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オミクロン株「感染者が出たら」超実用マニュアル

《濃厚接触者とは》《療養・観察期間の数え方》《自宅療養に必要なもの》

「週刊文春」編集部
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「年始以降、週を重ねるごとに来院患者さんの陽性率が上がり、しっかり感染対策している人の中からも陽性者が出始めた。いつどこでもらったのか、全く分からない方も少なくない。もはや誰もが罹患し得る状況だと考えるべきです」

 こう警戒を促すのは、池袋大谷クリニックの大谷義夫院長だ。

 いま新型コロナの変異株オミクロンは、日本列島を覆い尽くそうとしている。

 1月17日、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県は国にまん延防止等重点措置の適用を合同で要請。埼玉県の大野元裕知事は「異次元のスピードで感染が拡大している」と現状を訴えた。

 鹿児島大学の西順一郎教授が解説する。

「オミクロンに対してはまだ人々の免疫がない。しかも潜伏期間はこれまでのコロナで最短の約3日。感染した人が発症するまでの時間も短くなるため、倍々になっていくスピードは、デルタの時より早くなります」

西氏

 自分や家族がいつ感染してもおかしくない現在、大切なのは“その時”に対する備えと心構えだ。そこで小誌は、専門家の知見をもとに“超実用的”マニュアルを緊急作成した――。

 まず覚えておいてほしいのが、オミクロンは症状から感染を判別できないこと。主な症状は、発熱、咳、喉の痛み、鼻水や倦怠感など。つまり、風邪の姿をして忍び寄ってくるのだ。厚労省新型コロナ感染症クラスター対策班のメンバーの、菖蒲川由郷・新潟大学特任教授が語る。

「従来のコロナは味覚・嗅覚障害を伴うこともありましたが、オミクロンではほぼ見られません。少なくとも現在の流行中は、発熱など風邪の症状が出たら、検査で確定するまでは、コロナを疑ってください」

菖蒲川氏

 検査には、医療機関以外にも、自治体の無料PCR検査センター、民間の自費PCR検査、市販の抗原定性検査キットなどがある。

街中にある検査センター

 だが留意すべきなのは、医師の診断を伴わない検査の場合、結果として2度手間になる恐れがあること。多摩ファミリークリニックの大橋博樹院長が指摘する。

「気づいたら家族全員が感染」

「陽性疑いの判定が出ても確定診断にはなりませんので、医療機関で再度、検査を受けることになります。伝播の速いオミクロンは感染拡大を防ぐためにも早期の発見、隔離が大切。少しでも症状がある人は、最初に医療機関の受診をお勧めします」

 その結果、陽性が確定したら――。軽症か無症状であれば、自宅または自治体が用意した宿泊療養施設で隔離生活が始まる。

「どちらかを希望できますが、高齢者、基礎疾患のある人、免疫抑制剤を使用している人、妊婦などは原則的に宿泊療養の対象外。こうした人たちが感染すれば、基本は入院ですが、保健所が本人の状態や家族構成などからケースバイケースで総合的に判断します。一方、宿泊療養者が増えた時は同居家族に高齢者や医療従事者のいる人が優先されます」(厚労省担当記者)

 療養期間について、公立陶生病院感染症内科の武藤義和主任部長が解説する。

「陽性者は『発症から10日経過、かつ症状軽快から72時間が経過』していれば、検査なしで復帰できます。無症状の場合は『検体の採取日から10日経過』で療養解除となります」

武藤氏

 発症日とは、感染によって発熱など何らかの症状が出始めた日をいい、診断確定日とは異なる。療養中は当然、外出禁止。宿泊療養施設には看護師が2424時間態勢で常駐し、毎日の健康観察を行う。万が一、体調が急変しても、対応可能な態勢が整っている。また、3食付きで、食費と宿泊費はかからない。

病院で患者に配られる案内

 では自宅療養者は、どんな点に気をつけるべきか。自宅療養の場合も、厚労省の情報管理システム「HER-SYS」を通じ、毎日の健康観察が行われる。食事については、食料の配達を行っている自治体もあるが、療養開始後すぐには届かない可能性も。ネットスーパーの置き配を利用するか、事前に用意しておくことが望ましいだろう。

 うどんやシリアルなどの主食、レトルトやインスタント食品、缶詰や経口補水液、スポーツ飲料などが1週間分もあれば、十分乗り切れるはずだ。長崎大学の森内浩幸教授が語る。

「解熱剤もあった方がよいですが、十分な栄養、睡眠を摂るにあたって、高熱が邪魔をする時にだけ服用する。ちょっとした熱でもすぐ使うのは、むしろ体にとって逆効果です」

森内氏

 心配なのは、自宅に同居家族がいるケースだ。

「オミクロンの場合、気づいたら家族全員が感染していた、ということが実際に起きています」(大橋氏)

