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マスクだけで隔離者の元へ……115名コロナ感染の防衛大で学生たちから「助けて!」の声

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「週刊文春」編集部
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 全寮制の防衛大学校で8月以降、新型コロナウイルスの感染者数が増え続けているのにもかかわらず、感染対策が不十分なことに、学生から不安の声が多くあがっていることが「週刊文春」の取材で分かった。

 きっかけは現役の学生たちからのSOSの情報提供だった。9月に入り、〈助けてください……〉という悲痛な叫びにも似た連絡が、次々と文春リークスに寄せられたのだ。

 現役学生のA君が訴える。

「約2千人の学生が寝食を共にする全寮制の学内で、夏季休暇中に、約30名の感染者が出ました。防衛大学校は8~10人が一部屋に暮らしているので、その中で1人感染者が出たら、もちろん濃厚接触者もかなりの数にのぼります。にもかかわらず大学は帰省中の学生に対し、学校に戻ってくるように命じたのです」

防衛大学校の学生たち
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 その後も連日のように感染者が続出し、8月からの累計感染者数は115名。現在では陽性者と濃厚接触者を合わせて約200名が、学生寮とは別の「学生会館」「旧医務室」「武道場」などの施設で隔離生活を送っているという。

 問題は隔離生活をしている陽性者、濃厚接触者たちは過酷な状況に置かれている。別の現役学生・B君が語る。

「隔離者の中には、仕切りも冷房もない部屋で雑魚寝を強いられている人もいるのです。部屋には数人が押し込められ、部屋の中で、特段の感染対策がなされているわけではありません」

 食事の配膳、ゴミ出しについても、首を傾げざるを得ない対応がなされている。

マスクのみで隔離者に配膳を行う下級生たち

「防衛大学校では1年生は2年生以上から厳しい指導を受け、様々な作業に駆り出されるのですが、隔離患者用の弁当の配達もその一環となっています。隔離者のゴミも1年生が外に運び出し、所定のゴミ捨て場に持って行きます。ただ分別が上手くいっていないためか、回収されずに残っているゴミも散見される。1年生は、こういったリスクが高い作業に従事させられているのにも関わらず、対策はマスクのみ。医官が隔離者のところに行く際には防護服を着用していますが、学生が隔離施設に行く際にはほぼ何もしていないのです」

至るところに放置されているゴミ(以下、同)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 その結果、濃厚接触者以外からも、陽性者が続出したという。さらに全校には〝外出禁止令〟が出されている。現役学生のCさんが言う。

「普段から私たちは毎日厳しい集団生活を送っていますが、その唯一の息抜きが週末の外出でした。それを奪われると、精神的に厳しい……。昨年はコロナで軟禁状態に置かれ、極限状態に追い込まれた学生による自殺未遂も校内で起こりました」

 一方で、9月2日の本部会議では、6日からの対面授業の再開や、〝密〟になることが予想される水泳競技会やパレードの実施も決定されたという。

授業再開を告げるメール

 愛知県立大学看護学部の清水宣明教授(感染制御学)が呆れて言う。

「ウイルスを含むエアロゾルが滞留した隔離施設に、マスクだけの学生が飛び込めば、少ない呼吸数でも感染する可能性はある。そしてウイルスを外部に運ぶことになり、感染は広がる。帰省していた学生を呼び戻したのも信じられません」

 防衛大に事実関係を問い合わせると、次のように答えた。

「濃厚接触者、濃厚接触者以外からも陽性者が出ていることは事実です。食事を運搬する学生(1年生)が陽性者等と接触することは無いため、防護服等は着用させていません。(ゴミが放置されていることについては)環境省のガイドラインに従い、2週間放置すると感染能力が無くなるということで、放置し、集積した後に一般のゴミとして回収していることはある(環境省は「ガイドラインには一週間と記載」と回答)。水泳競技会やパレードに関しては、PCR検査を行って、陰性が確認されたもののみが参加して、校内において実施する予定です。外出については当面禁止することとしていますが、今後は校内の感染状況等を踏まえ、適切に判断してまいります。なお防衛大学校の学生は特別職国家公務員であり、就学することが彼らの職責であり着校は必然的なものと考えております。引き続き感染防止対策を徹底しつつ、学校の公務を運営していく考えです」

 B君が嘆息して言う。

「学校側の対応は信じられない事ばかりです。隔離されている陽性者や濃厚接触者はもちろん、感染していない学生たちも、先の見えない軟禁生活と感染の恐怖に怯えながら生活しているのです」

〝ウソのような本当の話〟が起こっている防衛大学のいま。その他にも、「綾瀬はるかが入院出来たのは上級国民説」「ワクチン交差接種は安全か否か」「中高年よりも若者のワクチン接種を進めるのは妥当か」など、世間で言われている謎を解き明かす記事を、9月8日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」及び9月9日(木)発売の「週刊文春」が報じる。

source : 週刊文春 2021年9月16日号

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