10月31日、ハロウィンの夜に新宿に向かって走る京王線特急電車。緑のシャツ、青のスーツに紫のロングコートを羽織った男の手には、刃渡り30センチの刃物が握られていた。
車内の静寂が破られたのは夜8時前。男はおもむろに立ち上がると、無表情のまま次々と乗客に切りつけ、液体をまいて火を放った。現場にいたミュージシャンの吉田涼さんが証言する。
「乗客の『刃物を振り回している!』という叫び声を聞き、必死で逃げました。駅に着いてもドアが開かず、パニック状態に。窓を開けて女性から順に逃げたのですが、過呼吸で倒れている人もいました」
火の手が上がった電車は東京・調布市の国領駅に緊急停車。警察官が駆けつけたところ、男は2号車に座って右手にナイフを持ち、煙草をくゆらせていた。8時9分、警視庁は住所、職業不詳の服部恭太容疑者(24)を殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。
「70代の男性が刺されて救急搬送されましたが、意識不明の重体。その他、16人が重軽傷を負った。逮捕時に身元を確認できるものがなく、氏名は『自称』でしたが、その後の調べで過去のわいせつ事件で捕まった際の指紋が一致したことから本人の特定に至りました」(社会部記者)
小田急線車内で36歳の男が刃物を振り回し、乗客10人が重軽傷を負う事件が起きたのは今年8月のこと。服部は逮捕後、「小田急線の事件を参考にした」と供述している。
「服部は『あの事件ではサラダ油で火が付かなかったからライターオイルを使った』と話している。刃物はAmazonで購入したといい、警察は計画性の高さに注目しています」(同前)
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source : 週刊文春 2021年11月11日号