ロシアのウクライナ侵攻が進む中での開催となった北京パラリンピックが3月13日に閉幕した。大会で世界の注目を集めたのが、国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長(45)だ。

閉会式でも熱弁を振るったパーソンズ氏

「当初はロシアとベラルーシの選手の出場を、国名などを使わない個人資格で認める予定でした。だが他国がボイコットする姿勢を見せ、選手村での緊張も高まったため、パーソンズ会長は開幕前日に両国選手の除外を決断した」(全国紙記者)

 開会式では、21世紀は「戦争と憎しみの時代ではない」と強調。両手のこぶしを握り締め『ピーース!』と絶叫し、平和へのメッセージを発信した。

 強い姿勢を示したのはロシア・ベラルーシに対してだけではない。開催国の中国に対しても同様だ。同国の中国中央テレビ(CCTV)の開会式の中継で、パーソンズ氏の演説の途中、戦争を批難した部分を翻訳せず、一部無音となる場面があったのだ。中国のSNS・微博も「なぜ音が切れた?」などの書き込みで溢れた。するとIPCは、すぐさまCCTVに理由を追及。3月12日時点で「(返事は)まだない」と、パーソンズ氏はAFPの取材に対して明かしている。

 パーソンズ氏はスコットランド系のブラジル人だ。幼い頃からスポーツに親しみ、10代でスポーツビジネスに携わると決めたという。大学卒業後、インターンとしてブラジルのパラリンピック委員会(CPB)に勤務。同国に約2500万人いる障がい者の活動を、多くの人に伝えたいと決意する。01年にCPBの事務局長に就任。09年にトップに上り詰め、ロンドンとリオの2大会でブラジル代表を率い、好成績を収めた。

 IPC副会長になったのは13年のこと。3年後、IPCに注目が集まった。

「リオ五輪直前、世界反ドーピング機関が、ロシアが政府主導でドーピング違反を行ったと報告。同国選手を参加させないようIOCに勧告したが、IOCは出場を認めた。一方で、IPCのフィリップ・クレーブン前会長は毅然とした態度で、出場停止処分を下したのです」(在米記者)

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source : 週刊文春 2022年3月24日号