東京地検特捜部は3月4日、金融商品取引法違反(相場操縦)の疑いで、大手証券会社・SMBC日興証券幹部四人を逮捕した。同日夜には、東京・丸の内にある同社の本店を家宅捜索。翌朝までかかって大量の資料を押収した。

記者会見で陳謝するSMBC日興証券の近藤雄一郎社長(右)

 司法担当記者の解説。

「相場操縦といえば仕手筋の手法ですが、今回は大手証券幹部が業務中に行っていた疑いがあり、前代未聞です。問題となったのは、上場企業の大株主から保有株をまとめて買い取り、投資家に転売する『ブロックオファー取引』。計10銘柄で約11億円の利益を得たと見られます」

 特捜部に逮捕されたのは、同社エクイティ本部本部長のヒル・トレボー・アロン容疑者(51)、同副本部長のアヴァキャンツ・アレクサンドル容疑者(44)、エクイティ部長の山田誠容疑者(44)、エクイティ・プロダクト・ソリューション部長の岡崎眞一郎容疑者(56)の四人だ。

「いずれも腕こきの社員で社内には衝撃が走っています」(同社社員)

 中心人物と言われているのは、山田容疑者。カリフォルニア大学バークレー校でコンピューター科学を学んだ異才だ。証券業界の覇者であるゴールドマン・サックス(GS)にプログラマーとして入社後、トレーダーへと転身する。SMBC日興証券の弱みとされてきた株式トレーディング強化のため、15年に三顧の礼で迎えられ、30代で部長となった「エクイティ部門の顔」(同前)である。

「GS時代の2011年の東日本大震災当日、揺れる執務室でヘルメットをかぶりながらトレーディングを続けたエピソードは伝説のように語られています。日興証券転職後は『外資には負けない』とよく口にしていた。ブルームバーグの取材にはデスクにプロテインを常備し、ジム通いが趣味と告白。投資目的でクラシックカーを保有するなど、華麗な生活ぶりでも知られています」(同社関係者)

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source : 週刊文春 2022年3月17日号