「ソフィスティケート(洗練)された外交は嫌いだ。耳触りは良いが、何も残らない」。1月も高市早苗首相や習近平中国国家主席らとの首脳外交をこなす、韓国の李在明大統領が側近に漏らした言葉だ。保守系韓国紙、朝鮮日報に「綱渡り外交」と皮肉られても意に介する様子はない。
4日から7日までの訪中では、中国が最重視する台湾問題への対応が注目された。李氏は訪中前に中国国営中央テレビ(CCTV)のインタビューで「『一つの中国』を尊重するという立場に変わりはない」と述べた。韓国政府関係者は「首脳会談で、中国側に言わされた格好になるのを避けた」と解説する。
韓国メディアによれば、習氏は会談で「歴史の正しい側に立たなければならない」と語ったが、李氏は7日の記者懇談会で「孔子の言葉だと思って聞いていた」ととぼけた。前出の関係者は「政治問題化させず、無駄に韓日対立を煽らないようにした」と説明する。
逆に、日米韓の枠組みを崩したい中国は、当初の予定だった「李氏の4月訪中」を、「1月の国賓訪問」に格上げ。また中国は通常、空港での国賓の出迎えは次官級に担当させるが、今回は閣僚級の科学技術部長が出迎えたほど。ただ、国賓訪問では恒例の首脳会談後の共同記者会見はなかった。前出の関係者は「中国側も無理に合意を焦らず、関係改善に主眼を置いた韓国側に歩調を合わせた」と語る。

一方、韓国の魏聖洛国家安保室長は9日の記者会見で、日韓首脳会談の目的について「両首脳の友好や信頼強化」をまず挙げた。李氏の支持基盤の進歩(革新)勢力は、歴史認識問題で日本を批判する傾向がある。だが、会見で魏氏は「(1942年に起きた水没事故で日本人や朝鮮半島出身者計183人が亡くなった)長生炭鉱などでの両国の人道的な協力を強化する契機にしようと思う」と語った。
日韓関係を担当した経験がある韓国政府元高官は、魏氏が長生炭鉱問題を取り上げた理由をこう語る。「韓国では慰安婦や徴用工問題に隠れ、世論の関心が高まらなかった。日本も厚生労働省が担当していたため、外務省の関心が薄かった。逆に言えば、話が複雑ではなく、韓日両国が合意しやすい問題。だから今回触れたのだろう」。魏氏も「人道問題」と位置づけ、日本側の法的責任や1965年の日韓請求権協定とは切り離す考えを示した。
米国や日本、中国との間で巧みに善隣外交を続ける李氏。訪米を急ぐ一方、中国との対話の糸口がつかめない高市首相だが、李氏との首脳会談で、難局打開に向けたヒントを得ることができただろうか。
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source : 週刊文春 2026年1月22日号






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