世界のさまざまなリスクを調査している「ユーラシア・グループ」は、新年早々、「今年の10大リスク」を発表しました。「ユーラシア・グループ」は1998年にアメリカで設立されたコンサルティング会社。世界の地政学リスクの情報を企業に提供する仕事をしていて、毎年1月、その年に予想されるリスクを発表してきました。去年はどんなリスクを指摘したのでしょうか。
去年最大のリスクとして挙げたのは「米国の敵は米国」というものでした。アメリカは国内で民主党と共和党の対立が激しく、分断が進行。ドナルド・トランプとジョー・バイデンの「二大政党の大統領候補は、いずれも大統領に不適格だ」と指摘していましたが、その片方のトランプが当選。その結果、今年の「10大リスク」のほとんどはトランプがらみのものになっています。今年の10項目を紹介しましょう。
1 深まるGゼロ世界の混迷
2 トランプの支配
3 米中決裂
4 トランプノミクス
5 ならず者国家のままのロシア
6 追い詰められたイラン
7 世界経済への負の押し付け
8 制御不能なAI
9 統治なき領域の拡大
10 米国とメキシコの対立
リスクのトップの「Gゼロ世界」というのは、ユーラシア・グループを率いるイアン・ブレマー氏が以前から提唱していた概念です。過去の世界はG7のような主要先進国が指導力を発揮できた時代もありました。この場合のGとは「グループ」のG。7か国のグループが世界をリードしてきたというわけです。しかし、グローバルサウスのように、途上国だった国々が発展し、7か国だけでは力不足になり、G20のように世界20の国・地域が世界のことを話し合うようになりました。ところが、これまで指導力を発揮してきたアメリカがトランプ大統領による「アメリカ・ファースト」で脱落。指導力のある国がいなくなってしまい、世界は「ジャングルの掟」つまり軍事力のある国が強い力を持つ弱肉強食の世界になるというわけです。
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source : 週刊文春 2025年1月30日号