筆者は3月17日号で、ウクライナ危機を巡る日本の為政者の「言葉の貧しさ」と、それを当然だと思う新聞の「発想の貧しさ」を指摘した。

 今回、決め付けが過ぎたことを反省し撤回する。少なくとも、朝日が15日朝刊の4面に載せた2つの記事はその弊を免れていた。内容が、国内の政局や政治家の心情を追ったものだったとしても。

 トップ記事は小沢一郎氏の実情に肉薄する。書き出しから「かつて2度の政権交代の立役者となり『剛腕』と呼ばれた男の姿がみえない」と容赦ない。「男」という当世風でない表記が逆にリアルだ。

 エビデンスが本人の肉声だけに説得力がある。立憲民主党の新代表就任を決めた泉健太氏が「小沢先生は(私と同じ)47歳のとき、自民党の幹事長をされていた」と言及したことを聞き、小沢氏は「枝野(幸男)くんの二の舞いになるぞ」と、泉氏に参院選の重要性を直接伝えたと明かす。

 自分が「新執行部で参院選を取り仕切る姿を思い描」いていたためとするが、先輩面して前代表を「くん」付けで呼ぶのが既におかしい。しかも当ては外れて「人事の相談も処遇もしない」泉氏に対し小沢氏はこう皮肉ったそうな。

「これほどの『大物』だとはね」「参院選後は再び代表選になりかねない」

 造っては壊す「剛腕」の時代錯誤ぶりが何とも哀しい。

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source : 週刊文春 2022年3月31日号