スマートフォンがロックされ家族が困惑する「デジタル遺品」の問題や、親の認知症に伴う資産凍結。超高齢社会の今、誰にでも起こり得るこの問題にどう備えるべきでしょうか。
 
 ライフネット生命社長の横澤淳平氏、デジタル終活に詳しい弁護士の伊勢田篤史氏、東京都健康長寿医療センター副院長で認知症専門医の岩田淳氏、および文藝春秋PLUS編集部の黒岩里奈の4名による座談会を開催しました。ネット口座やスマホ普及が生んだ新たなリスクと具体的な解決策、さらに「全自動の生命保険」という驚きの未来構想まで、今日からできる「デジタル終活」をご紹介します。

撮影 今井知佑/文藝春秋

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「スマホが開かない!」家族を襲うデジタル遺品のワナ

黒岩里奈(以下、黒岩) もしあなたやあなたの家族が突然亡くなったり認知症になったりしたら、家族はスマホの中の大切な情報にたどり着けないかもしれません。そうならないようにするには、どうすればよいのか。本日は、おふたりの専門家の先生とライフネット生命の横澤社長とともに考えていきます。まず伊勢田先生にお伺いします。先生は“終活弁護士”として知られ、日本デジタル終活協会代表理事を務めていらっしゃいます。70代の約9割がスマホを持つ時代、デジタル終活は全世代共通の課題だと思います。そもそも「デジタル遺品」とは何を指すのでしょうか。
 
伊勢田篤史(以下、伊勢田) パソコンやスマホ内のデータ、ネット口座、各種アカウントなどを指します。従来の遺品と違い「目に見えない」「存在に気づけない」のが最大の特徴ですね。

撮影 今井知佑/文藝春秋

黒岩 家族が亡くなったときに何に困るケースが多いですか。
 
伊勢田 一番は「スマホのロックが開けられない」ことです。生前にログインパスワードを共有していないと、亡くなった方の経済活動や契約が全く把握できません。
 
黒岩 専門業者に解除してもらうことはできないのでしょうか。
 
伊勢田 解除業者もいますが非常に高額ですし、確実に解除できる保証はありません。問い合わせた段階で費用や不確実性を知り、結局諦めてしまうご遺族が本当に多いんです。スマホが開かないと、周辺情報からアカウントを手探りで調査する大変な作業になります。
 
黒岩 ネット銀行や証券、暗号資産など、通帳がない「見えない資産」も増えています。
 
伊勢田 そうなんです。ネット証券はカードも通帳もないので、家族が口座の存在自体に気づけません。暗号資産も、個人のスマホアプリ内に保存している場合はパスワードが分からないと処理はほぼ不可能です。有料サブスクが解約されず、引き落としがずっと続くトラブルも増えています。

「見えない資産」はどう対策する?

黒岩 横澤社長、保険会社の視点からはいかがですか。
 
横澤淳平(以下、横澤) ご家族がどの保険に契約しているか共有できている方は非常に少ないです。特にネット保険はペーパーレスが進んでいるため、郵送書類が残らず余計に見えにくくなります。 そこで当社では、事前にご家族の情報を登録しておくことで、万が一の際にご家族からの契約内容照会や書類発送を可能にする「かぞく登録制度」をご用意しています。また、全く情報がない場合でも、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を使えば、生命保険の会員会社に契約の有無を調べられます。

撮影 今井知佑/文藝春秋

黒岩 ご高齢のご契約者様向けに紙の書類なども届くのでしょうか。
 
横澤 当社のご契約者様には、年に1回「ライフネット生命レター」という契約内容を記載したものをお送りしています。69歳以下の方は郵送の希望がない場合はマイページでお送りしますが、70歳以上の方には必ず「紙の書面」でお送りしています。これを機に年に一度はご家族で契約内容を確認していただきたいです。
 
黒岩 今年6月からは80歳までお申し込みができる保険をスタートされていらっしゃいます。

提供 ライフネット生命保険株式会社

横澤 はい。高齢者の方のスマホ所有率が急速に増えており、70代前半の所有率は2015年の14%から2026年には90%に急増しています。当社に対し70代のお客さまから「申し込みをしたかった」「ライフネット生命の保険がいいと思った」などのお声をいただくこともありましたので、「ネットで保険に入りたい」というシニア世代の強いニーズにお応えし、定期がん保険・終身医療保険・終身がん保険は最高80歳までの契約年齢引き上げを実施しました。

