3月3日、フランスのマクロン大統領が4月に行われる大統領選の再出馬を宣言した。有事の際の選挙は現職が有利になるが、今回はさらにマクロン氏に追い風が吹いている。というのも、彼を追う右派候補者たちが軒並み、EUや英米への牽制、民族主義的傾向などの理由で、ロシアのプーチン大統領との近さを散々アピールしてきたからだ。

プーチンとの対話を続けるマクロン

 マクロン氏に次ぐ支持率2位のマリーヌ・ルペン氏は、演説会場で配られたビラに17年にクレムリンで撮ったプーチン氏とのツーショットを掲載していたことが発覚。当時、彼女はクリミア併合について「不法ではない。住民投票でロシアに戻りたいと表明された」と述べて物議を醸していた、曰く付きの写真でもある。「リベラシオン」紙によると、党は各支部にビラの破棄を指示したという。

 またルペン氏が党首を務めた政党FN(現RN)は、14年の欧州議会選挙でロシアの銀行から940万ユーロ(約11億2000万円)を借り入れ、今も返済中であることも明らかとなった。

 3番手につけるのが、元ジャーナリストで“フランスのトランプ”と言われるエリック・ゼムール氏。彼は過去のプーチン賛美発言がSNSで拡散された。

 14年のクリミア半島併合時の討論会で、プーチンは「愛国者で祖国を守ろうとしているだけ」、「歴史的に見てウクライナはロシアの一部だ」と発言。18年には「フランスのプーチンになることを夢見ている」とまで語った。昨年末にもロシアが「侵攻しないということに賭ける」と言い切り、その姿勢を侵攻直前まで崩さなかった。

 4番手のヴァレリー・ペクレス元予算相自身はプーチンを批判していた。だが所属政党の前回の大統領候補・フィヨン元首相が、ロシアの石油化学大手や国有石油ガス会社の取締役になっていたことが問題視された。フィヨン氏は侵攻後に辞任を表明したが、NATO不拡大を西側が拒否したことを嘆くツイートをし、火に油を注いだ。

 ウクライナ侵攻後、各候補者は一斉に釈明に追われた。ルペン氏は「プーチンは五年前とは人が変わった」と言い訳。ゼムール氏は見通しの甘さを認め、ロシアの侵攻を断罪した。

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source : 週刊文春 2022年3月17日号