ここに1月の東京新聞の編集会議の議事録がある。編集局次長が〈東京新聞として便乗、活用できる場面も多い〉〈東京新聞のクレジットは驚くほど目立つ。良い扱いだ〉などと語っている。ネットフリックスで1月から配信が始まったドラマ「新聞記者」に沸き立つ様子が伝わってくる。
2020年に日本アカデミー賞を受賞した映画「新聞記者」は、東京新聞・望月衣塑子記者の同名著書が原作。そこから派生した今回のドラマ版でも、望月氏を彷彿とさせる女性記者が活躍、撮影場所として東京新聞が多用されている。
だが、その制作過程で望月氏や制作陣が、財務省から文書改ざんを強いられ自殺した赤木俊夫さんの妻・雅子さんに協力を打診、折り合えないと分かるや「完全なフィクションだ」と前言を翻し、連絡を遮断して制作を強行した末、完成後の昨年末にプロデューサーが雅子さんに謝罪していたことを、小誌は1月27日発売号で報じた。
小誌の取材に沈黙を貫いてきた望月氏が、2月8日に突然ツイッターに〈週刊誌報道について〉と書き込んだ。〈取材でお借りした資料は全て返却しており、週刊誌にも会社からその旨回答しています〉とある。実際はどうだったのか。当時小誌は望月氏が赤木さんから借りた資料の返却について尋ねた。東京新聞の回答は「お預かりしたものをお返しするのは当然です」との一般論。そこで再度、「望月氏が返却したのか否かを具体的にお聞きしたい」旨、書面で質問したが、それでも同じ回答だった。
実はこの時、編集局次長から小誌記者に電話で、「望月氏は返却したと言っている」との背景説明があった。ところが、これはオフレコで、誌面には載せないでほしいという。そこで小誌は一般論を掲載しても誤解を招く恐れがあるため「お返しするのは当然」との回答は掲載しなかった。発売当日、東京新聞からなぜ当該部分を回答として載せなかったのか、との質問状が届いた。そこで翌28日、小誌は前述の理由を記した書面を東京新聞の編集局次長に送付。ところが望月氏は、編集局次長が「載せないでほしい」と要望したその回答を、2月8日になって突如前記の通り呟いたのだ。不可解な対応に驚いた小誌が編集局次長に問い合わせると、「回答書のメールを見逃した、申し訳ない」と謝罪があった。
今回の望月氏のツイートを受けて改めて東京新聞に尋ねると、基本的には前回の回答と同様だったが、「付け加えると、お預かりした資料は20年8月までにすべて返却し、以降1年半にわたり、当社側に返却漏れの指摘はなかったと認識しています。また遺書はもともと借りておらず、画像などのデータは提供された電磁的記録と理解しています」と答えた。だが、赤木さんに尋ねると、東京新聞は一度も赤木さん側に連絡をしておらず、返却についての確認すらしていないという。赤木さんが語る。
「そもそも多くの資料はメールなどでお送りしています。信頼関係がなくなった相手方に、どう使われるか、コピーされるかもわからず怖いので、きちんとお話しして返していただき、電子データも目の前で破棄していただかなければ不安は消えません。そうしたことをお伝えしようと思い、これまで何度も望月氏にはお電話しましたがコールバックもなく、東京新聞社員や望月氏の知人らにも伝言を頼んできましたが一切返答はありません。ツイートでは『本件は会社対応』とも書いておられましたが、会社からも一度も連絡はない。望月氏にお送りした資料の今後の取り扱いについても、またドラマの話で折り合わなくなった途端なぜ関係を遮断されたのかも、きちんとご説明を伺いたいです」
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source : 週刊文春 2022年2月24日号