コンビ結成間もない8年前に「キングオブコント」で準優勝して一躍有名になったものの、その後はさほど目立った活躍のない男女コンビ「にゃんこスター」のアンゴラ村長が、7月に初の写真集『標準体型』を出した。
唐突になぜその話題、とお思いでしょうが、まず言っておきたいのは、彼女のデジタル写真集はすでに去年出ていて、バカ売れしているということである。好評を受け、新刊が紙で発売されたのだ。
実は私、8年前にこの連載で彼女に触れている。その頃となれば、女の芸人はまだ容姿を貶されたり自虐したり、逆に「美人なのに」という枕詞とともに語られたりと、そんな風潮はだいぶ強かった。私自身はそれに眉をひそめていたけれども、それだけに「特に美人でもブサイクでもない」立場の彼女がどう立ち回るか気になっていたのだ。
彼女は当時、芸人であり会社員でもあることをアピールしており、ウェブ制作等を手がける会社に、社が掲げる「どヘンタイ大募集」というキャッチフレーズに惹かれて入社した、と語っていた。
はっきり言って「どヘンタイ~」というフレーズは私はダサいと思ったし、妙に「リア充」な雰囲気だな、と思った。こういうのが好きだということは、彼女の感覚は「オモロいかサムいか」に極端に敏感な芸人より、一般人に近い。その感覚と、芸人的感覚との間で生まれる齟齬はおもしろいかもしれない……というようなことを連載に書いた。しかし、実際のところ、女性であることもあってホモソーシャル世界に生きるセンスにうるさい芸人たちにコテンパンにされそうで、少し怖いとも思っていた。
さて、このたび彼女は写真集についてインタビューを受けている。そこでは、早くに名が売れたことによる苦労も語りつつ、タイトルの通り「標準体型」でも写真集を出していい、「普通でいていいんだという自信がつきました」と言う。「普通」でいいから、写真集を見た芸人の先輩から「お前、太ったよな?」とイジられても自虐もおどけもせず「いや、標準体型ですよ、これが」と「普通=常識的」なことを返していい。芸人だからって、常に特殊な、芸人らしい姿勢・態度でいなきゃいけないわけじゃない、のだ。
8年前は彼女の捉え方をよく分かってなかったな、と私は反省した。正直、芸人にしては「普通」っぽい子だよなあ、大丈夫かな、と思っていたけど、それでよかったんだわ。時代がアンゴラ村長に追いついてきたんだよ、これは。
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source : 週刊文春 2025年8月14日・21日号






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