出典:「2026年シニア調査」NTTドコモ モバイル社会研究所

黒岩 伊勢田先生、このように高齢者のスマホ利用者が増え、“デジタル終活”がますます重要になっていく今、情報を家族に伝えておくための現実的な方法はありますか。
 
伊勢田 理想はエンディングノートに書き出すことですが、面倒で書かない方が多いですし、生前は財産状況を隠したいという心理もあります(笑)。 そこで私たちが推奨しているのが、スマホのパスワード共有です。スマホが開けば、アプリから銀行や保険の取引が特定できます。生前の共有に抵抗があるなら、パスワードを書いた名刺サイズの紙「スマホのスペアキー®」を作り、財布や通帳、一人暮らしなら冷蔵庫の扉など「万が一の際に家族が必ず見る場所」に忍ばせておくのが有効です。1分で終わる最もコスパの良い終活です。

 

親の異変に気づく「5分間の電話」のサイン

黒岩 認知症と呼ばれる症状の方は、今何人ぐらいいるのでしょうか。
 
岩田淳(以下、岩田) 認知症は病名ではなく、記憶力や判断能力の低下で日常生活ができなくなる「状態」を指します。65歳以上の約3人に1人が認知症またはMCI(軽度認知障害)※1の症状があると推計されています(内閣府「令和7年版高齢社会白書」)。さらに、2015〜21年の日本人の死因で最も多い※2のが認知症というデータもあり、誰もが避けて通れないリスクです。

撮影 今井知佑/文藝春秋

黒岩 死因のトップが認知症とは驚きです。症状はどのように進みますか。
 
岩田 ゆっくり段階的に進行するため、「年のせいか病気か」が本人も家族も区別しづらいのが特徴です。
 
黒岩 ご両親と離れて暮らす方も多いと思います。認知症の初期症状のサインなどはありますか。
 
岩田 電話ですね。認知機能が正常なら短い会話中に同じ話題は何度も出ませんが、5〜10分の間に同じ話を繰り返す場合は、記憶力が落ちている強いサインです。気づいたらすぐに様子を見に行き、家が片付いているか、冷蔵庫に大量の期限切れ食材などがないかを確認してください。
 
黒岩 その後の対応で重要なことは何でしょうか。
 
岩田 早期に受診を勧めることです。日常生活は自立しているが認知機能が低下しているMCIの段階であれば、本人も自覚があり受診に応じやすい。しかし、進行して自覚が薄れると「病気ではない」と拒否し、受診のハードルが一気に上がります。 アルツハイマー病は発症から生活に支障が出るまで約5年かかります。年のせいと片付けず、早期に専門医の判断を仰いでください。
 
黒岩 早期受診が極めて重要なのですね。お金の面では、本人の判断能力が失われると銀行口座が事実上凍結され、家族でも介護費などを引き出せなくなります。保険の手続きでは、どのような備えが有効でしょうか。
 
横澤 あらかじめ「指定代理請求人」※3を指定しておくことが大切です。これがあれば、本人が認知症などで意思表示ができなくなっても、家族が代わりに給付金を請求できます。これも本人の判断能力がある元気なうちにしか登録できません。

黒岩 医療の現場でもお金の手続きは重要ですよね。
 
岩田 非常に重要です。治療や介護を続ける上でお金は切実ですし、子ども世代が一時的に費用を肩代わりするのは大きな負担となります。診察室でもお金や手続きの相談は頻繁に寄せられます。
 
黒岩 保険において家族に伝えておくべき最小限の情報は何でしょうか。
 
横澤 「どこの保険会社に、どんな保障内容で入っているか」「受取人は誰か」です。説明が難しくても、事前に「かぞく登録制度」※4に登録していれば、本人の判断能力低下後でも、登録家族からのお電話で契約内容の照会や手続きの案内をスムーズに行うことができます。

黒岩 ネット保険でも最後は電話で温かく対応してくれるのは心強いです。予防の観点からできることは何かありますか。
 
岩田 特効薬はありませんが、糖尿病や高血圧などの「生活習慣病の適切な管理」が最も重要です。その上で適度な運動をすること。また、「1か月前の旅行自体は覚えているが、具体的に何をしたか思い出せない」といった、詳細が抜け落ちる変化に自覚的になることが大切です。

