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オミクロン、こんな人があぶない

のど、BMI、ワクチンでわかる、誤嚥性肺炎の呼び水に

「週刊文春」編集部
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「重症化しにくい」が枕詞となってしまったオミクロン株。たしかに数字の上ではそうだが、オミクロン株の特徴ゆえ、より警戒を要すべき人はいる。のど、肺、肥満、睡眠、ワクチン、水分――識者たちが多面的に論ずる。

 オミクロン株の感染拡大で、東京都では1月18日、新規感染者が5185人に達し、昨年8月以来の5000人台に乗った。一方で、病床使用率はピーク時の8割超に対し、23.4%(1月18日)に留まっている。

 だが、オミクロン株でも一定数が重症化するのは厳然たる事実。臨床医たちの経験から見えてきた、オミクロン株で「あぶない人」とは――。

重症化しないために

“のどが弱い”に要注意

 オミクロン株は、デルタ株と比べ、肺よりも上気道(鼻腔、副鼻腔、咽頭、喉頭)でウイルスが増えると報告されている。つまり、風邪を引いたときにのどが腫れて高熱を出しやすいなど、もともと“のどが弱点の人”に、より注意が必要といえるだろう。

 そもそもオミクロン株の症状は、微熱や鼻水、咳、のどの痛みと、風邪の諸症状に似ている。オミクロン株の陽性者50人を対象にした沖縄の調査では、発熱の72%に続き咳が58%、のどの痛みが44%、鼻水・鼻づまりが36%と、上気道に関する症状が多かった。

 

「耳鼻咽喉科 山西クリニック」の山西敏朗院長が実感を語る。

「オミクロン株では風邪症状の人が陽性者となるケースが増えています。先日、女子高生の患者さんが『風邪だと思う』と外来に来られました。熱は37度くらい、のどの痛みや咳、鼻水、痰の症状が出ており、念のためPCR検査をした結果、陽性だった。両親や兄弟は大丈夫でしたが、同居している85歳のおばあさんも感染し、女の子は『自分のせいだ』と泣き出してしまいました」

山西氏

 特にコロナ禍で受診控えをしている高齢者の場合、「ただの風邪」と判断してしまい、気がついたら重症化……という危険性もある。今は、風邪症状でも「オミクロンかも?」と疑ってみることが大切だ。

 微熱、のどの痛みや鼻水などの症状が出ても、市販薬だけで済ませてしまう人もあぶない。池袋大谷クリニックの大谷義夫院長も、

「市販薬を服用した後、熱が下がって身体が楽になったとしても、まずは病院に行って、PCR検査を受けてください」

 と釘を刺す。

 症状があればPCR検査は無料。医療機関を受診しても、初診料と診察料を合わせて2000円程度で済む。ただちに受診したい。

 感染しないように注意することはもちろんだが、のどが弱いと自覚している人は具体的にどうすべきか。山西医師が助言する。

「大前提として、部屋を加湿しておくことでしょう。特に冬の室内は乾燥しがちですが、湿度40%未満だとウイルスは蔓延しやすくなる。せめて40%を超えるようにしてください」

 できれば居間や寝室には加湿器が欲しい。また1000〜2000円程度でデジタル温湿度計を購入できるので、手に入れておきたい。

誤嚥性肺炎の呼び水にも

 受診控えで、歯科での口腔ケアが疎かになっている人も要注意だ。オミクロン株により、上気道に炎症が起こると、特に高齢者にとっては「誤嚥性肺炎」の呼び水となることも考えられるからだ。

 誤嚥性肺炎といえば今や日本人の死因第6位。2020年は前年比約2400人増の約4万3000人が命を落としている。

 医療ジャーナリストの森田豊医師が解説する。

「オミクロン株に感染し、上気道炎を生じると、誤嚥防止にかかわる『喉頭蓋』という気管の蓋にあたる部分にも炎症が起きやすくなります。すると、口腔内の細菌を含んだ唾液などが、睡眠中に気道に入りやすくなることが考えられます」

「オミクロン株は肺炎になりにくい」と油断しているスキに、誤嚥で肺にウイルスを取り込んでしまう……ということにもなりかねない。誤嚥性肺炎の年間死亡者数は、コロナの累計死亡者数(約1万8000人)より遥かに多いのである。

“ケアが大事”ということでいえば、もうひとつ忘れてならないことがある。

 これから花粉症の季節に入っていく。ただでさえ“花粉症持ち”には憂鬱だが、今年は、とりわけ警戒が必要になる。山西医師が言う。

「花粉症の方は、鼻がつまって口呼吸になりやすい傾向にあります。ですが、口は上気道に直結していて、そもそもウイルスが入り込みやすい。だから花粉症の方は特に要注意。オミクロン株対策の一環としても、今年はまず花粉症の治療を早めに行いましょう」

