米沢藩上杉家の治世(ちせい)が今に息づく城下町・米沢(よねざわ)、その歴史文化は現代人の心を捉え、魅了してやみません。この秋、上杉家の城下町の街歩きを楽しみ、宿る精神に触れ、温泉で疲れを癒す旅はいかがでしょう。

景勝と兼続が築いた城下町

 初代米沢藩主の上杉景勝(かげかつ)と家老・直江(なおえ)兼続(かねつぐ)は上杉家の家祖・上杉謙信(けんしん)に学んだ「義の精神」を生涯貫き、主従一体となって米沢藩の礎(いしずえ)を築きました。「現代に残る城下町として整備したのは兼続によるものです」と、米沢市上杉博物館学芸員の池野理(おさむ)さん。兼続は農業と治水事業、産業振興にも尽力しました。

武家屋敷とうこぎの垣根
防犯用の鋭いトゲを持ち、芽は食材になる「うこぎの垣根」。兼続が栽培を始め、鷹山が定着させました ©米沢市上杉博物館

 米沢城址(松が岬公園)の伝国の杜・米沢市上杉博物館では国宝「上杉本洛中洛外図屏風(らくちゅうらくがいずびょうぶ)」を展示しています。天正2(1574)年、織田信長が謙信に贈ったという、数ある洛中洛外図の中でも傑作中の傑作で、信長がいかに戦国武将・謙信を重視していたかを象徴する屏風です。

紙本金地着色洛中洛外図屏風(右隻)
室町後期に描かれた初期洛中洛外図の一つ。絵師・狩野永徳作。洛中(市中)と洛外(郊外)の賑やかな祇園祭の山鉾巡行や四季折々の情景が細やかに描かれています ©米沢市上杉博物館

 謙信は真言宗の聖地、高野山に参詣し、遺骸(いがい)は甲冑(かっちゅう)に身を固めて甕(かめ)に納めるように遺言しています。遺骸は米沢城本丸の御(み)堂に安置され、歴代の米沢藩主は空海が入定(にゅうじょう)した高野山奥之院にならい、御堂への供膳(きょうぜん)を続けました。御堂を護る能化衆(のうげしゅう)の筆頭で、上杉家菩提寺の法音寺・高梨良潤(りょうじゅん)住職は「謙信公は天下人ではなく、空海を目指していたのです」と、僧侶としての謙信の魅力を語ります。

 明治に入り、神仏分離令などにより、御堂は廃止され、謙信を祭神とする上杉神社が明治4(1871)年に創建され、遺骸も上杉家廟所(びょうしょ)に移されました。今はひっそりと佇む御堂跡を訪ねれば、謎多き謙信に思いを馳せることでしょう。

上杉神社
現在の社殿は伊東忠太による設計です。境内には宝物殿「稽照殿(けいしょうでん」があり、上杉家ゆかりの実物の至宝が収蔵・展示されています
上杉家廟所
杉木立の中に家祖・謙信の廟を中心にして、歴代藩主の廟屋が立ち並ぶ国指定史跡です。米沢市民には「御霊屋(おたまや)」の愛称で親しまれています
法音寺
上杉家廟所に隣接する法音寺。堂内には歴代藩主の位牌が祀られ、謙信が厚く信仰した「泥足毘沙門天像」など多くの至宝が安置されています。拝観料300円(要連絡)

鷹山が今に残した米沢の文化

 9代藩主の名君・上杉鷹山(ようざん)は藩政改革と財政再建に成功した「中興の祖」です。享和2(1802)年、飢饉(ききん)対策の食の手引書「かてもの」を刊行し、自らも率先垂範(そっせんすいはん)しました。後継者の上杉治広(はるひろ)に示した3カ条の心得「伝国の辞」や有名な「なせばなる」は現代でも語り継がれています。

左から上杉景勝像、上杉謙信像、上杉鷹山像 ©米沢市上杉博物館

 殖産興業では米沢織の産業化が代表的です。紅花染で有名な老舗絹織物工房・新田(にった)の新田源太郎社長は「鷹山時代から武士向けの高級な裃(かみしも)や袴(はかま)を手がけ、他の藩にも移出していました」と、鷹山の貢献を讃えます。