マイナンバー×AIで挑む「全自動の生命保険」

黒岩 今ライフネット生命が取り組まれている「保険の未来」について教えていただけないでしょうか。
 
横澤 我々は、マイナンバー制度の活用とAIの融合によって手続きを極限までなくす「“全自動の生命保険”構想」を掲げています。 柱は3つあり、①加入時はマイナンバーで本人確認や告知を簡略化(極小化)、②加入後は住所や改姓などの変更を自動検知して更新(自動検知)、③支払い時はマイナポータルから公的医療情報を取得することで、入院や手術を検知し、AIが支払い判定を行うことで、給付金を受け取ることができる体制(手間ゼロ)を目指しています。

提供 ライフネット生命保険株式会社

黒岩 申請しなくても保険会社から届けてくれるのは大きな安心につながりそうですね。セキュリティや実施スケジュールはいかがでしょうか。
 
横澤 マイナンバーの情報は手続きの認証に使用した後、不要な情報は破棄する仕組みを準備する必要があります。スケジュールは、国で議論が進んでいる「電子カルテ情報共有システムの構築」の動きと足並みを揃え、技術的に十分な情報が揃うタイミングでの実用化を目指します。私たちが「ライフネットの生命保険マニフェスト」として掲げている「正直に、わかりやすく、安くて、便利に。」に則り、もっと安心を届けられる存在になりたいと考えています。
 
黒岩 最後に皆様に伺います。明日から始められる「最初の一歩」は何かありますか。
 
岩田 認知症は誰でもなる可能性があります。60歳、65歳など、5年に1度はデジタル資産やパスワードを整理し家族に知らせるアクションを起こしてください。また、「自分がこうなったら病院へ行く」と元気なうちに本人の筆跡で紙に書いておくことをお勧めします。自覚が薄れた後でも本人の意思が残っていれば、納得して受診しやすくなり、医療に繋がるハードルを下げられます。
 
伊勢田 デジタル終活の第一歩は先ほどもお話をしました「スマホのログインパスワードの共有」です。1分で終わる最もコスパの良い万が一への備えですので、この動画を見終わった直後に「スマホのスペアキー®」を書いて財布に入れるなど、すぐにアクションを起こすことが第一歩だと思います。

横澤 金融資産は「どこの会社に預けているか」というレベルだけでも今夜ご家族と共有したほうが良いと思います。保険については「かぞく登録制度」や「指定代理請求人」を最新に更新しておくことが元気なうちにできる備えです。ライフネット生命のコンタクトセンターは2026年の「HDI格付けベンチマーク(生命保険業界)」で最高評価の「三つ星」を獲得しており、最後は人が温かくサポートするサービスを整えていますので、安心してご活用ください。当社も将来的には「全自動」の仕組みでさらに便利なサービスを提供していきたいと考えております。

ライフネット生命保険の
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※1 認知症と診断される一歩手前。認知機能の低下は見られるが日常生活に支障がない状態のこと。MCIの段階で治療を行うことで、認知症への進行を遅らせることができる可能性があるといわれている。
※2 認知症の進行に伴い、誤嚥性肺炎などの重篤な合併症を引き起こしたり、持病の自己管理が難しくなったりして死に至るケースが多い。
※3 被保険者が意思表示できないなど、契約者が保険金等を請求できない特別な事情があるときに、被保険者や保険金受取人に代わって給付金や保険金の請求ができる制度。指定代理請求人はあらかじめ契約者が指名する。
※4 契約者が家族の連絡先を生命保険会社に登録する制度。ライフネット生命の場合、登録家族は契約内容の照会や給付金請求書類の取り寄せができる。災害時や高齢の契約者に連絡が取れない場合に、請求漏れなどを防ぐために保険会社が登録家族へ連絡することがある。

※番組内および記事内でご紹介した情報は、2026年9月時点のものです。

※制度改正については今後変更される可能性があります。

※指定代理請求制度やかぞく登録制度は保険会社によって内容が異なります。詳しくはご契約中の保険会社にご確認ください。

撮影 今井知佑/文藝春秋