遺言者が自分の財産の一部あるいはすべてを特定の団体に寄付することで社会に貢献する「遺贈寄付」。人生最後の社会貢献として、いま注目を集めている。
12月3日、文藝春秋メディア事業局では「遺贈寄付で思いを繋ぐ」と題してセミナーを開催した。会場となったのは東京・麹町の文藝春秋ビル内にある文春サロン。抽選で選ばれた参加者で会場は大いに賑わった。

セミナーは2部構成。第1部では作家・佐藤優氏による基調講演が行われた。
外交、政治、歴史と広範なジャンルで健筆をふるう佐藤氏は、冒頭、最近の日中関係に触れ、国家間の緊張が高まる世界情勢について独自の視点から解説。熱心にメモをとる参加者が多くいた。
講演の後半では、その緊張関係のなかで「国でもなければ、私の利益を代表しているのでもない」NPOなどの中間団体の社会的意義に言及。「友愛の精神にもとづいた」活動を資金面で支援する遺贈寄付の重要性を参加者に訴えた。

休憩をはさんで、第2部は協賛4団体からのプレゼンテーションが行われた。
トップは「国境なき医師団」の看護師・白川優子さん。「寄付してくださった方の思いが医薬品となって、多くのいのちを救っている」と、自身の体験をもとに紛争地での医療活動の実情を語った。

2番手は「カタリバ」松本真理子さん。「どんな環境で生まれ育っても、子どもたちには未来をつくり続ける力を養ってもらいたい」と、2001年から続く全国の子どもたちへの様々な支援活動を紹介した。

3番手は「ピースウインズ・ジャパン」。プレゼンテーションを行った片山芳宏さんは、外務省のキャリア外交官からNPO法人へと転身した異色の経歴だ。自らの経験を通して、国際人道支援の重要性を説いた。

最後は「交通遺児育英会」専務理事の大屋克文さん。交通事故によって親を失くし、経済的に困窮している家庭の子どもたちを支援するために設立された。「寄付金の使途は1円にいたるまで公表している」と、その透明性を強調した。

国内外の課題解決に取り組むそれぞれの団体のプレゼンテーションを通して、遠い未来に自分の思いを繋いでいくための選択肢のひとつとして「遺贈寄付」があることをあらためて感じさせるセミナーとなった。
source : 週刊文春
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