紅花染 新田
明治17(1884)年創業の工房で職人の「染め」と「織り」を見学でき、紅花染めの体験も楽しめます(どちらも要予約)
最上川流域の朝霧と寒暖差が育む良質な紅花を使用。職人の手仕事による色鮮やかな紅花染和小物は、新田の工房併設ショップや観光物産館「上杉城史苑」(TEL:0238-23-0700)などで購入可能です

 国の登録有形文化財の上杉伯爵邸では「献膳(けんぜん)料理」が人気です。「米沢牛のいも煮、うこぎご飯、塩引寿司、冷汁など郷土料理が盛り沢山です」(来次(きすき)信彦取締役総支配人)と食文化の宝庫を強調します。

上杉伯爵邸
上杉家14代茂憲(もちのり公の邸宅跡。見事な庭園に臨む空間で鷹山ゆかりの郷土料理を楽しめます。下左/鯉の洗い(要予約)。下右/うこぎご飯

 白布(しらぶ)温泉 東屋(ひがしや)は米沢藩の保養御殿で、兼続の鉄砲鍛造(たんぞう)の地でもある歴史の宿です。30代目の宍戸紘次郎さんは「湯滝に打たれる『滝風呂』のほか、保養御殿時代の庭石を手掘りした『石風呂』も名物です」と、湯量豊富な風呂もこの宿の魅力です。

白布温泉 東屋
下左/約400年前から流れ続ける石造りの「滝風呂」。下右/きめ細かな霜降りで柔らかい米沢牛を、すき焼きやしゃぶしゃぶで。米沢の郷土料理も充実しています

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お問い合わせ先

上杉神社
住所:米沢市丸の内1丁目4-13
交通:JR米沢駅より市民バスで「上杉神社前」下車、徒歩約5分
参拝:6:00~17:00(10月31日まで)/7:00~17:00(11月1日~3月31日)
TEL:0238-22-3189

稽照殿
住所/交通:同上
開館:9:30~16:00(入館は15:45まで)
休:第2水曜 ※11月26日~3月中旬は冬季休館(2月第2土日は開館)
TEL:0238-20-6295

伝国の杜・米沢市上杉博物館
住所:米沢市丸の内1丁目2-1
交通:JR米沢駅より市民バスで「上杉神社前」下車、徒歩約3分
開館:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休:11月30日までは第4水曜/12月1日~3月31日は月曜(祝日の場合は翌平日)、12月27日~1月1日
TEL:0238-26-8001

法音寺
住所:米沢市御廟1丁目5-32
交通:JR米沢駅より市民バスで「御廟所西口」下車、徒歩約3分
拝観:9:00~17:00
TEL:0238-22-2095(要連絡)

上杉家廟所
住所:米沢市御廟1丁目5-30
交通:JR米沢駅より市民バスで「御廟所西口」下車、徒歩約5分
拝観:9:00~17:00(受付は16:30まで)
TEL:0238-23-3115

上杉伯爵邸
住所:米沢市丸の内1丁目3-60
交通:JR米沢駅より市民バスで「上杉神社前」下車、徒歩約3分
営業:食事11:00~21:00(14:00までは予約優先/14:00以降要予約)
休:水曜
TEL:0238-21-5121

武家屋敷とうこぎの垣根
住所:米沢市芳泉町
交通:JR米沢駅より市民バスで「芳泉町」下車、徒歩約1分
TEL:0238-22-5111(米沢市観光課)

紅花染 新田
住所:米沢市松が岬2丁目3-36
交通:JR米沢駅より山交バスで「松ケ岬」下車、徒歩約3分
営業:9:00~12:00/13:00~16:00(完全予約制)
TEL:0238-23-7717

白布温泉 東屋
住所:米沢市大字関1537
交通:JR米沢駅より山交バスで「白布温泉」下車、徒歩約1分
TEL:0238-55-2011

米沢周辺マップ

※記載の内容は、2026年9月現在のものです。
※お出かけの際には、ホームページなどで最新の情報をご確認ください。
※写真および路線図はイメージです。