福島県が誕生して150年、東日本大震災からまもなく15年――。記憶と教訓を継承しながら町を再建し、にぎわいを取り戻しつつある浜通りで、未来を紡ぐ人たちの物語に触れる旅へ。

写真:橋本篤 ※2026年2月時点の情報です。

ACCESS)JR東京駅より特急ひたちにてJRいわき駅へ(約2時間20分)。JRいわき駅からはレンタカーを利用して浜通りエリアを巡るのが便利。帰路もJRいわき駅より同ルートでJR東京駅へ

DAY1

富岡町で栽培したぶどうでワインを醸す「とみおかワイナリー」。現在は6種類のワインを展開。

07:52 JR東京駅より特急ひたち3号に乗車
10:23 JRいわき駅到着。レンタカーで富岡町へ
11:30 とみおかワイナリーで、ランチと見学ツアー 1
15:30 コーヒーを片手に、双葉町の壁画アートめぐり 2
18:00 宿にチェックイン・夕食

1 富岡町
富岡の潮風が醸す、希望のワイン「とみおかワイナリー」

海沿いに広がる6.5haのぶどう畑。

 2016年からぶどうの栽培を始め、2025年5月にグランドオープン。シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、メルロなど、潮風を浴びて育ったぶどうで仕込むワインは、ドライですっきりとした飲み口。レストランとショップではテイスティングもできる。予約制のワイナリーツアーも人気。

ぶどう畑と海を望むレストラン。テラスでバーベキューもできる。
ランチCコース¥3,850。この日は、寒ダラのカダイフ包みと福島牛リブロースステーキ、富岡産長ネギのポタージュ、アミューズ5種盛り合わせ。ワイン3種飲み比べセット¥1,250。シャルドネ100%ジュースなど、ノンアルコールドリンクも充実しているので、ドライバーにも嬉しい。

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双葉郡富岡町小浜反町36-1 ☎0240-23-5585
営業時間 11:00~14:00、土日祝~15:00(L.O.各30分前)
※ディナー(17:00~21:00)は完全予約制 火曜日定休
https://tomioka-winery.jp

2 双葉町
一杯のコーヒーで日常に彩りを「open roastery Alu.」

店が入る建物全体に描かれたアートは、壁画アートカンパニー「OVER ALLs」の作品。双葉駅周辺には10の壁画が点在し、コーヒーを片手にアート巡りも楽しめる。

 2025年2月、JR双葉駅前に誕生した焙煎所&ドリンクスタンド。コーヒーは常時4~5種類で、その時々で豆の種類が変わるのも楽しみ。「移住したのは福島に住む恩人との出会いがきっかけ。自分の夢だったこの店が地域のにぎわいにつながれば嬉しい」と話すのは店主の深澤諒さん。人懐こいその笑顔と丁寧に淹れられたコーヒーに、心がほどける場所だ。

焙煎士でオーナーバリスタの深澤諒さん。
ハンドドリップコーヒーとアイスラテ各¥500

D A T A

双葉郡双葉町長塚字町45-1 ☎なし
営業時間 10:00 ~18:00、月6:00~13:00 
火・水曜日定休
https://open-roastery-alu.com/

DAY2

海沿いを馬に乗って散歩できる「Horse Value」の海トレッキング。

10:00 大堀相馬焼 陶吉郎窯へ
11:00 道の駅なみえで、ランチとおみやげ探し
13:00 Horse Valueで、馬に乗って海岸を散歩
15:00 haccoba 小高駅舎醸造所&PUBLIC MARKETで買いもの&休憩
16:00 おやつは原町製パンのご当地パン
17:30 JRいわき駅に帰着
18:17 特急ひたち26号でJR東京駅へ

3 浪江町
伝統が息づく地、大堀に希望を照らす「大堀相馬焼 陶吉郎窯」

近藤学さんの作品より、駒文茶盌¥77,000、天目茶盌¥132,000

 福島県浪江町大堀で江戸時代から続く大堀相馬焼。その窯元の中で唯一、発祥の地へ帰還を果たし、伝統をつないでいる。2024年に再建した大堀工房では9代目の近藤学さんが、登り窯のあるいわき工房では息子の近藤賢さんが作陶に励む。大堀相馬焼伝統の青ひび模様や、躍動する馬を描いた駒絵、二重焼き技法を守りながら、新しい作品づくりも行う。

大堀相馬焼の器に会津漆器の漆で絵付けした「大堀陶胎漆器」。カップ¥6,600、ポット¥13,200
大堀工房のギャラリー。

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双葉郡浪江町大堀字後畑98-1 ☎090-2604-9890 
営業時間10:00~18:00 火曜日定休
www.toukichirougama.com