肥満がもたらす睡眠時無呼吸症候群

 コロナの重症化リスクのひとつとして、かねてより「肥満」が指摘されてきた。だが大谷医師は最近、軽肥満(60歳以上の男性の場合、BMI25以上30未満)の人にも、重い症状を呈する人が目立つと感じているという。身長170センチの男性だと、体重73〜86キロが該当する。

「第5波でも、より重い症状に陥ったのは肥満の方が多かったのですが、当クリニックでは、非高齢者で基礎疾患のないBMI26といった“やや肥満”の方が目立っています」(大谷医師)

 オミクロン株と肥満度の関係はまだ明らかではないが、肥満が睡眠時無呼吸症候群(SAS)と密接な関係にある点は見逃せない。

「肥満の人の約4割に閉塞性SASが認められるという研究があるが、米ノースウェスタン大学の研究では、基礎疾患に閉塞性SASを持つ人は、医療機関で治療を受けている同年代と比べ、新型コロナに罹患するリスクが約8倍高く、呼吸不全を発症する重症化リスクは2倍になると判明した」(厚労省担当記者)

 SASは国内でも潜在的な患者数が500万人といわれるが、なぜ、感染リスクが高いのか。

「睡眠時に無呼吸の状態が続くと免疫細胞の働きが落ちやすく、またウイルスに感染した際、低酸素状態が呼吸不全につながる可能性が指摘されている」(同前)

 医療法人RESM理事長で、慶應大学特任准教授の白濱龍太郎医師も言う。

「特に、鼻に疾患があって口呼吸になっていると、SASの方の場合はより感染リスクは高いと言えるでしょう。また、肥満の人は、SASのみならず、糖尿病など他の重症化リスクとなる疾患も併せて発症している場合が多いから、よりリスクは高くなる」

白濱氏

 SASは男性に多いイメージがあるが、女性も油断はならない。

「日本人のSAS患者は、閉経後の女性にも増えています。50代以上になると、筋肉が弛緩してくることが一因と考えられます。気づきのポイントは、いびき、夜間に目が覚める、夜間頻尿などでしょう」(同前)

 心当たりのある人は、オミクロン株への感染リスクを下げるためにも、まず睡眠学会専門医の診察を受け、治療を行おう。

ワクチン“賞味期限”の問題

 症状や基礎疾患がなくとも、2回目のワクチン接種から時間が経過している人はリスクが高まる。

 東北大学災害科学国際研究所の児玉栄一教授が語る。

「ワクチンの効果は、時と共に低下していくのは避けられない。2回目の接種から半年経つと感染予防効果は1割まで下がるとの報告もあり、よくても5割弱といわれます。米国ではブレークスルー感染が増えています」

 国内でも2回目のワクチン接種から7カ月以上経過している高齢者を対象としてブースター接種が始まるが、7カ月というのはかなりきわどいタイミングともいえる。7カ月前の6月下旬までに2度の接種を完了した人は人口の約1割、1000万人以上もいるのだ。

 もちろん、デルタ株に比べて再感染のリスクが5.4倍高いと指摘されているオミクロン株。ブースター接種をしたからとて万全ではない。3回目接種を終えた大谷医師は言う。

「3回打っても感染する事例は少なからずある。ですが、それでも抗体価は上がらないより上がった方がいい。死亡・重症化リスクはかなり下がるからです。私は昨年から個人的に抗体価の推移を調べたのですが、2回目接種の約1カ月半後で1600程度。3カ月後は1200くらいまで下がりましたが、昨年末のブースター接種で9999以上に上がりました」

水分補給の習慣はついているか

 高齢者は、体内の水分量が減っていることや、のどの渇きを感じにくくなることなどで、もともと脱水症状に陥りやすい。それゆえのリスクを指摘するのは多摩ファミリークリニックの大橋博樹院長だ。

「今や、怖いのは肺炎よりもむしろ脱水。特に“こまめな水分補給”の習慣がついていない高齢者は感染して飲まず食わずになってしまい、水分すら摂らなくなってしまう恐れがあります。結果、多臓器不全に陥ることも起こり得るでしょう」

大橋氏

 たかが水を飲むくらいできそうな気もするが……。

「実際に診た自宅療養者の例では、自宅に2リットルのペットボトルの水がドンと備蓄してあるのに、それを飲めていなくて脱水に陥っていました」(同前)

 重いペットボトルを持ち上げる体力すらなくなっていたからだという。

「1人で在宅療養になった時を想定し、手に取ってラッパ飲みできる、小さいペットボトルを枕元に置く習慣をつけましょう」(同前)

 重症化しにくいといったオミクロン株の“いい話”だけに眼を奪われてはいけない。まずは、自らのウィークポイントを省みよう。

source : 週刊文春 2022年1月27日号

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