過去5年間で83件の売上高を一時的にかさ上げする不正が子会社で行われていた日本M&Aセンターホールディングス。同社はその名の通り、企業のM&A(合併・買収)を仲介する東証一部上場企業だ。社員の平均年収が商社や民放キー局並みの約1400万円という高給企業で知られる。
「時価総額は1兆円を超え、昨年3月期まで純利益は11年連続で過去最高を更新しました。この成長を牽引してきたのが、08年から13年以上トップに座り続ける三宅卓社長(70)です。役員報酬は約1億8000万円で、『当社の経営目標はフォーキャスト(予測)ではなくコミットメント(約束)』と公言するワンマン経営者。M&Aを結婚になぞらえ、結婚式ならぬ“成約式”を大々的に行うことでも知られます」(経済部デスク)
だが昨年10月、そこに影を落とす事態が発覚する。渡部恒郎取締役(38)が売上高の不正の存在を疑い、三宅氏らに報告を上げたのだ。
「30代で上場企業の役員に就任した渡部氏は、三宅氏にも臆せず物申すタイプです。昨年12月には弁護士、公認会計士、社外取締役で構成される調査委員会が発足。管理本部フロアの会議室を専用の部屋とし、社員へのヒヤリングなどを実施しました」(同前)
小誌は三宅氏が1月24日、全社員に送ったメールを入手。そこには、以下のように記されていた。
〈三宅のパソコンは、デジタルフォレンジックの為に使えない状況です。いそぎの連絡は、090-(略)にお願いします。〉
デジタルフォレンジックとは電子機器の分析・調査のこと。三宅氏のパソコンが調査委員会に“押収”されたため、緊急連絡先として、自身の携帯番号と携帯のメールアドレスを全社員に伝えなければならない事態に発展していたのだ。
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source : 週刊文春 2022年3月3日号