468kmになる計算だ。新型リーフは走行中、ドアノブを格納するなど、なるべく凸凹のない滑らかな車体にし、Cd値(空気抵抗係数)を驚異の0.26まで下げることに成功したが、それでも速度が100kmを超えるとどうしても空気抵抗が増えてしまうという。設定速度を100kmにし、電費を稼ぐことにする。

「加えてバッテリー残量をなるべく確保するために、これまで車外に捨てていたモーターの熱などを空調システムに使うなど、徹底的に熱マネージメントのシステムを見直しました」。じつは、田尻さんは熱エネルギーのマネージメント専門エンジニア。これまでエアコン使用時はバッテリー残量が極端に減るのがEVの常識だったが、新型リーフはパワートレインも統合制御することで熱エネルギーを無駄なく活用。熱エネルギーに関して、隅々まで“もったいない精神”を利かせたという。それがバッテリーの消耗度合を減らし、航続距離の延長にも寄与したとのことだ。

初代リーフから16年、280億kmの走行データを生かす

 途中、伊勢湾岸道の湾岸長島パーキングエリアで食事休憩。ここまで340kmを走って、バッテリー残量は35%(走行可能距離179km)。伊勢インター到着時の予想バッテリー残量は12%と表示される。残り111km。ノン充電での走破は50km以上走れる余力を残してクリアできそうだ。

「2010年に世界初の量産EV、初代リーフを発売してから16年。これまでに70万台以上EVを販売し、トータルで280億kmを超える走行データを私たちは持っています。実際にどのような使われ方をし、どんな道をどのくらい走って、バッテリーの減り方はどうなのか。こうしたデータがあるからこそ、バッテリー残量を正確に予測できるのです。いち早くEVを生産・販売してきた日産ならではの強みだと思っています」と、田尻さんは自負する。

 午後2時30分、ようやく伊勢インターに到着。近くの充電スタンド付きのコンビニで充電した。バッテリー残量は12%、走行可能距離は58km。横浜出発時の計算値よりは下回ったものの(渋滞や集中工事もあったため)、ほぼ予想通りの結果だ。モニターで走行データを確認すると、「走行時間6時間23分、走行距離451.4km、平均速度70km/h、平均電費6.5km/kWh」。3月上旬という季節を考えると、まずまずの成績だろう。

伊勢志摩スカイラインで、EVならではの加速の良さを体感する

アメリカやドイツのワインディングロードで走りを鍛えた

 90kWのスタンドで15分間充電。34%まで回復したところで、天気が良く日没までには時間があったので、撮影スポットを探しに伊勢志摩スカイラインへ。全長16.3km、伊勢と鳥羽を結ぶ有料自動車道は、朝熊山の山頂付近から伊勢湾を展望できるらしい。今度は新型リーフの操安を担当した林田さんに助手席に乗ってもらう。峠道に入って、まずは日産が誇る「e-Pedal」を体験。アクセルを踏み込むと同時にスーッと滑らかに加速し、コーナー入口でアクセルを戻すとグググッと減速する。アクセルペダルの操作だけで加減速できるので、足の踏み替えがなく疲れない。しかも、一発のハンドル操作でコーナリングが面白いように決まる。なんだか運転がうまくなったような感じだ。

「アメリカのアリゾナやロサンゼルス郊外、ドイツのワインディングロードで、開発車両を何度も走らせながら、日本の道路環境に合わせたセッティングにしました。ドライバーがハンドルを切った時の角度や重さと、クルマが進む向きを合わせこむことで、コーナリングの途中でハンドルを戻したり、切り増したり、修正操作をしなくてもいいように工夫しました。さらにリアにマルチリンク式サスペンションを採用し横剛性が66%もアップしたので、遅れがなく、クルマがすっと向きを変えてくれ、気持ちいいほどコーナリングも一発で決まるんです」(林田さん)

 なるほど、クルマに運転がうまくなったような気にさせられていたのか……。午後6時、ホテルにチェックインし、6kWの普通充電スタンドで充電した。

伊勢神宮(内宮)近くの駐車場で「プロパイロットパーキング」を試す

バッテリーは“生もの”。冷えすぎても熱くてもだめ

 2日目は伊勢神宮に参詣し、午前10時に出発。バッテリーは寝ている間に70%まで回復している。復路は湾岸長島PAで15分、新東名の浜松SAで30分、2回充電する予定だ。復路は無給電チャレンジではななく、一般的な使い方、トイレ休憩、食事の時間を使って、どのくらい急速充電の機能が上がったか試してみる。ここで、再び田尻さんに教えてもらう。

「新型リーフの最大の特長は、ナビで充電スポットを目的地に登録すると、ナビと連動して到着時に充電器の出力に合わせて、ちょうどいいバッテリー温度になるように調整するんです。私たちは、バッテリーは“生もの”と言っています。ちょうどいい温度、20℃から25℃くらいが一番充電効率がいいんです。今日だと外気温が8℃くらいなので、湾岸長島に着く前からバッテリーヒーターで温めることになります。逆に夏だと、必要に応じて水で冷やします」

 なるほど、同じ15分の充電でも、バッテリー側の事情で入る電気量が違うわけか。実際、湾岸長島PAでは36%まで減っていたバッテリーが、150kWの急速充電を14分24秒行った結果、67%まで回復。15分なら、トイレ休憩してスマホをチェックする程度だ。充電時間が煩わしいという気にはならない。浜松SAでは食事休憩もあり、150kWの急速充電で30分間。40%だったバッテリーが80%まで回復し、横浜まで余裕の残量となった。

浜松SAで150kWの急速充電をする。約30分の充電でバッテリー残量40%から80%まで劇的に回復

煩わしい渋滞時こそ「プロパイロット2.0」が威力を発揮

 東名に入ると、夕方のせいもあり、海老名ジャンクションを過ぎたあたりから混み始め、横浜町田インターまで「渋滞11km 40分」の表示が出る。いつも渋滞に巻き込まれるとイライラするのだが、ここでも「PP2.0」が威力を発揮。クルマが自動でストップ&ゴーをしてくれるので足が疲れないし、気分も落ち着いていられる。突然、前に割り込むクルマがあっても、「どうぞ、どうぞ。お入りください」と“譲りあい精神”になるから不思議だ。普段、どれだけ渋滞時で疲れがたまって精神的に余裕を奪われているのか実感させられた。

 午後6時、日産本社に到着。ちなみに復路の走行データは、「走行時間6時間15分、走行距離443.3km、平均速度70km/h、平均電費5.5km/kWh」。バッテリー残量は40%だった。2日間で約900kmのロングドライブ。ほぼ1人で走り切ったのにほとんど疲労感がないのは、やっぱり「PP2.0」のおかげだろう。

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