年明け早々、スターによる新メディア起ち上げが、米メディア界で話題をさらっている。
新メディアを率いるのはニューヨーク・タイムズ(NYT)の名物コラムニストを辞めたベン・スミス(45)。「次世代メディアがどうなるのか知りたければベンを追え」と言われる米メディア界の風雲児だ。
スミスは、政治ニュース専門のスタートアップメディア・ポリティコの記者から、デジタルメディア・バズフィードの編集長に。トランプ大統領とロシア政府を巡る疑惑文書の公開など超弩級の特ダネを放って、既存メディアを震撼させた。次に転職したのは、勢いを盛り返してきたNYT。名物コラムの執筆者におさまったのだ。
初のコラムは、「NYTの成功は、なぜジャーナリズムにとって悪いニュースなのか」。NYTは講読数760万となった電子版で大成功をおさめ、スター記者をスカウト。自分もその一人だが、としながら、メディアの現状を鮮やかに読者に解説した。
アメリカでは、地方の新聞などが相次いで破綻。ニュース砂漠が広がる。一方で、スミスのコラムによれば、NYTは、新人記者でも年俸は10.5万ドル(約1200万円)で、全米ジャーナリストの10〜20人に一人はNYTの記者だという。
スミスが絶頂期のNYTをたった2年で去るのは、メディア業界を一人勝ちのものにせずに、多様性を確保するためではないかとの観測も流れる。「スミスはスフィンクス(神聖な怪物)」などとエールを送る関係者は多い。
メディアの名はまだないが、“Mr. Smiths”と仮に呼ばれている。“Mr. Smiths”と呼ばれるのは、相方として経営を担うのが、数々のスタートアップメディアを運営してきた実力派ブルームバーグ・メディアのジャスティン・スミス最高経営責任者(52、1月4日に退任)だからだ。ビッグネーム二人が組むだけに、資金調達も容易とみられる。
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source : 週刊文春 2022年1月27日号