「早く辞めれば? あなたみたいな頭の悪い人に教えたくありません!」
と言って机に資料を叩きつける教員。過呼吸を起こしたり、吐き気でトイレに駆け込む生徒には「あてつけがましい」と吐き捨てる。
これはドラマのワンシーンではない。看護学校の生徒が実際に見た光景である。

教員によるパワハラで1年生の4割が中退したと報道された、千葉県木更津市の木更津看護学院。医師や看護師の指示で診療補助を行う、准看護師を養成する2年制の学校だ。准看護師は近年、介護施設や老人ホームでの仕事など、需要は高まっている。
事件は生徒が県に訴えたことで発覚したが、学校側は「パワハラの事実はない」と県に回答。だが――。

「パワハラ中退の元凶は、女性の50代後半のX教員と40代半ばのY教員です」
こう語るのは、今年退学した生徒の一人である。
「二人は看護師の資格を持ち、生徒を見下している。入学後のホームルームで二人は『今年はどんなにバカでも、定員割れで全員受からせました。容赦なく(進級試験で)落としますから』と宣言。実際に、難癖をつけて提出物を受け取らなかったり、シーツ交換試験で小さなしわを探して不合格にするなどし、次々と生徒を留年にしていきました」
生徒はストレスで次第に体調が悪くなり、精神科病院で適応障害と診断された。
別の元生徒も証言する。
「Y先生の口癖は『バーカ』。X先生には『あなたみたいにボケーっとした人に看護されたら(患者が)死ぬ』と言われました」
昨年卒業したAさんは20年4月20日、消毒液すら無く、密状態で授業を行う学校のコロナ対策に不安を抱き、X氏に相談をした。
「病院で働きながら通学していたので、勤務先でクラスターを起こしたら大変だと思い、学校を休みたいと電話したのですが……」
実はその時の音声がある。あまりにもX氏の言葉が酷いので、Aさんが電話の途中から、咄嗟に録音したものだ(電子版で公開)。X氏に「患者と学校どっちが大事か」と問われ、Aさんが「患者さん」と答えると、X氏はこう激高した。
「患者さんにとって必要なのは、資格があるナースだよ!」
そして「イライラするから」と言って、電話を切ろうとするX氏。Aさんは話をしようと食い下がるが、
「綺麗ごとばっかり言ってっからだよ! ヤクザになっちゃうよ、これ以上言ったら」
電話の向こうではY氏の笑う声も聞こえる。そしてX氏は「はい、じゃあね」と、電話を切ったのだった。
同校でパワハラが問題になったのは、今年だけではない。19年末にも生徒が県に相談しているのだ。
「相談を受けて、学校に『一人一人の生徒指導を丁寧に行ってください』と電話しました」(県学事課担当者)

これを受けて生徒には「キャンパス・ハラスメントガイドライン」が配られ、キャンパス・ハラスメント相談委員会が設置された。この時点で学校はパワハラを認識していたのだ。だが今回、学校は県に「事実はない」と答え、さらに3月9日、重城利國学校長は卒業生に、こう口止めをした。
「『あの学校って凄いとこだったんだね』と言われると、『そうなんですよ』なんて言わないで欲しい。(中略)『あの学校は入れないよ』と言われちゃうと困るから」
OMM法律事務所の大塚和成弁護士が指摘する。
「『バーカ』などの暴言や、生徒の人格を否定するような叱責は、民事上の不法行為になります。また過去にハラスメント事例の存在を知りながら、再発防止のための体制を適正に構築・運営しなかった過失で、学校長には民事上の債務不履行責任や使用者責任が問われる可能性もあります」
パワハラ発言の事実や19年に学校が把握していたことなどを確かめるべく、X氏を電話で直撃したが、「何もお話しできることがない」の一点張り。重城学校長も対応をしなかった。改めて学校に質問状を送ると、
「当方としましては、(4月下旬に設置予定の)第三者調査委員会の中で対応させていただく所存です」
今度こそパワハラの無い学校に変われるのだろうか。
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source : 週刊文春 2022年3月31日号