米西部ユタ州の大学構内で10日、トランプ大統領に近い右派の政治活動家チャーリー・カーク氏(31)が射殺された。近年、政治暴力が相次ぐ米国だが、極右勢力を中心に「戦争状態」「内戦」という言葉が飛び交うなど、衝撃が広がっている。

 米メディアによれば、カーク氏は18歳だった2012年、若者に保守的な思想を広げる団体「ターニング・ポイントUSA」を創設。リベラル派の多い大学に乗り込んで公開討論を挑む草の根活動を推進した。同団体は全米850以上の大学に支部を持つまでに成長した。

 ワシントン在住の政界消息筋はカーク氏の活動について「異なる意見の人間同士が口も利かない米社会で議論を挑んだ手法は評価できるが、ののしり合いに発展するケースも少なくなかった」と語る。カーク氏が銃規制に反対したり、DEI(多様性・公平性・包括性)を否定したりする発言をするたび、公開討論の場で激しいブーイングを浴びていたという。

 米連邦捜査局(FBI)などは12日、ユタ州出身のタイラー・ロビンソン容疑者(22)を前日に拘束したと発表した。米メディアは、同容疑者は物静かな性格だったが、犯行前に家族との食事の席で、「彼(カーク氏)の見解が許せない」と語っていたと伝えた。犯行現場では「おい、ファシスト、捕まえろ!」と刻印した弾丸も見つかったという。

 米国では近年、政治暴力が増加の一途をたどっている。昨年のトランプ氏暗殺未遂事件に続き、今年も4月にペンシルベニア州知事公邸放火事件、6月にミネソタ州議員2人と家族に対する殺傷事件などが相次いでいる。

 特に今回殺害されたカーク氏は、トランプ政権と極めて近い存在だった。上述の政界消息筋によれば、バンス副大統領の就任を後押ししたのもカーク氏だったとされ、ホワイトハウスに衝撃が走っているという。

カーク氏(右)は大統領と極めて近かった

 トランプ氏は容疑者拘束が発表される前の11日、記者団に「過激な左派の狂人どもがはびこっている。我々は彼らを徹底的にたたきのめす必要がある」と発言した。第一次トランプ政権で首席戦略官を務めたスティーブン・バノン氏は保守系メディアの対談で「チャーリー・カーク氏は戦争の犠牲者だ」と発言。保守系FOXニュースの人気パーソナリティ、ジェシー・ワッターズ氏は「私たちは彼(カーク氏)の死の復讐をするつもりだ」「彼ら(リベラル派)は私たちと戦争をしているんだ」と語った。

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source : 週刊文春 2025年9月25日号