 1月13日に行われた東京都のモニタリング会議によると、直近の1週間で、感染経路のほぼ5割が家庭内だったという。家庭内感染のリスクを少しでも軽減させる手立てはあるのか。

「もし家族に感染者が出たら、寝室を別にするのが第一。そして食事も別々にする。居住区域を分けて、共有スペースは同時に使用しない。トイレやお風呂は使った後、30分くらいは換気をしておく。換気は大切です」(西氏)

 そもそも、陽性者の同居人は、原則としてそれだけで濃厚接触者だ。1人が感染すれば、同居する家族は全員が該当者になる。

 濃厚接触者の定義は他にも、陽性者と「マスクなし、1メートル以内で15分以上の接触があった場合」などがあるが、

感染するかどうかは状況によって変わるので、15分や1メートルという数字は単なる目安と考えましょう。数分でうつることもありますし、換気のよくない屋内では近距離での“空気感染”も起き得ます」(同前)

 濃厚接触者に認定されると、PCR検査の結果が陰性でも、自宅待機が必要な健康観察期間は、陽性者との最終接触日の翌日から10日間。決して短い期間ではないが、先頃、14日間から短縮されたばかりだ。

療養中の患者を診察

 ならば、濃厚接触者と濃厚接触していた場合は、どうなるのか。接触した相手の陽性が確定すれば、自分も濃厚接触者になるが、まずは接触した濃厚接触者の検査結果を待つのみ。それまでは特に制限はない。

「症状がなく、濃厚接触者に認定されていないけど不安だという人は、それこそ無料PCR検査センターや市販の抗原定性検査キットを利用しましょう」(大橋氏)

 よくオミクロンの特徴に挙げられるのが、過去の株と比べて肺炎になりにくく、重症化例が少ないこと。だが菖蒲川氏はこう危惧する。

「オミクロンは国内外で若い世代を中心に感染が広がっていますが、日本は世界で最も高齢化が進んでいる国です。今後、高齢者に感染が拡大した時、どれくらいの重症者が出るかは、まだ分からない。また、軽症だとしても、症状によっては、高齢者にとって決して安全とはいえません」

 大前提として、コロナの重症度は、どのように分類されているのか。

 厚労省がまとめる「診療の手引き」によれば、軽症とは、呼吸器症状がない状態。中等症Ⅰ以上では肺炎の所見がみられ、酸素の投与が必要になれば中等症Ⅱに。そして重症とは、ICU(集中治療室)に入室している、または人工呼吸器などを要する状態を指す。

 つまり、基準となるのは、ほぼ肺炎の有無と度合のみなのだ。大橋氏の話。

「肺炎がなかったら、ほとんどが軽症として扱われるのです。ですが、高熱や節々の痛みなど、人によってはインフルエンザよりもきつい症状が出る。加えてオミクロンでは、強い喉の痛みを訴える方も少なくない」

“軽症”とて甘くみてはいけない。森内氏も指摘する。

「現状、オミクロンの致死率は、デルタのおよそ10分の1。0.15%ほどではないかと言われています。インフルエンザの致死率よりも高い。まだ『単なる風邪になった』と楽観視できる状況ではありません」

 ヒラハタクリニックの平畑光一院長も言う。

風邪やインフルエンザと決定的に異なる点が、コロナでは後遺症を訴える患者さんが後を絶たないこと。症状は多様で、2年近く苦しんでいる人もいます」

平畑氏

3回目を打った方が得

 第5波までと違うのは、経口治療薬が登場したことだ。だが、まだ対コロナの“切り札”とまでは呼べない。供給量に限りがあり、

「現在、処方できるのは、61歳以上、または基礎疾患がある方。『不安だから薬が欲しい』と言われても、陽性が確定していて、軽症の症状がある方にしか出せないのです」(大谷氏)

 また現行のワクチンはオミクロンの侵入を許してしまっているが、大丈夫なのか。大橋氏が語る。

「今のワクチンは武漢のウイルスを想定して作られたもの。ブレークスルー感染は起きるが、これだけ変異したオミクロンでも、重症化はある程度、防げています。すでに2回打った方は3回目を打った方があらゆる面で得。もともと、ワクチンは生ワクチン以外、3回ワンセットが基本です」

 インペリアル・カレッジ・ロンドンの小野昌弘准教授が補足する。

「オミクロンで死亡や重症化のリスクが高いのは、これまでと同じく、高齢者を中心に基礎疾患を持つ人ですが、もう一つの要素はワクチン未接種者。イギリスやアメリカでは、はっきりとその傾向が表れています」

小野氏

 もしオミクロンに感染してしまった場合でも、ブースター接種は有効だ。

 政府は3回目接種を前倒しし、医療従事者だけでなく、既に高齢者接種が始まっている自治体もある。

 コロナにかからないに越したことはないが、かつてなく感染リスクは高まっている。万が一、感染してしまった際は、ぜひこのマニュアルを参照して貰いたい。

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source : 週刊文春 2022年1月27日号

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