鶏卵最大手のイセ食品とグループ企業で飼料仕入れを行うイセが3月11日、債権者から東京地裁へ会社更生法を申し立てられ、同日地裁より保全管理命令を受けた。事実上の経営破綻で、負債総額は2社合計で約453億円に上る。
「イセ食品は1912年に富山県で創業した老舗企業。栄養強化卵『森のたまご』は全国のスーパーで消費者から高い支持を受けてきました」(銀行関係者)
実父の家業を継ぎ、半世紀にわたり同社のトップに君臨してきたのが、伊勢彦信氏(92)だ。80年代に米国に進出し、鶏卵の販売で全米1位になった際は「エッグキング」と呼ばれた。
「ただ、近年はワンマンぶりが目立ち、取引金融機関との間にも溝が生まれていました。スーパー玉出の買収(約45億円)などM&Aを進めた結果、借り入れが急増。コロナ禍に伴う飼料価格の高騰なども重なり、資金繰りは悪化する一方だった。経営責任を取らざるを得ず、伊勢氏も昨年6月で会長兼社長を退任しています」(同前)
株式の配当などから、これまで巨額の資産を築いてきた伊勢氏。19年にはパナマ文書を端緒に、マンハッタンのビルの売却益を巡って、約7億円の申告漏れを指摘されたこともある。
「実は伊勢氏は、世界的な美術品コレクターでもあります」(同前)
ピカソやセザンヌ、ルノワールといった名画をはじめ、中国古代の陶磁器、尾形光琳など内外の美術品を多数所有してきた。10億円単位の値が付く品もあるとされ、総額は100億円を下らないという。19年には、地元の富山事業所にコレクションを展示する美術館を開設。現在も、国内美術品オークション大手「シンワオークション」を運営するシンワワイズホールディングスの会長を務めている。
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source : 週刊文春 2022年3月24日号