トランプ米大統領は10月30日、核実験再開を国防総省に指示したと、SNSに投稿した。翌31日も、記者団から地下核実験を実施するのかと問われ、「いくつかの実験を行うつもりだ」と述べた。「他の国がやっているなら、我々もやる」とも述べ、ロシアや中国を強く意識する姿勢を示した。
米国は冷戦終結を受け、1992年を最後に、核実験を行っていない。
実はトランプ氏の危機感は間違ってはいない。米国は過去、ロシアとの間で戦略核弾頭数をそれぞれ1550発以下に抑えるなどとした新戦略兵器削減条約(新START)で核の軍備管理を行ってきた。米国は中国にも加わるよう働きかけてきたが、中国側は「米ロと核戦力の規模が違い過ぎる」という理由で無視してきた。新STARTは来年2月に期限を迎える。
ロシアのプーチン大統領は条約を少なくとも1年延長する考えを示しているが、日米などの核専門家からは「ウクライナ戦争に集中するための方便ではないか」という声が上がっている。
実際、プーチン氏は今年10月、原子力推進式の巡航ミサイル「ブレベスニク」と潜水兵器「ポセイドン」の発射試験にそれぞれ成功したと語った。両兵器は通常弾頭を搭載していても、放射性物質を振りまく「ダーティーボム」になりうる。

米国の専門家はこうした中ロの動きについて、「(大型海軍艦艇の総トン数の割り当てを決めた)ワシントン海軍軍縮条約を崩壊させ、第二次大戦へと進んだ日本のようだ」と語る。
ただ、今回のトランプ氏の発言が「核爆発を伴う核実験」を意味するのであれば、それは日米の安全保障を最悪の結果に導くかもしれない。中国が小躍りして、核実験を再開する可能性があるからだ。1000回以上の実験で得た膨大なデータがある米国と異なり、中国の核実験回数は46回にとどまるため、核兵器の小型化などのためのデータが不足しているとみられる。
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source : 週刊文春 2025年11月13日号






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