台湾メディアに「大罷免、大失敗」のタイトルが躍った。「大罷免」は大リコールの意味。7月26日に実施された立法委員(国会議員)に対する前例のない大規模リコール投票の結果を皮肉ったものだ。

 中国と対立する与党・民進党は総統ポストを握っているが、国会では少数与党状態だ。国民党など野党連合の妨害で、議案や予算を通すのに苦労していた。

 そこで民進党は市民団体と連携、国民党の「親中議員」31人をリコールし、劣勢を解消しようとした。26日は議員24人を対象に投票。事前の予想では最低でも5人、最大で10人は罷免可能との観測もあった。だが全議員で反対票が賛成票を上回り、罷免された議員はゼロ。8月23日投票の、残り7人のリコールも厳しそうだ。

日本より一足先にリコール投票が実現

 失敗の「戦犯」は頼清徳総統というのがもっぱらの見方だ。罷免を求める市民団体の署名も集まり、いざ罷免投票へとなった6月、頼総統は国家団結を呼びかける連続10回の講演をスタートさせた。ところが、この講演の内容に事実関係のミスが多く、文章も十分に練られていなかったため、国民党は批判の集中砲火を浴びせた。本来は市民運動主導のはずが、頼総統が党としてリコールに邁進する意向を見せたことで、国民党の反対運動が逆に盛り上がってしまった。

 頼総統は「敗北」の夜に「誰かの勝利でもなければ、誰かの失敗でもない。リコールも反リコールも憲法で保障された人民の正当な権利だ」と苦しい言い訳を述べた。そもそも、選挙で選んだ議員を、選挙から一年半で、そっくり変えようという運動に懸念を抱いた冷静な中間層も多かった。

 冷静沈着、慎重さが売りだった前任の蔡英文氏に比べて、頼総統は勝ち気で何かあれば文句を言わないではいられないタイプ。政治行動で「賭け」に出ることも多く、今回は調子に乗りすぎてその性格が裏目に出たようである。

 心配されるのが頼政権のレームダック化だ。昨年の総統選挙の得票率も4割しかなく野党分裂で勝利した形。政権基盤は弱い。

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source : 週刊文春 2025年8月7日号