4 浪江町
浪江グルメや工芸品がずらり「道の駅なみえ」

浜通り北部に位置する浪江町にあり、ドライブの休憩にも最適。

 地元生産者による野菜や果物をはじめ、福島の特産品や工芸品を広く紹介。フードコートでは、請戸漁港の海産物を使った料理や「なみえ焼そば」など、浪江グルメが味わえる。大堀相馬焼の作品が並ぶ地場産品館も見応えがあり、陶芸体験ができるのも魅力。さらに館内には、浪江の酒蔵「鈴木酒造店」の醸造所も併設され、地酒も楽しめる。

浪江町のB級グルメ「なみえ焼そば」に、請戸漁港の釜揚げしらすをたっぷりのせたミニ丼が付く人気セット¥1,540

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双葉郡浪江町大字幾世橋字知命寺60 ☎0240-23-7121 
営業時間10:00~18:00 月曜日と最終水曜日定休
https://michinoeki-namie.jp

5 南相馬市
馬と通じ合い心を解放する「Horse Value」

厩舎の窓から顔を出して日向ぼっこ。つぶらな瞳が愛らしい。

 馬事文化が根付く南相馬市で、馬を通じた癒しや学びを提案。馬術競技でプロとして活動する神瑛一郎(じんよういちろう)さんを中心に、馬への愛情が深いスタッフが集い、ここで暮らす馬たちもみな穏やか。馬に乗って海岸沿いをゆったり散歩する「海トレッキング」も人気で、豊かな時間を過ごせる。

馬の社会的価値を高めることを目指し、2020年に開業。海や町を歩くトレッキング体験のほか、ふれあい体験もできる。

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南相馬市小高区川房字南石名坂28-1 ☎ 050-1794-7419 
営業時間9:00~18:00 無休 海トレッキング(約1時間)1人¥18,700
www.horsevalue.jp

6 南相馬市
無人駅舎に生まれた醸造所&マーケット「haccoba 小高駅舎醸造所&PUBLIC MARKET」

2020年から無人駅になっていた小高駅。駅舎に醸造所ができるのは全国初で、製造開始に向け準備中。

 2021年に南相馬で醸造を始め、2023年には浪江町にも醸造所を設立した酒蔵「haccoba-Craft Sake Brewery-」。日本酒にクラフトビールの製法をかけ合わせた、“クラフトサケ”という新しいジャンルの日本酒が注目を集めている。

haccobaの看板銘柄も揃っていて、おみやげにも最適。右から、エルダーフラワーの華やかな香り「jam」720ml ¥2,860、クリアな甘みとホップの爽やかな香りを表現した「はなうたホップス」720ml ¥2,420

 2024年には、無人駅だった小高駅に食品や雑貨を扱うマーケットをオープン。温もりのある交流の場に生まれ変わった。

駅の事務室を改装し休憩スペースとマーケットに。
(左)小高駅から徒歩7分の場所にある「haccoba 小高醸造所 &KITCHEN」。日本酒やオリジナルグッズも販売
(右)haccoba代表で醸造家の佐藤太亮さん。2026年9月には東京に醸造所を開業予定。海外進出も目指す。

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南相馬市小高区東町1-140 小高駅駅舎内 ☎なし
営業時間12:00~17:00 月・木曜日定休
https://haccoba.com

7 南相馬市
レトロかわいいご当地パン「原町製パン」

よつわりパン¥155。十字に切り込みが入った丸いパンに、こしあんとホイップクリーム、中央にシロップ漬けのチェリーが輝く。左はコーヒーあん¥180。ずんだあんもある。

 今から約65年前、当時は高級品だったケーキをイメージして初代店主が生み出した「よつわりパン」。もとはフラワーパンという名前だったが、“四つに割れたパン”と呼ぶ人の多さから改名し、より親しみやすい存在に。地元の学校給食にも出るソウルフードは、1日約380個を売り上げる人気ぶり。よつわりパンにクッキー生地を合わせた「夕月」も隠れた名物。

1951(昭和26)年に創業し、60周年の節目に現在の店舗に移転。メルヘンな建物と看板が印象的。

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南相馬市原町区本陣前3-1-5 ☎0244-23-2341 
営業時間9:00~18:30 月曜日定休
https://www.instagram.com/haramachiseipan/

伝えたくなる輝きがある“いま”の浜通りへ

 今回の旅の舞台となる福島県「浜通り」は、いわき市から新地町まで13市町村からなる地域。それぞれの土地で時間の流れは異なるが、着実に再生への道を歩んでいる。その変化を震災直後から現在まで、現場で見つめ続けてきたのが、「HAMADOORI13」代表の吉田学さんだ。

HAMADOORI13・代表 吉田学(よしだまなぶ)さん。福島県大熊町出身。一級建築士。2021年に「HAMADOORI13」を設立し、若者起業家支援ファンドの創設・運営などを通して、浜通りの復興に取り組む。

