閉幕まで2カ月を切った大阪・関西万博。「いのち動的平衡館」プロデューサーの福岡伸一さんと「ウーマンズパビリオン」などを手がけた永山祐子さんが、建築と動的平衡の関係を語る。

福岡 大阪・関西万博で永山さんが設計を手がけた「ウーマンズパビリオン」に足を運びました。内部の展示も印象的でしたが、まず目がいったのは、組子状の白いファサード(正面外観のデザイン)です。あれは2021年開催のドバイ万博で使用したものを再利用されたそうですね。

永山 ええ、ドバイ万博で私が設計を担当した日本館に使っていたファサードです。このファサードは、「ノード」と呼ばれる球体にチューブを挿して組み合わせていくというプラモデルのような仕組みで、1970年の大阪万博の大屋根に使われているシステムなんですよ。

ファサードに用いられた「ノード」の模型

福岡 それをドバイ万博で採用したのはなぜですか。

永山 私自身、万博のように短期間で壊される建築物を手がけるのが当時初めてだったので、リユースをしてみたいという思いがありました。また、ドバイでの仕事も初めてだったため、現地の技術力がどの程度あるのかわからず、組み立てやすいモデルにしようと考えたんです。シンプルな仕組みなので汎用性が高く、使う場所によって異なる形に作り上げられる。これを、2027年に横浜で開催される「国際園芸博覧会」でさらにリユースするために今も試行錯誤しているところです。

福岡 これは、バラして運ぶことができるのですか。

永山 ええ、日本館はコンテナ1個半分に収まりました。建築はこれまで場所に固定化されたものとして考えられていて、動かすとしても比較的そのままの形で移設というのが一般的でした。ですが、こういった簡便な仕組みを作ったことによって、軽やかに形を変えてさまざまな場所に運べる。私はこれを“動く建築”と位置付けています。

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source : 週刊文春 2025年8月28日号