 自身も大熊町で被災し、避難生活を送りながら、建築士として浜通り各地の復興に携わってきた。「被災した直後は、インフラを整えることが復興だと思われがちでした。でも、町に人が戻らなければ、いくら環境を整えても日常は動き出さない。浜通りに本当に必要なのは、“人と人をつなぐ場”でした」 そうして2021年に立ち上げたのが、浜通り地域の連携組織「HAMADOORI13」だ。

 復興を特別なものとして切り離すのではなく、仕事や暮らしとして根付かせていく取り組みで、その考え方は、若者や移住者の起業を支援する「HAMADOORIフェニックスプロジェクト」にも引き継がれている。

「“応援する側”と“される側”という関係にはせず、浜通り地域に関わりたい人が自分の得意なことを持ち寄れる受け皿をつくるため、2021年にスタートしました。現在までに18組のプロジェクトが採択され、浜通り地域に新しい風を吹き込んでいます」

浜通りに暮らす人たちの“普通”を取り戻すために

 南相馬市で創業した酒蔵「haccoba-Craft Sake Brewery-」も、吉田さんのプロジェクトから生まれた一つで、革新的な酒造りで注目を集める存在に。その活躍は酒造りに留まらず、2024年には無人駅となっていた小高駅の駅舎を活用した醸造所とマーケットをオープン。通学で利用する学生が多い駅に再び明かりを灯した。

 浜通りでは、こうした小さな変化が各地で積み重なり、富岡町では2016年にぶどうの栽培を始めた「とみおかワイナリー」が、2025年5月に待望の開業。新たな町づくりに挑戦する人がいる一方、途切れかけた営みを再びこの地に根付かせようとする人たちもいる。浪江町大堀で江戸時代から続く大堀相馬焼の窯元「陶吉郎窯」もその一つだ。

 原発事故の影響で長く避難を余儀なくされたが、2024年に大堀へ帰還を果たした。「一番の目標は“普通”を取り戻すこと」と吉田さん。故郷に戻ってくる人たちのためにも、途切れてしまった地域の祭りの復興にも動き始めている。

福島を想う人たちと紡ぐこれからの未来

 震災から15年となる2026年、吉田さんは浜通りを一つにするための新たなプロジェクトを企画。歌手の石井竜也氏とエジプト考古学者の吉村作治氏とともに、参加型アートプロジェクト「Happy Island 浜通りアーツ2026」を立ち上げ、デジタルアートや短編映像などの作品を全国から募集。2026年8月16日には、「いわき芸術文化交流館アリオス」で発表会を行う予定だ。

「浜通りは、もう“何もない場所”ではありません。そして、足を運ばなければ見えてこないものがたくさんあります。新しいことに挑戦する人や伝統を守る人たちが、営みを続ける“いま”の浜通りを訪れて、たくさんの人や物語に出会ってほしいですね」

大切な人に想いを馳せる美術館の誕生に向けて
「時の海 – 東北」プロジェクト

《時の海 - 東北》美術館(仮称)内観イメージ ©ATTA - Atelier Tsuyoshi Tane Architects

「時の海 ‒ 東北」プロジェクトは、東日本大震災の犠牲者への鎮魂と震災の記憶の継承、これからの未来を共につくることを願い、東北に想いを寄せる3,000人と制作するアートプロジェクト。現在、現代美術家・宮島達男の作品《Sea of Time ‒ TOHOKU》を恒久設置する美術館を、富岡町の海が見える場所に建設中。2027年の開館を目指す。
https://seaoftime.org

正しく知り、正しく恐れて複合災害への理解を深める
東日本大震災・原子力災害伝承館

双葉郡双葉町中野高田39 ☎ 0240-23-4402 9:00~17:00(最終入館16:30) 料金¥600(一般) 火曜日定休(祝の場合は翌平日休)

地震、津波、原発事故の被害を伝える資料約300点を展示。この未曽有の複合災害の実態を伝えるとともに、災害の多い日本で暮らす私たちに役立つ防災・減災の教訓を発信する。1日4回、被災した住民による語り部講話も開催。実体験を肉声で聞くことで、“正しく知る”ことの大切さを実感できる。
www.fipo.or.jp/lore/

ふくしまデスティネーションキャンペーンに注目!

JRグループと県、市町村、地元の観光事業者などが一体となり、各地域の魅力を発信する「ふくしまデスティネーションキャンペーン(ふくしまDC)」。2026年は4月1日から6月30日まで開催され、ご当地グルメや絶景、癒しの温泉など、福島県全体の魅力を満喫するヒントが満載だ。春の電車旅も楽しめるほか、期間中は臨時列車の運行も予定されており、こちらも見逃せない!
https://www.fukushima-dc-cp.jp/

提供 JR東日本